vol.21

私の父は某歯磨き粉メーカーの研究員。私が幼い頃は、おやつに出されるものといえばするめ、昆布、おせんべいでした。スーパーで甘いお菓子をねだるたびに「虫歯になるからダメ」と言われ……その反動からか、今では、自分のおやつに甘いクッキーやチョコレートばかり買ってしまいます。
小さな子どものおやつ、何がいいのかな? と悩んでしまいますよね。今回はおやつについて考えてみます。

そもそもおやつは必要なのか

栄養学的視点からは、子どもにはおやつが必要とされています。
幼児は活動量が多く、体の成長も著しい時期。たくさんのエネルギー量(カロリー)や、カルシウムなどの栄養素が必要です。
いっぽうで、体が大きくなく、胃の容量も少ないため、必要な栄養を3食で摂りきれない可能性があります。そこで、おやつでこれを補うのです。
3歳ごろまでは朝と昼のあいだ、昼と夜のあいだの2回、4〜5歳では昼と夜のあいだの1回が、1日の目安です。1日あたり、150~200kcalぐらいまでにするのがよいとされています(※1)。

おやつには何を食べるとよいか

おやつが必要とされる理由から考えると、エネルギー量やカルシウムなどの栄養素を補えるものがよいと言えます。私も含め栄養士は、食事の延長のような内容を理想と考え、くだもの、牛乳、しらす入りおにぎりなどをおすすめしています。
では、チョコレートやクッキー、ポテトチップなどはどうなのでしょうか。
甘いお菓子やスナック菓子も、食べさせてOKです。おやつの時間は、楽しみやコミュニケーションの促進などの役割も担っています(※2)。食べることの楽しさを、お気に入りのお菓子から感じてもらいたいです。栄養も少し気にして、果物や牛乳なども組み合わせてとれるといいですね。
いっぽうで、歯の健康を考えると、甘いお菓子はあまり歓迎されません。砂糖は虫歯の大きな原因のひとつです。また、砂糖に限らず、食べものをだらだらと食べつづけることで虫歯のリスクは高まるとも言われています。甘いものを食べたら歯を磨く、食べる時間をきちんと決める、などがポイントになります。

おやつを通じて、食べることを好きになってほしい

幼児期は、好き嫌いなど、食についての悩みの多い時期です。子どもがごはんはなかなかすすまないのにおやつは食べる……と困っている方も多いと思います。
でも、おやつのためににごはんを少し頑張って食べることができたり、おやつを買おうとお買いものに一緒に行って、おやつだけでなくいろいろな食材を目にする機会が増えたり。そうした経験を積み重ねて、ふだんの食事への抵抗感が次第に減っていくこともあると思います。

おやつにワクワクしたり、これが食べたい! と言えるのは素敵なことです。楽しい食体験は、子どもにとってとても大切なもの。お子さんといっしょに、好きなお菓子の選び合いっこやおやつ交換をしてみてくださいね。

東京都幼児向け食事バランスガイド 指導マニュアル
(※1)p10 菓子・嗜好飲料の取扱い方について ”幼児の推定エネルギー必要量の10 ~20 %、200kcalまでが望まし い”
(※2)p4 東京都幼児向け食事バランスガイドの構成と内容 ”食生活の楽しみである「菓子・嗜好飲料(ジュースなど)」。食事全体の中で量的なバランスを考え、「楽しく、ちょうどよい量」をとることが大切である。”

執筆:奥野由(おくのゆい)
大学で栄養学を学び管理栄養士の資格を取得。食品メーカーで商品開発として楽しく働いていたが、出産を機に「子どもと食」への興味がむくむくと膨らみ退職。離乳食や幼児食の勉強をはじめる。母子栄養指導士の資格を取
助産院などで教室を開催しつつ、坂ノ途中と一緒にベビーフードを考えている。あだ名は「ちゅい」。その由来もいずれこのコラムで明らかになるかも……?