この夏、季節のお野菜を美味しくいただく工夫のひとつとして、発酵特集のなかでご紹介してきたぬか漬け。お野菜とともに、お楽しみいただけていますか?
「ぬかどこ座談会」と題した今回は、京都・嵐山にある〈発酵食堂カモシカ〉さんの食堂を訪ね、店長の吉田あすかさんに、ぬか床を育て、続けるための秘訣を伺いました。
ぬか漬けにおすすめの食材や、発酵とお野菜のつながりのお話も。
学びあり、笑いありの会となりましたよ。

ぬかどこ座談会メンバー

発酵食堂カモシカスタッフ・吉田さん
発酵食堂カモシカの店長、ぬか床クリニックの院長でもあります。ぬか床歴5年。好きなぬか漬けの食材は一周まわって、かぶ。

坂ノ途中スタッフ・古田
発酵大好き。味噌、甘酒、鮒ずし……いろいろ発酵させています。昨冬、ぬか床を冷蔵庫にしばらく放置してだめにしてしまい、この夏再スタート。

坂ノ途中スタッフ・武岡
この記事を書いているひと。ぬか床の基本からお困りごとの対処法までは、書いてしっかり学びました。ぬか床ビギナー。

わたしたちのぬか床生活

──みなさん、どんなふうにぬか床生活を?

武岡:
わたしは、つい2週間ほど前にぬか漬けをはじめたばかり。お手入れができずに失敗してしまった経験があってしばらくは遠ざけていたのですが、また自分で漬けてみたくなり。
自分で漬けると、ぬか床からきゅっと出てきたときがなんだかかわいくて、やっぱり美味しいですねえ。

古田:
うんうん。わたしは夏になると、あの酸味が恋しくなって、毎年ぬか漬けをします。使い切れないお野菜も受けとめてくれるぬか床は、懐が深くていいなあと。
ただひとつ問題があって……それはいかに夏以外の季節を楽しむかということ。きゅうりとかオクラとか、夏のお野菜は大好きだけど、冬はなかなか気が進まなくて。でも最近とっておきの食材を見つけたんです。これで、冬も楽しめるかも……。

吉田さん:
なんだろう、気になりますねえ。
わたしは、この食堂のぬか床もお手入れしていますし、自宅でも5年ほど続けています。
食堂のぬか床は、味をぶらさず、すとんと構えていられるように、決まったサイクルでメンテナンスをしています。たとえば、店がお休みの日曜、月曜は混ぜられないので、週末は足しぬかをして、ぬか床を固めにして帰るというように。
ぬか床を基本の状態にリセットする、というのは自宅でも同じ。ゆっくりしている休みの日の朝に、しっかりメンテナンスをするなど、メリハリをつけながらお手入れをしています。

武岡:
そのリセットというのは、どういうふうにするのでしょう?

吉田さん:
漬けている野菜によってぬかの状態に変動があるので、その都度、固さや味を見ながら調整します。水っぽくなっていたら、昆布を足して吸わせたり、水抜きをしたり、足しぬかをちょっとずつ加えたり。ぬかを食べて、味がぼやけてきたなというときは、塩と唐辛子もしっかりめに足します。とくに漬かりが悪いときは、塩を重点的に。唐辛子も大切で、防腐効果があり、味もきゅっとしまりますよ。
はじめにお届けするぬか床を基本と考えて、その状態まで戻して、きれいにしてあげると、ぬか床も自分もリフレッシュした気持ちになります。

武岡:
ぬか床リセット術、勉強になります。
吉田さんでも、お手入れが面倒だなと思うときはあるのですか?

吉田さん:
あります、あります。けれど、体は自然と動きますね。5年続けていると、もう、歯磨きをするくらいの感覚で……。家だと、忙しいときは野菜を入れていないときもあるのですが、とりあえず混ぜることだけはする。朝起きて、顔を洗って、ぬか床を混ぜるというような導線をつくっています。いつも目に付くところに置いておいて、混ぜるタイミングを決めておくといいと思います。
とはいえ私も、旅行や引っ越しでバタバタして、1か月ほど手入れができなかったということはあります。それでも大丈夫。しばらく手入れができないときは、ぬか床から野菜をすべて出して、水分量が多ければ足しぬかをし、しっかり表面をならしてから涼しい場所に置いておく。そうするとまた、元通りに使いはじめられます。

武岡:
なるほど。手入れをしないときがあっても大丈夫と知って、少し気が楽になりました。

漬けておいしい!おすすめお野菜

──みなさんの好きなぬか漬け、おすすめのお野菜はなんですか?

古田:
夏のねばねば葉野菜、つるむらさきが好きで、この時季はよく漬けています。
つるむらさきの特有のちょっと土っぽい味に、塩味と酸味が加わって、深みが増した美味しさに! つるむらさきが苦手な方でも、食べやすくなるんじゃないかなあと思います。やみつき系です。

古田いちおし、つるむらさきのぬか漬け

武岡:
この前、お野菜セットでイタリアントマトが届いて。少しだけ皮に切り込みを入れて、まるごと試しに漬けてみたんです。それがすごく美味しくて! 酸味がトマトに染み込んで、トマトをビネガーと塩でマリネしたようなおしゃれな味に。サラダ感覚で食べられる一品になりました。

吉田さん:
わたしが一番好きなのは、かぶなんです。かぶによって、甘みがつよかったり、苦みがあったり。太く切るか、薄く切るかで味わいが変わったり。葉っぱを一緒に漬けるのも好き。いろいろな味を楽しめます。
ほかには、きのこ類もいいですね。エリンギやきくらげは、ぷりぷりっとした食感に。炒めて食べても美味しいです。以前、食堂のぬか床でハナビラタケを漬けたら消えてなくなってしまったことがあって! 歯ごたえはしっかりとしているものがおすすめです。

古田:
ひらひらのハナビラタケは、一体どこへ……笑

 

発酵食堂カモシカさんのぬか漬けを試食。ごぼうやきくらげ、こんにゃくも

後編では、ぬか漬けをお料理に活用するコツや、発酵とお野菜のつながりについてお話ししました。こちらもあわせてご覧ください。

 

一緒にチェック
まずは基本から
ぬか漬けのはじめかた・季節のお野菜を漬けてみましょう