夏の味、きゅうりのぬか漬け

お野菜を漬けておくだけで、さわやかな酸味、まるい旨みのきいたお漬物ができあがるぬか床。おうちで漬けているという方も多いかもしれません。

子どものころ、祖母と一緒に暮らしていた家の食卓にはいつも、「おばあちゃんのぬか漬け」がありました。家の畑で採れたきゅうりのぬか漬けは、青い香りと酸っぱさが一緒になって、今でも思い出されます。
大人になって一人暮らしをはじめたころ、あの味を思いながら、ぬか漬けを作ってみたことがあります。けれど、なかなかお手入れが続かず……。
あれからずいぶん経ち、この夏、もう一度、ぬか漬けをはじめてみることにしました。

きっかけは、京都・嵐山にある〈発酵食堂カモシカ〉さんのつくるぬか床。
「命は命で元気になる。人の手と微生物の働きが織りなす”発酵”をうまく取り入れながら、季節の野菜を余さず食べてほしい」
そんな発酵食堂カモシカさんの想いに、うんうん、と頷きました。

ここでは、ぬか漬けのプロ・発酵食堂カモシカさんより、ぬか床の基本やお野菜の漬け方を教えていただき、みなさんへとお伝えいたします。
目標は、夏にきゅうりのぬか漬けをおいしく食べること。
ぬか漬けが気になっていたというかたは、一緒にはじめてみませんか?

目次
・ぬか床を育てる楽しみ
・そのまま食べておいしい、発酵食堂カモシカのぬか床
 ─ ぬか床の材料
・ぬか床の準備、お野菜の漬け方
 ─ 用意するもの
 ─ ぬか床の準備
 ─ お野菜の下ごしらえ
 ─ お野菜の漬け方の手順
 ─ 食べごろ
・ぬか床のお手入れ
 ─ 保管場所
 ─ お手入れの仕方
・季節の野菜でぬか漬けを
 ─ おすすめのお野菜
・今回ご紹介した商品

ぬか床を育てる楽しみ

「ぬか床は、生活のなかで育てていく楽しみもある、非常に奥深い発酵食品です」と、発酵食堂カモシカの関恵さんは言います。
一度つくれば、ながく使い続けることのできるぬか床。どのようにはじめればよいのでしょう。

基本となるぬか床は、米ぬかに塩、水、昆布や唐辛子などを混ぜてつくります。けれど、すぐにぬか漬けをはじめられるわけではなく、ぬか床の熟成を促すために野菜を漬ける「捨て漬け」をします。これを何度かくり返して、ようやく本漬けに。

発酵食堂カモシカのぬか床の場合、あらかじめ材料を混ぜ、熟成されているので、この工程は必要ありません。届いたらすぐ、かぶでもにんじんでも、好きなお野菜を漬けることができます。
ぬか床を完成させるまでの不安がないのは、嬉しいポイント。それぞれのおうちに届いてからは、その人らしく、ぬか床を育てていくことができます。

そのまま食べておいしい、発酵食堂カモシカのぬか床

「おいしいぬか床でないと、おいしいぬか漬けはできません。だから、ぬか床を食べて、おいしいかどうかを確かめることが大切です」と、関さん。

発酵食堂カモシカのぬか床に使われているのは、おいしいぬか漬けづくりのために選ばれた、国産の原材料です。

おいしさの決め手となる生ぬかとお塩をベースに、うま味を加える昆布、防腐作用のある唐辛子、さわやかな香りづけになる山椒の実とフルーティーな柚子の皮、炙って香ばしさを引き出した鯖のへしこ。そして、長年熟成された自家製のぬかを加え、じっくりと発酵を促しています。
火入れを一切していない生のぬか床なので、乳酸菌が生きており、漬けたお野菜にも豊かな風味がうまれます。

発酵食堂カモシカのぬか床に入っているもの
・生ぬか
・京都府丹後半島の天然海塩
・昆布
・唐辛子
・山椒の実
・柚子の皮
・鯖のへしこ
・カモシカ熟成ぬか

ぬか床の準備、お野菜の漬け方

ぬか床が用意できたら、さっそくお野菜を漬けてみましょう。
ここでは「発酵食堂カモシカのぬか床」を使う場合の手順をお伝えします。

用意するもの

・発酵食堂カモシカのぬか床 1kg
・保存容器(琺瑯容器、タッパー、甕(かめ)など)

保存容器は、蓋ができ、ぬか床をかき混ぜられるような大きさのものであれば、なんでも構いません。上部に余裕が生まれるくらいの深さがあると、かき混ぜる時にぬか床があふれず、使いやすいですよ。

おすすめは「野田琺瑯のぬか漬け美人」。
匂いや汚れがつきにくい琺瑯素材で、どんなキッチンにも馴染むシンプルなデザインです。

ぬか床の準備

1)保存容器を洗い、熱湯消毒またはアルコール消毒をして、清潔な状態にします。

2)ぬか床を袋から出し、容器に入れ替えます。容器のなかで床を均します。

お野菜の下ごしらえ

生で食べておいしいお野菜はそのまま漬けられますが、アクやえぐみのあるもの、水気の多いものは、塩揉みや下茹でなど、下ごしらえをしてから漬けていきます。

●そのまま漬ける場合
多くのお野菜は、そのまま漬けておいしくいただけます。洗って水気を切り、そのままドボンとぬか床のなかへ。
大きいものは半割りや四つ割りにしておくと、早く漬かります。
きゅうりはヘタのところに苦味があるので、ヘタだけ切って漬けます。

