5月上旬、緑の葉の陰からのぞく梅の実がふくらみはじめるころ、福井県若狭町のエコプレイス・サカノさんの畑を訪れました。

坂野さんの梅の畑は、山の緑と田んぼに囲まれた場所にありました。湧き水が周囲をめぐる畑は、とても静かな、清々しい空気に満ちていました。

梅の畑では、新緑をたたえた枝がうつくしい樹形をつくり、空に向かって伸びています。樹の下には、白、ピンク、黄色などのかわいらしい花をつけた草花があちこちに。虫たちのすみかとなる草は、短すぎず、高くなりすぎない程度に刈っているそうです。「草や花、虫やカエルなど、いろいろな植物・生物がいて、豊かな生態系があることが大事」とおっしゃっていました。  

できるだけ自然に近い環境で育てたいと、土に与えるのは炭だけ。ほかに肥料などは入れていないので、樹が弱ってしまわないよう、冬に行なう剪定(せんてい)も毎年試行錯誤。内側は残して外側だけ落とすなど、切りすぎないように注意しているそうです。

剪定した枝は、畑の一か所に集めて、冬のあいだ乾燥させてから、春先に燃やして炭に。その炭を土壌改良剤として循環させています。

福井は古くから梅の産地で、主力品種は剣先、紅映(べにさし)。

剣先は、皮が厚いのが特徴で、梅酒や梅シロップに向いていると言われています。坂野さんにお聞きしたところ、しっかり追熟させたら、梅干しにもおすすめだそう。皮が厚いぶん、食べ応えがある梅干しになるのだとか。

紅映は、その名の通り、実がうっすらと紅色に染まります。梅酒や梅シロップはもちろん、皮が薄いので、梅干しにするとふわっとした食感が楽しめます。「それぞれお好みで、違いを楽しんでもらえたら」と坂野さん。

坂野さんのご出身は、大阪府高槻市。長く会社員をされた後、「自然のなかで仕事がしたい」と、滋賀県高島市のお米農家さんのもとで働きながら、農業の経験を積みました。地域おこし協力隊に参加した縁で福井県若狭町に移住。その地で盛んに栽培されていた梅に魅力を感じて、2019年に梅農家として独立されました。

梅の魅力をお聞きすると、
「梅は古くから日本人が健康維持のために使っていたもの。それを広めていけることがうれしい。ぜひ自分の手で、梅しごとをしてもらいたいなと思っています」とのこと。
「だからぼくは、梅干しは売らないんです。梅干しを買わずに、自分でつくってみてほしいから」とおっしゃっていました。

おすすめの梅しごとも教えてもらいました。
「梅醤油。洗ってヘタを取った梅を瓶に入れて、梅がかぶるくらい醤油を入れるだけ。1〜2週間おいたら完成です。梅醤油は、冷や奴や刺身にかけるなど、そのままお醤油がわりに使えます。さわやかな酸味があって、なんでも美味しくなります。漬けていた実ももちろん食べられますよ」

坂野さんは、紫蘇を入れない白梅干しがお好きだそう。とても簡単につくれて、美味しいから。また、梅干しを漬けるときにできる梅酢でつくったスポーツドリンクは、熱中症予防に最適なのだとか。梅酢小さじ1、ハチミツ小さじ1、水カップ1(200cc)の割合。夏場の草刈りの間もずっとこれを飲んでいるそうですよ。

「梅酢を手に入れるには、梅干しをつくらないと。梅酢を買うんじゃなくて、梅干しをつくってほしいんですよね」とにっこり笑う坂野さん。

自然に寄り添いながら育てた梅で、梅しごとをしてほしい。
願いのこもった梅を、今年も届けてくださる予定です。

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