前編につづいて、京都・嵐山にある〈発酵食堂カモシカ〉さんの食堂の店長・吉田あすかさんに、ぬか床を続けるための秘訣を伺いました。

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ぬかどこ座談会・発酵とお野菜 前編

 

ぬか漬けを続けるためのひと工夫。お料理に活用を!

──ぬか漬けを飽きずに楽しむための良い方法はありますか?

吉田さん:
ぬか漬けはそのまま食べるだけでなく、お料理にもよく使います。
漬かりすぎてしまったときや、美味しく漬からなかったときのリカバリーにも。そういうときの対処法を知っておくことは、続けるコツのひとつかも。
漬かりすぎたきゅうりは、細かく刻んで薬味と混ぜて、好みで醤油やごま油を少々。お茶漬けやそうめんにぴったりの味になります。
ポテトサラダにきゅうりや玉ねぎのぬか漬けをスライスして入れるのもおすすめ。少しの塩やマヨネーズで味が調います。
炒めものも、よくつくりますね。もやしと一緒に、大根葉や小松菜など葉もののぬか漬けを炒めたり。これも味付けは少しだけで十分美味しくできます。ため込んだ古漬けや美味しく漬からなかったものを消費するのにも、炒めものはおすすめですよ。

古田:
そうそう、はじめにお話ししていた、冬でも楽しめるとっておきの食材……実はじゃがいもなんです。
先日じゃがいもを蒸したときに、ふとぬか漬けにしてみたら、とても美味しくて。それを軽く潰して、薄切りにした玉ねぎとオリーブオイルと和えたら、ポテトサラダに! 
冬は蒸したじゃがいもを漬けて乗り切ろうかと思っているところです。

 

ぬかどこはいきもの。日々の変化を実験のようにたのしむ

──ぬか床と生活していくうえで、どんなことを意識するとよいでしょうか?

吉田さん:
なんでも楽しむのが一番ですよね。「やらなきゃ、混ぜなきゃ、ダメにしたらあかん」となるとしんどくなってしまうので、「あれこれ漬けてみよう、漬ける時間を加減してみよう」というように、ぬか漬けをしながら実験をするような楽しい気持ちでいられるといいですね。
季節や、ぬか床の状態によっても、漬かり方は変わりますし、思い通りにはいかないのですが、わたしはその変化も刺激的で、楽しむようにしています。
ぬか床にはたくさんの菌がいて、まるでペットのような生きもの。かわいいなと思いながらいつも触っています。

古田:
今回ぬか床の企画をしようとなったとき、「毎日混ぜるのが大変そう」という声がやっぱり多かったんです。でもあまり気負わずに、自分のペースで続けてもらえたらいいなあと。

吉田さん:
手間をかけてあげたらその分ぬか床もよろこんではくれますが、人それぞれのペースでできたらいいですよね。
発酵食堂カモシカのぬか床クリニックでは、一人ひとりの生活サイクルにあわせて、こういうふうに付き合ってあげたらいいんじゃないですか? というような提案もしています。困ったときは、ご活用ください。ぬか床自慢も歓迎です。笑

 

発酵とお野菜

──ここで「発酵とお野菜」について。坂ノ途中の発酵特集では、冬の味噌づくりにはじまり、塩麹や甘酒など、いろいろな発酵食品を取り上げてきました。お客さまやスタッフからの反応を見ていると、発酵とお野菜にはどこか通じるところがあるのかなと思ったんです。

古田:
先ほど吉田さんが「ぬか床はいきもの」と仰っていましたが、坂ノ途中では「やさいはいきもの」というメッセージを発信しています。それは、季節や気候によって味も形も異なる、そのお野菜の個性にも目を向けてほしいという思いから。野菜という生きもののブレを楽しむ、そんな感覚が広がれば、きっと社会は今よりもやさしく、人のブレも少し許せるようなあたたかさを持つのでは……そんなことを考えているんです。
発酵も、自分の思った通りにはなかなかいかない。これって、相手のことをコントロールできないのと一緒で、人との関わりにも似ている。自分が受け入れることで、ちょっとやさしくなれるような気がするんですよね。

吉田さん:
そうですね、なんだかこう、待てるようにもなりますよね。発酵やその仕込みに時間がかかるのを待つように。

──発酵食堂カモシカさんの「命は命で元気になる」というメッセ―ジについてもお伺いできますか?

吉田さん:
はじめて聞いたときから、しっくり来ているカモシカの世界観です。
発酵食はすべて微生物が関わっていて、味噌、甘酒、醤油麹、お酢……ぬか漬けももちろん。発酵食堂カモシカでは「ぬか床は宇宙」と呼んでいるくらい、多様な命が溢れる美味しいカオス。微生物の命を頂き元気になり、私たちの手がその命が元気になるようなお手伝いをする。命が等しく価値を持って支え合っているのです。
お味噌汁をのんで、ほっと落ち着いたり、よしがんばろう! と思えたり。命ある元気なものをつくって食べて、自分たちの心も体も元気になろう。それをこの食堂だけでなくて、みんなの台所でということで、「発酵食を台所に取り戻す」ということを伝えています。

古田:
あんな旨みをつくってくれる菌たちは、本当にすごいですよね。旬のお野菜に、発酵食の深い味が加わると、本当に元気が湧くような美味しさを感じます。

武岡:
お野菜と発酵、切っても切れない関係ですね。
ぬか漬けだけでなく、いろいろな発酵とお野菜を組み合わせながら、豊かな食を囲んでいきたいなあと思います。

──最後にぬか床をはじめたみなさんにメッセージをお願いします!

吉田さん:
よくも悪くも手間がかかるぬか床ですが、それを楽しんでもらいたいというのが一番ですね。
ぬか床をはじめてから、半端なお野菜も無駄にしなくなったし、自分のサイクルで混ぜていると、生活にもメリハリが出るようになりました。正解はないので、それぞれの生活にあわせて、不自由も楽しみつつ、うまく付き合ってもらえたら。
面白がってなんぼ! です。ぬか床ぬか床とならず、自分のペースを崩さないことも大切。気負わず、便利に使ってやってください。
いざとなったら、坂ノ途中さんや発酵食堂カモシカに聞いてもらって、ながく続けてほしいですね。ぬか床クリニックでも、お待ちしています!

 

特別協力:発酵食堂カモシカ
命ある発酵食を台所に取り戻すことをテーマに、食堂やマルシェの運営、ワークショップの開催などを行われています。食堂ではぬか漬けをはじめ、さまざまな発酵食を味わうことができますよ。ぬか床クリニックでは、無料(追加オプションは有料)でアドバイスをしていただけるので、気になる方はご連絡ください。
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