この夏は、わたしも、新たな気持ちでぬか床生活をスタート。大好きなきゅうりを漬けては、お昼の素麺や、夜のビールのおともにして毎日楽しんでいます。自分の手でぬか床を混ぜ、漬ける味わいはやっぱりとくべつ。夏野菜のおいしいこれからの季節、いろいろ漬けてみようと思っています。

さて今回は、ぬか漬けをはじめると気になる日々のお手入れや、こんなときはどうすればいいの? と不安に思うことなどを、一問一答形式でお答えしていきます。
前回につづきアドバイスをいただいたのは、京都・嵐山にて発酵食を伝える活動を行う〈発酵食堂カモシカ〉さん。
ぬか漬けを楽しくつづけるためのお手伝いができれば嬉しく思います。

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前回の記事はこちら
ぬか漬けのはじめかた・季節のお野菜を漬けてみましょう

目次

●ぬか床の扱い方・お手入れ
・お手入れがつづくか不安。ぬか床には毎日なにか漬けたほうがいいですか?
・ぬか床はどこに置いて保管する?
・ぬか床は毎日混ぜないとだめ?
・どのように混ぜればよいですか?
・足しぬかはどんなときに入れるの?
・毎日かき混ぜていますが、この匂いで正しいのか分かりません
・ぬか床がいつまで使えるのか分かりません。替え時期は?

●これって大丈夫? こんなときどうする?
・ぬか床が水っぽくなってしまいます
・ぬか床にカビのようなものが生えてしまいました
・ぬか床の表面が黒っぽいのですが、傷んでいますか?
・味が酸っぱくなりすぎてしまいます。どうしてでしょうか?
・漬かりすぎてしまったのですが、おいしく食べる方法はありますか?

ぬか床の扱い方・お手入れ

Q:お手入れがつづくか不安。ぬか床には毎日なにか漬けたほうがいいですか?

A:常にお野菜を漬けている必要はありません。自分のペースで楽しんでくださいね。

ぬか床をはじめると、早く食べないと、毎日混ぜなければ! と追われるような気がして、ストレスに感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。でも、自分のペースで続けられれば大丈夫。毎日お野菜を漬ける必要はなく、お休みしても問題ありません。
何も漬けていないときは、表面をぺんぺんと平らに均し、涼しい場所に置いておきましょう。


Q:ぬか床はどこに置いて保管する?

A:常温での管理をおすすめしています。ぬか床の菌が活動しやすく、味わいも豊かに。

発酵に最も適している温度は20~25℃程度。基本的には冷蔵庫に入れず、常温で保管します。夏のものすごく暑いときは、できるだけ涼しい所に移す、もしくは冷蔵庫の野菜室に入れてあげるのもよいでしょう。日々のお手入れができていれば、常温のままで大丈夫です。
足しぬかは、生ぬかの鮮度を維持するため、冷蔵庫の野菜室に入れて保存してくださいね。


Q:ぬか床は毎日混ぜないとだめ?

A:混ぜることで、ぬか床の菌のバランスを保つことができ、おいしく漬かります。

なかなか手をつけられないときもあるかもしれませんが、ぬか床を育てるような気持ちで、定期的に混ぜてあげることをおすすめします。季節や温度によっても異なり、夏場は1日1~2回、冬場は2日に1回程度が目安です。
ぬか床を混ぜる理由は、そこに棲む主な3つの菌(酵母菌、乳酸菌、酪酸菌)のバランスを保つため。具体的には、爽やかな酸味を出す乳酸菌を空気に触れないところで増やしつつ、苦味や栄養の元となる酪酸菌を空気に触れさせて繁殖をコントロール、そして旨みのもととなる酵母菌の繁殖を適度に促し、全体に行き渡らせます。
これらの菌のバランスが崩れると風味も落ちてしまうため、ときどき場所を入れ替えながらぬか床のなかの環境を整えます。こうして手をかけてあげると、おいしいぬか漬けができますよ。

ぬか床に棲む主な菌
・酵母菌
好気性菌。空気が好きで、表面に多くなる
・乳酸菌
嫌気性菌。空気に触れないところに多くなる
・酪酸菌
嫌気性菌。空気に触れないところに多くなる


Q:どのように混ぜればよいですか?

A:上下を返すように混ぜます。混ぜすぎにもご注意を。

表面のぬかを下の方へ、下の方にあるぬかを表面へというふうに、天地返しをするように混ぜます。
空気をたくさん入れるように激しくかき混ぜてしまうと、空気の苦手な菌たちにとって好ましくない環境になるので、おいしいぬか漬けにするためには混ぜすぎないこともポイントです。

Q:足しぬかはどんなときに入れるの?

