このところすこし忙しくて帰宅が遅くなりがちでした。
帰宅が遅いとお米を研いで炊きあがるのを待っていられなくて、パスタを茹でたり、煮込みうどんにしたりと、帰宅して25分で食べ始められるものをよくつくっています。 そういう生活をしていると、たまにお米を炊けるときにほっとします。ありものでつくった味噌汁と、ちょっとしたおかずをつくって、いっしょに食べる米がうまい。

(米、どんぶりは近所の陶器屋さんで買いました。)

そして、これまでは食べる分だけ炊いて食べきってしまっていたため、なかなか食べる機会がなかったお冷やご飯もおいしいということを再発見しました。 容器に移してちゃんと蓋をして乾かないようにし、常温で数時間か半日ほど置いておいたご飯。
冷や飯を食う、という言葉があるように冷遇されることの代名詞でもあるのですが、うまいものです。 たいてい、ちょっと余ったり、1日分まとめて炊いたりしたときにはお米を器に移して、翌朝温めて食べたりお弁当にしたりします。一日たったら焼きめしにしたりケチャップ(これは米とあわせるまえに、フライパンでよく炒めて汁気を飛ばすのが重要)で炒めてチキンライスからオムライスにするのも楽しみでした。 この器にとっておいたご飯を自分が育った家では単に「お冷や」と呼んでいましたが、おなかが減ったときにはこれをおやつ代わりにそのまま食べることもありました。

そんななか、時代小説家の子母沢寛さんが新聞記者だった1920年代に、著名人に食について聞きにいって新聞に書いた本「味覚極楽」を読んでいたところ、うまそうな料理屋やこだわりの食事の中に混じって、お冷やご飯の話があっておもしろかったので紹介します。

増上寺の大僧正、道重信教さんの話です。引用します。

飯じゃがね、これはつめたいに限る。たきたてのあたたかいのは、第一からだに悪いし歯にもよくないし、おまけに飯そのものの味もないのじゃ。本当の飯の味が知りたいなら、冬少しこごっている位のひや飯へ水をかけて、ゆっくりゆっくりと沢庵で食べてみることじゃ。この味は恐らくわしのような坊主でなくては知るまいが、うまいものじゃ。

はい。なんだかよく分からないですがおいしそうです。
ちなみに、余談ですが、この大僧正の兄の、孫の孫(ほぼ他人ですが)は「モーニング娘。」の道重さゆみさんで、この増上寺でライブをしたこともあるそうです(出典 http://www.crank-in.net/entertainment/news/29082)。

さて、温かいご飯が体や歯に悪いというのは迷信ですが、お冷やご飯こそが米の味がわかるというのは同意です。この1934年に亡くなった大僧正のころのお米から、幾分品種改良もされているので同じ味ではないとは思いますが、現在のお米でも冷ましたほうが味がよくわかるのは同じです。

機会があればみなさまもぜひお米を冷まして、ゆっくり噛んで味わってみてください。

(たまに鍋で炊いて、おこげができるのもおいしいものです)

そういえば、自分はいつごろからお冷やご飯が好きだったか振り返ると、大学生のころのある失敗を思い出しました。
大学では、過酷な練習で知られるボート部に所属していて、大量の練習をこなしつつ米を1日5合食べる生活をしていました。摂取カロリーを計算すると、一日5000kcalは食べていましたが、これだけ食べてようやく体重をキープできているような感じで、いま振り返るとよくやれたなと思います。 大量に食べるお米をおいしく食べるためにいろいろ試行錯誤していて、特に卵かけご飯(当時はTKGと呼ぶことが流行っていました)をかなりの種類つくりました。個人的には、海苔とめんつゆと卵が好みでした。あるとき、炊きたてすぐに卵かけご飯をつくったらもっとおいしいんじゃないかと思いいたりまして、これは試さずにはいられないと一度、炊飯器でご飯を2合くらい炊いて、その炊飯器に直接、卵を2つ落として醤油を混ぜて食べたことがあります。ほかほかの熱いご飯に卵を混ぜてさぞおいしいだろうと期待していたのですが食べてみると、炊きたてゆえの柔らかさとともになんともいえない微妙な味で食べきるのに苦労したのでした。そのときに、もしかして、炊きたてご飯は、そのイメージほどはおいしくないのでは、と思い冷静にいろいろ食べ比べていく中で、お冷やご飯を再評価していったように思えます。

坂ノ途中ではいま、いくつかのお米を扱っていますが、コシヒカリもササニシキも、京都旭も、どれも個性はありつつ冷めてこそ、甘みがわかりやすくなっておいしいです。
もちろん、なにかおかずと食べてもいいし、味噌汁に入れてねこまんまにしてもいい(ただし、一部地域の人は、ご飯に鰹節と醤油をかけたものをねこまんまと信じているようなのでご注意を)、ふりかけをかけたり、炊き込みご飯とかやくご飯とまぜご飯はどんな関係なのだろうか考えながら食べる炊き込みご飯もうまいです。 もちろん、めでたいことがあるかいい魚が手に入れば酢飯にして寿司にしましょう。

いろいろなお米 | 坂ノ途中

というわけで、お米はいいものだと再発見した今日このごろでした。

片山

(これはスーパーで買った筋子を漬けてつくったいくらを載せたごはん。いくらは異様にうまいけれど、それを輝かせるのは白米しかないと思います)