今月のコーヒーのお話 vol.2(2020年12月)より

タイのスエさんは、自分たちのことを「なまけ者(レイジーマン)」と呼びます。カフェでギターを弾きながら、口ぐせのようにいいます。

「僕はなまけ者なんだ。すぐそこに田んぼがあって、庭にフルーツがなっていて、コーヒーが育ってる。それで十分生きていけちゃうからね」

いつも優しい笑顔でみんなを安心させてくれるスエさんですが、彼の家は代々この地域のカレン族のリーダー的存在であり、活動家。 政府による森林保護の名目で、先祖代々の土地を追われそうになったときには、 スエさんのお父さんを中心に団結し、地域の人たちみんなでチェンマイを通ってバンコクまで、何百キロにもわたる抗議の行進をしたそうです。

村をとりまく環境が大きく転換する中で育ったスエさんは、お父さんの代のように変化を真っ向から否定するのではなく、外の世界とかかわりながら、新しい暮らしのあり方を模索しようと考えています。近隣には換金作物としてトウモロコシの大規模栽培の道をえらぶ村もある中、スエさんたちの村は、40年ほど前に外国から持ち込まれ森の中で育つままになっていたコーヒーの栽培と精製に取り組みはじめました。森の樹々と農作物を共生させながら栽培するアグロフォレストリーという農法をとり、村の自給的な暮らしを大きく変えることなく、コーヒーで安定した現金収入も得る。それを地域を巻き込み、持続可能なビジネスにしていこうとしています。

「伝統的な生活をいつまでも続けられるとは思っていない。でも外の世界にただ染まるのではなく、時間がかかっても良い中間地点を目指したい」とスエさんは話します。それがレイジーマンの生き方。地域の未来を見据えて、じっくり取り組んでいます。

スエさんのお話を聞くと、コーヒーのもつ可能性にハッとさせられます。美味しいだけでなく、自然や伝統を大切にすること、産地に暮らす人たちの未来にも繋がっているのです。これから末永く、スエさんのコーヒーをお届けしていきたい、そうしてレイジーマンの哲学を多くの方に知っていただけたらと思っています。

タイのなまけ者コーヒー って?
伝統を大切にしながらも、現代にあった生き方を模索している農家さんたちがいます。それが今回のコーヒーをつくった「レイジーマンコーヒー」さんです 詳細はこちら>>

 

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