A:ぬか床の水分や塩分を調整したいときに入れます。水気が多くなってきたら足しぬかを。

お野菜を漬けていると、だんだんぬか床が水っぽくなったり、塩気が薄くなったり、ぬかが減ってきたりします。ぬか床をぎゅっと握って水がしたたるくらいになったら、足しぬかのタイミングです。
「発酵食堂カモシカの足しぬか」は、あらかじめ塩と唐辛子が混ぜてあるので、そのままぬか床に入れられます。ひとつかみずつ加えて混ぜ、ぬか床が耳たぶくらいの硬さになるように調整しましょう。


Q:毎日かき混ぜていますが、この匂いで正しいのか分かりません

A:ぬか床は変化の象徴。好きな匂い、食べて美味しい、と感じられるものであれば大丈夫です。

同じぬか床でスタートしても、漬けるお野菜やご家庭の環境などによって、状態はそれぞれに変化していきます。ですので、この味や匂いが正解、というのはありません。ご自身の好きな匂い、食べて美味しい、と感じられる状態であれば大丈夫ですよ。
もし不快に感じる匂いに変わってきたときは、ぬか床に棲む菌のバランスが崩れていたり、雑菌が繁殖していたり、といった可能性も。そんなときも、適切なお手入れをすればまた良い状態に整えることができます。

ご家庭のお料理と同じように、目指す味は、ご自身の好み。
お醤油を少し足して……と味付けができる料理と違って、ぬか床は味の調整が難しい部分がありますが、混ぜる頻度を変えてみたり、風味づけの食材を加えてみたり、あれこれ試行錯誤しながら、マイぬか床を育てる楽しみを感じてもらえればと思います。


Q:ぬか床がいつまで使えるのか分かりません。替え時期は?

A:ぬか床は本来、半永久的に使えます。もしも味が悪くなってしまっても、根気強くお手入れを。

発酵のスピードに混ぜる頻度が追いつかなくなると、ぬか床のなかの菌のバランスが崩れ、味が悪くなることがあります。そのような場合でも、またおいしいぬか床へと戻すことができるので、お手入れをしてあげてください。
一度付いた匂いや苦味は完全には消えないので、できる限り薄めていくという感覚です。
足しぬかをして、お野菜を漬けるのを少しやめて、ぬか床を休ませてあげる方法がひとつ。
あるいは、新鮮なお野菜を漬けて、野菜に付いている菌をぬか床に移していくのもひとつです。香りや旨みを足したいときは、乾燥昆布や乾燥させたみかんの皮、さっとゆでた柚子の皮などを。味がぼやけてきたときには、唐辛子を入れるのも効果的です。

これって大丈夫? こんなときどうする?

Q:ぬか床が水っぽくなってしまいます

A:足しぬか、または干ししいたけなどの乾物を入れてみてください。

お野菜を漬けているとその水分がぬか床に移り、どうしても水気が多くなってしまいます。水っぽさが気になったら、足しぬかを入れましょう。
「足しぬかはどんなときに入れるの?」こちらもご参考に。
また、干ししいたけや切り干し大根などの乾物を入れるのもおすすめ。ぬか床の水分を吸収しながら、その食材自体もおいしく漬かりますよ。


Q:ぬか床にカビのようなものが生えてしまいました

A:白っぽい膜なら、産膜酵母菌なので混ぜても大丈夫。黒や緑、オレンジ色のものなら、カビなのでその部分は取り除きましょう。

ぬか床をしばらく混ぜないでいると、空気の好きな酵母菌が表面に集まります。白い膜が張るとカビのようにも見えますが、これは産膜酵母菌という酵母菌の一種。薄い膜であれば、そのままぬか床に混ぜ込んで問題ありません。膜が分厚くなっている場合は、風味が落ちることもあるので、その部分を少し削いでから混ぜてあげましょう。
黒や緑、オレンジの色がついていれば、これはカビなのでその部分は必ず取り除いてください。表面にカビが生えてしまっても、ぬか床すべてが傷んでいるケースは少なく、慌てて捨てることはありません。ぬか床の黄金色が見えるまでカビを取り除き、明らかな異臭などがなければ、これまで通り、混ぜて使って大丈夫です。


Q:ぬか床の表面が黒っぽいのですが、傷んでいますか?

A:ぬかが空気に触れて酸化しているもの。かき混ぜても大丈夫です。

ぬかに含まれる脂肪分が酸素に触れて酸化することで、表面が黒っぽくなります。
なかがきれいな黄金色であれば、そのまま混ぜて使って問題ありません。


Q:味が酸っぱくなりすぎてしまいます。どうしてでしょうか?

A:しっかりと発酵している証拠。足しぬかと塩を加え、ぬか床を混ぜて様子を見てみましょう。

乳酸菌をはじめとする菌が活発に動いているようです。発酵を少し抑えるために、足しぬかと塩を加えてみましょう。「発酵食堂カモシカの足しぬか」にはあらかじめ塩が入っていますが、さらに塩を少しだけプラスすると、乳酸菌の増殖を緩和し味のバランスをとることができるのでおすすめです。


Q:漬かりすぎてしまったのですが、おいしく食べる方法はありますか?

A:炒めたり、和えたり、いろいろなお料理に活躍します。塩抜きをしても。

漬かりすぎて味が濃くなってしまった場合でも、お料理に十分活用できます。細かく刻み、鮭やごまと混ぜご飯にしたり、そうめんの薬味にしたり。塩味と酸味がついた調味料の一つと考えれば、炒めものや和えものなど、幅広いお料理に使えます。そのままお召し上がりになりたい場合は、水に浸けて塩抜きする方法もあります。

 

次回は、発酵食堂カモシカの店長吉田さんと坂ノ途中のスタッフで行った「ぬかどこ座談会」のようすをお伝えします。それぞれのぬか床の楽しみ方やおすすめの食材、発酵と野菜の話まで。どうぞお楽しみに!(8月中旬公開予定)

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