例)きゅうり、にんじん、かぶ、だいこん、みょうが、キャベツ、菜の花、ラディッシュ、玉ねぎ、エリンギ、しいたけ、パプリカ、セロリなど

生食に向かないきのこ類は、ぬか漬けにしたあと加熱調理を。炒めものやパスタの具材にすると、旨みが出ておいしくいただけますよ。

●塩揉みして漬ける場合
塩で揉むことで、お野菜のアクと水分をとります。
なすはアクが強いので、多めの塩でぎゅっぎゅっと揉み、アクをしっかり出してからぬか床に入れます。
白菜は水気が多いので、白菜の重さの3%の塩を振ってひと晩おき、水分を出してからぬか床に入れます。
そのまま漬けられるお野菜でも、軽く塩で揉んで水気を切っておくと、漬かりが早くなります。また漬ける前に水分を抜くことで、ぬか床が水っぽくなりません。

例)なす、ズッキーニ、大根葉、白菜、水菜、つるむらさきなど

●下茹でして漬ける場合
ごぼうやかぼちゃなど、生で食べられないお野菜は下茹でしてから漬けます。オクラも、さっと茹でてから漬けることで、歯ごたえがよくなりますよ。
アクの少ないものなら、蒸すのもおすすめです。

例)ごぼう、かぼちゃ、じゃがいも、さといも、ブロッコリー、カリフラワー、オクラなど

お野菜の漬け方の手順

1)お野菜どうしがくっつかないように間隔をあけ、すべての面がぬかに触れるよう、しっかりと埋めます。

2)ぬか床の表面を均しながら空気を抜きます。側面についたぬかは拭き取って、きれいにしておきましょう。

3)容器の蓋を閉めて常温に置き、漬かるのを待ちます。

食べごろ

季節や温度、お野菜の種類、味の好みによります。
たとえばきゅうりなら、発酵の早い夏場は、朝~昼に入れて夕飯にはおいしく食べられますが、冬場は発酵がゆっくりなので、1~2晩漬けるのがおすすめです。
漬ける時間が長いほど、酸っぱくなったり、しょっぱくなったりするので、味の好みによって、調整してみてください。

ぬか床のお手入れ

保管場所

ぬか床の保管は、常温が基本です。発酵に適している温度は20~25℃程度。夏のものすごく暑いときは、冷蔵庫の野菜室に入れるのもよいですが、日々のお手入れができていれば、常温のままでも大丈夫です。

お手入れの仕方

ぬか床は、上下を返すように混ぜましょう。
これは、ぬか床に棲む3つの主な菌(酵母菌、乳酸菌、酪酸菌)のバランスを保つため。
表面に多くいる好気性の酵母菌を下へ、なかにいる嫌気性の乳酸菌と酪酸菌を上へと、場所を入れ替えます。
季節や温度にもよりますが、夏場は1日1~2回、冬場は2日に1回程度が目安です。
混ぜることで、ぬか床の風味がよくなり、おいしく漬かります。

季節の野菜でぬか漬けを

ぬか漬けに定番のお野菜はもちろん、意外に思うものでも、漬けてみると新しいおいしさに出会えるかもしれません。いろいろなお野菜でお楽しみください。

きゅうりやなす、オクラといった夏野菜は、手軽に漬けられて、はじめてのかたにもおすすめ。にんじんやだいこんなどの根菜も皮つきのまま、まるごと食べられるのが嬉しいです。半端に余ったお野菜なども、ぬか床に入れれば無駄なく食べ切れます。いつもなら捨ててしまうような、すいかの皮付近の白いところなんかも、ぬか漬けにすると瓜のようにおいしく食べられますよ。

おすすめのお野菜
春 菜の花、新玉ねぎ、赤玉ねぎ、ラディッシュ、アスパラガス、山菜
夏 なす、きゅうり、オクラ、ズッキーニ、ミニトマト、つるむらさき、すずかぼちゃ
秋 にんじん、きのこ、新しょうが、れんこん、ごぼう、りんご、かぼちゃ
冬 だいこん、かぶ、白菜、水菜、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ

ぬか床は、食材をおいしくするためのものでありながら、おいしく保存するためのものでもあります。
季節のお野菜のひと皿を、いつでもささっと食卓に。
頼りになるぬか床を、暮らしに取り入れてみませんか?

今回ご紹介した商品はこちら

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次回は、ぬか漬けをお手入れするなかで気になることや、よくあるお困りごとについて発酵食堂カモシカさんに伺い、Q&A形式で詳しくお伝えしていきます。
ぬか床をながく続けるために、こちらもチェックしてみてくださいね。

「ぬかどこ座談会」では、京都・嵐山にある〈発酵食堂カモシカ〉さんの食堂を訪ね、店長の吉田あすかさんに、ぬか床を育て、続けるための秘訣を伺いました。
ぬか漬けにおすすめの食材や、発酵とお野菜のつながりのお話も。