カレンダーのイラストを描いてくださったのは、イラストレーターの小泉理恵さんです。
今回は、小泉さんへのインタビューをお届けします。聞き手は、坂ノ途中のSNSを担当するたまみさん。実は小泉さんとは元同僚で、今回のご縁をつないだ人でもあります。


はじまりは浅草
台風一過の、夏空がひろがった日。浅草の、とある喫茶店。
坂ノ途中のたまみさんと、小泉理恵さんは、久しぶりに待ち合わせをして、このお店を訪れました。
控えめな照明の店内には、レンガの壁一面に振り子時計が飾られていて、「ああ、変わらないね」と、2人は懐かしそうに見まわします。
出会ったのは、10年ほど前、浅草にあるジュエリーの会社で働いていた頃のこと。今回のインタビューは、当時、2人が仕事帰りによく立ち寄っていた、この喫茶店ではじまりました。
小泉さんの絵に流れる、ゆっくりした時間
たまみさんがジュエリーの会社を離れ、坂ノ途中で働きはじめた少しあと。小泉さんも会社を辞め、イラストレーターとしての活動をはじめます。たまみさんは、小泉さんの活動を、ずっと見ていました。
京都と浅草。
住む場所も、働く場所も変わって、なかなか直接会う機会はなかったけれど、
「いつか一緒に何かできたら」と思っていたそうです。
絵の中に残された余白から、そこにいる人や、暮らしの気配まで想像できる。たまみさんは、小泉さんの絵に、坂ノ途中との共通点を見出していました。農の時間も、季節の移ろいも、きれいには区切れない。少しずつ変わっていく景色を眺めながら、「今年は、旬が少し遅いかな」「ひと雨ごとに、季節が進むな」と感じる。春夏秋冬だけでは表せない時間が、坂ノ途中には流れています。
小泉さんの絵にも、どこか似た時間が流れている。
カレンダーをつくるなら、絵は彼女にお願いしたい。
たまみさんは迷わず小泉さんを推薦し、今回のコラボレーションが生まれました。
一枚一枚、初めての挑戦
再会のおしゃべりを楽しんだあと。たまみさんは、改めて小泉さんに向き合い、今回のカレンダーの絵について尋ねました。
今回のカレンダーでは、これまであまり描いたことのないモチーフも多かったそうですね。
はい。事前にモチーフを選んでもらっていたので、描きづらいものはあまりなかったんですが、実際に描いてみると、使ったことのない調理道具だったり、果物や野菜そのものだったり、そういえば、あまり描いたことがなかったな、と気づくことが多くて。
たとえば、とうもろこし。果物や野菜を絵の一部として描くことはあっても、それ自体を絵の主役にして描くことは、これまであまり多くなかったんです。「どう描いたら、とうもろこしらしさが出るんだろう」と、何度も何度も頭でイメージを膨らませました。
色についてはいかがでしたか?
色も新鮮でした。
たとえば、紫蘇ジュースの紫色。明るい紫というか、赤みがあるような、使い慣れない色で。既製品ではぴったりくる色がなかったので、手元にあった色をいくつか混ぜて仕上げました。
今回のカレンダーでは、新しい色との出会いが、結構あったなと思います。
色は、一本の色鉛筆から
普段は、どんなふうに色を選んでいるんですか?
どうしてもこの色を使いたい、という1色をまず決めて、そこから相性のいい色を探していくことが多いです。色鉛筆を何本か並べて見比べたり、デジタルデータの上で近い色を試したり。
決めきれないときは、いったん、机にわーっと色鉛筆を並べてみることもあります。
すると、その中から「あ、これいいかも」という、思いがけない組み合わせが見つかることもあって。そういう偶然に助けてもらうこともありますね。
愛用しているのは、ホルベインの油性色鉛筆です。少し粉っぽい、クレヨンに近い質感と、しっかりした発色が好きで。足りない色は、ほかのメーカーのものや水性の色鉛筆で補ったりもします。
そもそも、なぜ絵を描くようになったのか
改めて聞いてみたいのですが、小さい頃から絵を描いていたんですよね?
はい。描いてはいたんですが、一枚の絵をきちんと仕上げるタイプではなくて。ノートの端に、いたずら描きをするような感じでした。周りに絵が上手な人が多かったので、自分では「なんとなく好きだな」くらいの距離感だったんです。
それよりも、絵を見ることのほうが好きでした。引っ越しを何度かしたんですが、いつも図書館が近くにある環境だったので、そこで本のイラストを眺めたり、本屋さんで新刊の表紙を見たりするのが楽しみで。色を見ること自体も好きで、小さい頃は色辞典を持っていたくらいです。今思うと、それがずっと続いている感じです。
そこから、イラストを仕事にするようになったきっかけは?
大学に進んでからも、「絵が好きだから、それを仕事にできたら」と思っていました。
でも、周りのレベルの高さに一度心が折れてしまって、デザイナーの道へ進みました。
デザイナー時代は、イラストを描く機会もあったんですが、依頼に合わせてほかの人の作風に寄せるような仕事も多くて。もちろん仕事としては必要なことなんですけど、これは本当に自分の絵なのかな、と少し引っかかるところがありました。
大きな転機になったのは、フィンランドへの旅行です。現地では、年齢に関係なく、それぞれが好きなことを楽しんでいて。学び直すことも、何かをはじめることも、すごく自然なこととして受け入れられていました。それを見て、「別に、好きなことをやったらいいじゃん」と思えたんです。
帰国後しばらくして、絵の学校に入り直し、イラストレーターとしての道を歩みはじめました。
これから、描いていきたいもの
これから、挑戦してみたいことはありますか?
もっと表現をシンプルにしていきたいです。見る人がもっと自由に想像を膨らませられるような「余白」のつくり方も、さらに深めていきたいと思っています。
あとは、自分の作品を海外の方にも見ていただく機会が少しずつ増えてきていて。実際にどんなふうに受け取ってもらえているのか知りたいので、展示や交流の場にも、いつか参加してみたいですね。
ただ、『この分野の仕事をしたい』と、ひとつに決めているわけではなくて。
今は、思ってもみなかった依頼が来たときに、それをどう自分らしく表現できるかを考えるのが楽しいんです。
今回のカレンダーも、描いたことのないモチーフや、使ったことのない色との出会いがあって、新しい発見がたくさんありました。
予想していなかったものを楽しめる状態でいたい。今の自分の気持ちにいちばん一番近いのは、そんな感じかもしれません。
発売・購入について
● 発売開始:2026年11月6日
● 価格:2,860円(税込)
● 販売場所:坂ノ途中OnlineShop(本と野菜 OyOyでの店頭販売も予定)
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