コロナもあるていど落ち着いて、お盆はひさしぶりに、富山の実家に帰省した。
のんびりしようとしていたところに、でも、台風のニュース。
やまのあいだファームには、もうすぐ収穫という作物、掘っ立て小屋のような倉庫や出荷の作業場、とても頑丈とはいえないビニールハウス、心配のタネはいくらでもある。
どうしよう、と思っても、部屋をうろうろすることしかできなかった。

数年前、大きな台風がとおりすぎたあと、やまあいへ向かう道すがら、目にした光景は忘れることができない。暴風で、道をふさいでたおれた街路樹、あちこちに陰気に垂れ下がった電線、ぺしゃんこにつぶれてしまったハウス、逆さまになっている作業小屋、そして水浸しの畑と薙ぎたおされた作物。やまあいまでの道のりは、やたら遠いものに感じられて、いつもの角を曲がるときには、いつもと同じ風景でありますようにと神だのみをしていた。
いくら備えをしていても、人がつくったものは自然のまえではあまりに脆い。結局は、祈るしかないことに、自分の無力さを思い知らされた。

今回の台風7号の被害は、アーチパイプを使ってネットを張った支柱がたおれたくらいで、正直、まあこれくらいならとホッとした。
翌日に支柱を起こし、圃場の水をできるかぎり抜く。できることはすくない。野菜は、水に浸かってしまって駄目になったものもあったけれど、しばらくすると、また元気な姿をみせている。
台風のちからはすさまじいけれども、野菜のちからもものすごい。そのふたつの自然のちからのあいだでヒトは右顧左眄しているだけかもしれない。
それでも、ヒトのちからが無にひとしいにしても、台風を経験して、次の台風に備えてやるべきことは、いくらでもある。謙虚に、学びつづけること、農業のかたちはそうしてつくるしかないように思う。

●ケンゾー

※写真は、やまあいの元スタッフ・松井彰さんが独立してはじめた〈新六農園〉のもの。やはり天気には、泣かされたり、笑ったりの日々だそうです。