こんにちは。エンジニアの片山です。夜、外に出ると空気のあたたかさと風の心地よさに夏の匂いを感じるようになってきました。梅のシーズンもひとまず一服です。梅農家のみなさま、梅をご購入いただいたみなさま、ありがとうございます。

昔はあたりまえのようにされていたらしい梅仕事も核家族化やライフスタイルの変化でやる人も減ってはいますが、このごろはまた、じわじわと増えてきているように感じます。自分の梅酒を漬けたり梅シロップを仕込むのは楽しく美味しいものです。自分も梅シロップの瓶にたくさんいれた氷砂糖が早く溶け切らないかとぐるぐる揺らしながらこの文章を書いています。

こういった、流行った文化が、廃れたかと思いきやまた盛んになるというのはとても興味深いです。ひとつ、自分がおこがましいと自覚しつつ流行らせたい文化について紹介・宣伝してみます。 それはマイ豆板醤をつくること。そこに至った経緯から、まず書いていきます。

麻婆豆腐というみんな大好きな料理があります(会社での非公式夜ごはんのなかでもリクエストの多いメニューです)。この麻婆豆腐の味を構成するもっとも重要な調味料である豆板醤について、京都の大きいスーパーや各国のお酒や調味料、製菓材料も豊富な明治屋三條ストアーさんに行っても2種類のなかから選ぶしかないくらいのものですが、気合の入った中華料理屋さんの麻婆豆腐はどうやら豆板醤から違う気がするのです。あの味を再現するには、スーパーにはない豆板醤が必要ではないか・・・と思ってGoogle検索していると、どうやら豆板醤はじつは簡単につくれるようです。しかし、ちゃんとしたレシピはわからないので図書館に行ってきました。

そもそも豆板醤とはなんなのか。 中国料理小辞典(2011, 福冨奈津子)によれば、ソラマメと小麦粉を主原料にした醤(じゃん)とのこと。つまり、唐辛子は入れていないし味噌と同じようなつくり方の発酵食品です。日本で言われる辛い豆板醤は特に、豆瓣辣醬というそうです。これはいろいろな材料をいれて複雑な味にしたもので、地域やお店によって味が違うとのこと。日本のスーパーではせいぜい2種類しか売っていませんがむこうではたくさん売っている様子。まるで日本の味噌のようです。ちなみに、赤いイメージが多い豆板醤ですが、寝かせると黒くなっていき辛さも丸くなってくるそうです。これは郫县豆板醤(郫県豆板醤とも。読みはピージェントウバンジャン)と呼ばれる高級品です。おそらく、東京駅近くの中華料理屋、人人人(れんれんれん)や、京都北白川の駱駝(らくだ)などの黒めで旨さと辛さを高いレベルで調和させている麻婆豆腐をだしている名店はこれを使っているのではないかと睨んでいます。しかし、近所の図書館の中国料理の本や発酵食品の本には豆板醤の作り方は載っていなかったため、インターネットで取り組んだ方のレシピなどを参考にしました。こういうやり方があるよ、だったり、この本が詳しいよ、などございましたらご教示いただけますと幸いです。 前置きが長くなりましたがやっていきましょう。

材料

  • ソラマメ 1kg
  • 麹 60g
  • 塩 30g
  • 粉唐辛子 30g

豆板醤 材料 ・煮沸消毒した瓶。上記の材料であれば500mlほどのサイズでかまいません。

唐辛子はすりつぶそうと思ったのですがすり鉢でするのに挫折して既製品を購入しました。麹について、インターネットで調べたレシピでは米麹をつかうパターンが多かったのですが、先に挙げた中国料理小辞典によれば、中国の豆板醤はソラマメと麦であったということであったので麦麹を利用します。
麹は、京都、神宮通三條の大阪屋さんという麹屋さんで購入したものです。

今回のつくりかた

いまが全盛期のソラマメくんです。
ソラマメ
青々でっぷりとしたソラマメは1,056gあります。がんばって皮を剥きます。ねじって裂いて取り出す。ねじって裂いて取り出す。360gになりました。
ソラマメ
これはソラマメくんの抜け殻です。
ソラマメ殻
鍋に湯をわかし蒸し器にむいたソラマメをならべて20分ほど蒸していきます。青っぽいような栗のようなよい匂いがしてきます。このままでももちろんうまい。ほくっとした感じとじんわりとした甘みがあります。そしてさらにソラマメくんの薄皮を剥きます。蒸したときに破れていて、指で押すだけで中身を取り出せました。

さて、皮が減ったのと人々につままれたことによってソラマメくんの重さは215gになりました。

ソラマメコア

これをある程度木べらでつぶしてから、麦麹を60g、塩を30g、粉唐辛子を30gいれます。

ソラマメインザボウル

ビニール手袋をして手でこねます。はじめはうまく混ざるか不安でしたがすぐまとまってきます。ソラマメくんをつぶした手が真っ赤になりました。ここからは手が真っ赤でカメラを持てなかったので写真がありません。

はい。
このまますこし舐めたところできてすぐでもうまい。ごはんが進むしお酒が飲めます。半年寝かせるまでもつでしょうか。さて、煮沸消毒した瓶にいれます。空気が入らないようにしてラップをぴっちりはります。このまま冷暗所に置いて半年後にできます。
豆板醤

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今年はソラマメの旬も過ぎつつあるなかでこの記事を書いていることに申し訳なさもあるのですが、この、ソラマメの時期にマイ豆板醤をつくる文化は広まるでしょうか。もし豆板醤つくりたいよ!という方がいましたら、坂ノ途中の提携農家さんにソラマメくんの栽培量増やしてもらう依頼をしたいのでコメントいただければと思います。みんなで豆板醤を仕込んで半年に最強の豆板醤を選出したいところです。

以下余談。
文化を意図的に広めるという考えにはおこがましさがあるとは思ってはいるのですが、豆板醤以外にも広めたいものがあります。それは、自分がいま取り組んでいる、有機農業や環境保全型農業などのオーガニック・エコ農業のプラットフォームを目指している、ファーモ。これは、販路開拓や情報や物流の流れに困難を感じている生産者さんや、買い手となる小売店、飲食店、流通業者さんの問題を解決していきたいと開発しているものです。

第一弾として販路確保をひとつの重要な問題と考えており、生産者さんと買い手をつなぐマッチング機能を実現し、次いで受注管理で納品書作成や注文集計などできる機能を開発しています。今後も、追加機能を開発中で、仕事中はもちろん通勤中もお風呂でも麻婆豆腐をつくっているときもどうしたらよいものができるか考えています。

生産者さんと買い手さんでご興味のある方がいれば、よければぜひ使ってみてください!あわせて、みんなでよりよいものをつくっていきたいと思っているので、試してみたい、手伝いたい、連携した機能をつくりたい、などございましたらお気軽にご連絡くださいませ。
フルタイムでもインターンでも募集中です。

新しい文化は、馴染みがなかったりやり方を変えないといけないこともありなかなか普及しないものではありますが日々改善しながらみなさまの声を聞きつつ広めていきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

さて、孔子先生は言いました。不得其醤不食、と(論語 郷黨第十より)。意味は、(孔子先生は)適切な醤(じゃん)がなければ食べものを食べなかったということ。孔子先生に食事をつくるひともさぞたいへんだったと思いますが、食べものにはそれにあった調味料があるとよりよくなるというのはわかります。もちろん、旬の、蒸したてのソラマメのようにそのままでも美味しいものもあるのですが。坂ノ途中は日本のオーガニックを広げていくための醤になりたい、と考えていますので今後ともよろしくお願いいたします。

 

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