もうすぐ、夏が、来る。
6月に入ってきつい陽射しがちょいちょい顔を出す。やまのあいだファームでは、夏作のメインになるナスとオクラが元気いっぱいに育っています。

やまのあいだファームの「耕す」は、この夏で4年目。
1年目、2年目は、家庭菜園で使うようなちいさな耕運機で、畑を何度も往復した。
去年の夏作は、知合いの農家さんにトラクターで耕運してもらって、そこから管理機で畝を立て、手作業でマルチを張った。
去年の秋冬は、農機具のシェアリング・サービスを利用して、自分たちでトラクターを運転して、耕運や畝立てなどをすべて機械でおこなった。

トラクターを運転するのも、作業をするのもはじめてのことだったけれど、簡単なレクチャーを受けて、すこし練習すると、なんとか使えるようになった。
やまあいくらいの狭い畑だと、耕運、畝立て、マルチ張りが、どれも半日くらいで終ってしまう。手作業で、ひとつの行程に数日が必要だった以前のことを思うと、信じられないくらい、早く、楽に、仕事がはかどる。

ぼくたちのような小規模で、もしくはこれから農業をはじめようとする人たちにとって、トラクターというのはかなり悩ましい存在だ。何百万円もするものを、おいそれと購入できるものではないし、購入しても、それは毎日使うようなものではなくて、1年のうちの300日は倉庫で眠っている。

だから、この農機具のシェアリング・サービスはとてもありがたい──ふだんの暮しでも、カーシェアリングや、自転車、ベビー用品、最近は傘のシェアリングなんていうサービスもある。ぼくは40代だけど、もっと若い人たちのあいだでは、モノは「所有」するものではなくなってきているみたいだ──購入しなくてよいのなら、ハードルはずいぶん下がる。

トラクターを簡単に利用できるしくみがあって、作業はものすごくはかどって、というのは、いいことずくめのよう。けれども、ひとつだけ、気になっていることがある。
土のこと。
これまでダイレクトに感じとっていた、土の感触は、トラクターに乗ってしまうと、相当にぼんやりしたものになる。鋤や鍬を使い、土に触れる機会が、ほんの少しかもしれないけれど失われてしまうことが、どこか、心に引っ掛かっている。仕事(効率)ということから考えると、しかたのないことではあるのだけれど……トラクターの力を借りるぶん、もっとしっかり土のことを考えないと、そう思っています。

●ケンゾー