映画『リトル・フォレスト』の「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」! 菜の花などの春野菜を味わうレシピを紹介

2016.3.24 (木) 06:00
 

ようやく桜の花もほころび始め、春の到来を感じるこの頃。冬眠から目覚めた動物たちのごとく、食欲旺盛になるこの時期に観てほしいのが映画『リトル・フォレスト 冬・春』だ。
東北の小さな集落“小森”で自給自足に近い生活を送るヒロインの毎日を、美しい四季の風景と、大地のおいしい恵みを通じて描く4部作の後半2編。観た後には、どうしようもなくお腹が減るし、野菜をモリモリと食べたくなるのだ。今回は、なかでも特に胃袋をわしづかみにされるメニューのひとつ「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」の話をしたい。

映画『リトル・フォレスト』とは?

 

東北の寒村を舞台にした、スローフード・ムービー全4部作。春夏秋冬、四季の移ろいと日々の食事と真正面から向き合い、食材をつくるところから自分で実践していく主人公・いち子(橋本愛)。彼女は食べることを通して、人生を見つめ直していく。
“小森”での日々は、育てる、収穫、調理する、食べるということの繰り返し。稲を育て、畑を耕し、野山で収穫した季節の食材を料理し、食べる。そんな、生きるために作り、食べるというプリミティブな生活が、実に魅力的に映るのだ。

「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」がおいしそうすぎる!

 

(C)「リトル・フォレスト」製作委員会

「春編」だけでも、春キャベツのかき揚げやジャガイモのパン、つくしの佃煮などが登場するが、なかでも「絶対に食べてみたい!」と思わせるビジュアルを放っているのが「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」だ。春うららかな古民家の縁側で、のどかな風景を眺めながら蕾菜の緑と塩マスのピンクが鮮やかなパスタを頬張る……。なんと胃袋を刺激する光景だろうか。
そんなレシピを再現する前に、もっとパスタをおいしくする豆知識を紹介したい。

野菜をもっとおいしくする豆知識

まず、このメニューで「?」となるのが、「蕾菜」だ。なかなか耳にしない食材だが、それもそのはず。普段はスーパーなどに出回らないけれど農業をしている人にはおなじみの食材が登場するのも、本作の特徴なのだ。
そこで、持続可能な社会を目指して、環境負荷の小さい農業の普及に取り組んでいる「坂ノ途中」(京都市)のスタッフ・倉田優香さんに、改めて話を聞いてみた。
倉田さんいわく、蕾菜=「菜の花」とのこと。菜の花=黄色い花というイメージだが、実はアブラナ科の野菜の花芽の総称。冬野菜の白菜やカブ、大根、小松菜、水菜、キャベツなどが春になって花を咲かせれば、それらはみんな「菜の花」というわけだ。映画に登場したのも、種を蒔くのが遅れて結球しなかった白菜にできた「蕾菜」だった。

 

「菜の花は、濡れた新聞紙で包み、袋に入れ冷蔵庫に立てて置くともちが良くなります。映画でもセリフにあったようにおひたしにしたり、あえもの、天ぷらにするのもおすすめ」(倉田さん)。映画では、若葉を掻いて汁の具にしたり、ジャガイモと炒めておかずにする、というアイディアが登場した。

よく目にする菜の花は、菜の花専用に品種改良されたものであることがほとんど。前述のような冬野菜の菜の花は、収穫量がわずかなため、あまり出まわることがないのだ。
しかしこの“冬野菜の菜の花”、出まわらないものの、ぜひ食べてみたい幻の絶品野菜なのだという。
「冬野菜たちは、冬を越して暖かくなってくると、花茎を伸ばし、花を咲かせて子孫を残す準備を始めます。花茎のことを『董(とう)』と言って、これが伸びてくることを『とう立ち』と言います。冬野菜はとう立ちが始まるとそちらに全てのエネルギーを注ぐため、菜の花には味がのっていておいしいんです。
坂ノ途中で提携している農家さんでは、白菜や小松菜、かぶ、ルッコラ、ケールなど、さまざまな菜の花を栽培しているのですが、少しずつ味わいが違っていて、ほのかに元の野菜の味わいも感じられておもしろいですよ」(倉田さん)。
そしてもうひとつの主役、ノビルも見逃せない春の美味。

 

「おすすめは、万葉の時代からある食べ方、さっとゆでて酢味噌あえ。刻んで塩昆布とあえてごはんのお供にも。醤油漬けや天ぷらもおいしいです」(倉田さん)

「ノビルはユリ科(分類には諸説あります)で、ネギやニラの仲間。川の土手や田んぼのあぜ道、畑のわきなどに自生しています。映画でも、庭先で掘り上げていましたね。
古くから日本人に親しまれてきた野草で、古事記には、野原にノビルを摘みに行こう、という歌が、万葉集には、酢味噌あえのノビルが食べたい!という歌が収録されています。
ニラに似た細い緑色の葉の根元に、白い、小さな玉ねぎのような肥大化した部分があります。緑の葉の部分はぴりっと辛く、白い部分はラッキョウに似た風味があります」(倉田さん)。

「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」を作ってみよう

味付けは、にんにく、鷹の爪と、パスタのゆで汁、塩マスの塩気のみ。劇中でも「ノビルの辛味がいい感じ」と評されたように、シンプルな分、ノビルのピリッとした辛さと、菜の花のぎゅっと凝縮した甘みがダイレクトに感じられる。今回は、菜の花特有の苦みがなく、甘みの強い白菜の菜の花を使用。
春の滋味をしみじみと味わいたくなるパスタだ。

映画『リトル・フォレスト』の「塩マスとノビルと白菜の蕾菜のパスタ」

■材料(2人分)
・塩マス 1切れ
・ノビル 50g
・白菜の菜の花 100g (なければ他の菜の花でもOK)
・鷹の爪 1本(お好みで2-3本使ってもOK)
・にんにく 1かけ
・お好みのパスタ 200g
■レシピ

 
 

1、塩マスをグリルで焼き、大きめにほぐしておく。
2、ノビル、白菜の菜の花を5cmほどの長さに切る。にんにくは芯をとってスライスする。鷹の爪は種をぬく。
3、鍋にたっぷりのお湯を沸かし、塩(分量外)を加えパスタをゆでる。
4、フライパンに油とにんにくを入れて弱火にかける。

 
 

5、香りがたってきたら鷹の爪、ノビルを加えて炒め合わせる。ノビルに火が通ったらパスタのゆで汁を加える。

 
 

6、さらに塩マスを加えてひと煮たちさせる。

 
 

7、固めに茹でたパスタと菜の花、エキストラバージンオリーブオイルを加え、フライパンをふりながら絡める。水分が少ない時はゆで汁もしくはお湯を加えて調整する。

 
 

8、菜の花に余熱で火が通ったらお皿に盛りつける。仕上げにエキストラバージンオリーブオイルをさっと回しかけたら出来上がり。

 
 

完成!