生きた香りを、瓶のなかへ。
手しごとの先で、次の季節が待っている。

⚫︎

坂ノ途中の編集室のウェブマガジン「日和 びより」では、お野菜をはじめ、わたしたちが取り扱うもののこと。生産者さんのこと。暮らしのこと。坂ノ途中のスタッフが今、どんなことを考えているのか。
そんなあれこれを、ありのままにみなさんにお伝えしていきます。

 

#手しごと、よもやま

はじめて柚子胡椒をつくったのは、5年まえの秋。

坂ノ途中で、柚子胡椒の手づくりセットを発売することになったのがきっかけでした。農家さんが育てた、ぴかぴかの青とうがらしと青ゆずを見て、自分でもつくってみたいな、と。

せっかくなので、姉と従妹にも声をかけると、なにそれ、おもしろそう! と、柚子胡椒のためだけに実家に集まってくれました。そのときはただ、わくわくした気持ちだけを携えて。

用意した青とうがらしと青ゆずは、母にお裾分けする分もあわせて4人分。まずは2kgほどの大量の青ゆずを、おろし金でひたすら削っていきます。うわあ、いい香り! なんて言っていたのははじめだけ。いつしか無言になり、「わたしたち、何やってんねやろ……」という空気が漂います。

青とうがらしが、これまた手ごわい。一つひとつ切って種を取り除き、細かく刻むのですが、なんせ刺激がつよい。途中から加わった従妹の夫が、うっかり手袋をつけ忘れて「ひりひりする~!」と大騒ぎしたり(手袋、ぜったいはめてって言ったのに……)。

こうなるともう、修行のよう。それでも、あとちょっと、あとちょっと、と目くばせしあいながら手を動かすうちに、気づけばまた楽しくなっていました。

仕込みを終えたあとも、キッチンには青々とした爽やかな香りが立ち込めます。なにも知らずに帰ってきた母が「めっちゃいい香り!」と目を丸くしたりして。

大変だったけど、いいやん、柚子胡椒。みんなで笑いあったことが、忘れられない体験になりました。

それ以来、わたしたちは毎年柚子胡椒を仕込んでいます。あのとき、簡単にできてしまっていたら、きっとこうはならなかっただろうな。苦労したからこそ、青ゆずの季節が近づくと思い出す、あの日の香り(と、手のひりひり感)。

柚子胡椒を仕込むなら、2~3人集まってわいわいとやるのをおすすめします。手間のわりにできあがり量は多くないのですが、そこがまたいい。とりとめのない話をしながら手をうごかす。この先に待っている、ほかほかと湯気が立ち上るお鍋の季節に思いをはせる。そんな時間も、この手しごとがくれるご馳走だと思います。

=====
柚子胡椒 手しごとメモ
材料:「柚子胡椒手づくりセット」1セット」
保存期間:1年ほど。爽やかな香りが長く続くのが柚子胡椒の魅力(すだちなどの柑橘でも作れますが、香りはだんだん弱くなります)。
おすすめの使い方:お鍋の薬味に/カルパッチョのドレッシングに混ぜて/きゅうりの塩もみに少量加えて/うどんのアクセントに。
青ゆず果肉・果汁の活用方法:自家製ポン酢や塩漬け、発酵調味料づくりに。
=====

語り・古田佐恵子(はんそく/お野菜セット組担当)

 

#in my little kitchen

夏の終わりの瓶詰め。わたしは、塩バジルを仕込む。

小さな黒い種を畑に蒔いたら、ひとつだけすくすくと育って、甘くすうっと香る緑の葉を茂らせた。秋が近づき、白い花をつけはじめると、次の種をつくり、やがて木は枯れてゆく。

ひと夏のバジルの香りをなるべく長くたのしむために考えついたのが、塩漬け保存。バジルの葉と塩を交互に重ねて瓶に詰めるだけ。葉はぱりっと乾燥して、塩にはその香りがほんのりとうつる。

寒くなったころ、夏の畑のバジルが香るトマト鍋を、はふはふと頬張るのがたのしみだ。

タイムやローズマリーなど、ほかのハーブでつくっても。
塩バジルのレシピはこちら≫

文・武岡萌(レシピ/編集担当)

 

#いいもの、ひとつ

絵本『よあけ』
ユリー・シュルヴィッツ 作・絵 瀬田貞二 訳 出版元 福音館書店

山に囲まれた湖の畔で、一晩を過ごす、祖父と孫。少しずつ夜の輪郭が形を変え、動物たちが動き出す。

薄明かりが広がり、あとちょっと、あとちょっと、と朝に向かっていく。まるで自分も湖の畔に座っているかのような、よあけを迎える高揚感を感じられる一冊です。

 

文・日和編集チーム