3月のなかばに、ニンジンの種を蒔きました。
やまのあいだのダイアリーvol.120に書いた、ニンジンを育てる、それからの話です。
芽が出たらほぼ成功、と農家さんたちは、ニンジン栽培のことを言うようです。ニンジンは、ほかの野菜にくらべて、芽を出すのに太陽の光や水がたくさん必要で、いちばん注意をそそぐところだと。
わたしの小さな畑には、水やりをするきちんとした設備がありません。どうしようもなく、お天気まかせになってしまいました。
10日ほどが経って、畑を見ると、ちらほらと黄緑いろの芽が顔をのぞかせています。けれども、情けないことに、農業初心者のわたしには、それが待ちに待ったニンジンの芽なのか、ただの雑草なのかわかりません。あわててスマホで「ニンジンの芽」の画像検索をするしまつ──発芽しなかったものもたくさんありました。やっぱりなかなか難しい──。
スーパーマーケットに並んでいるニンジンは、どれもきれいでかたちも揃っています。わたしのニンジンは、しばらくして間引きをしたときに確認したのですが、先が曲っていたり、ふたつに割れていたり、個性派ぞろいです。土のなかで成長するときに、障害物に出くわしてしまったのが原因。土づくりのときに、石などをきちんと取り除いておかなかったせいです。
夏の収穫も、猛暑と、大雨の降る日がつづいたので、ほとんどのニンジンが土のなかでとろけてしまいました。黒褐色の土に、溶けたオレンジ色が妙に映えて……自然には勝てないと言い訳をしながら……もう少しはやく収穫していればと、後悔ばかりです。ニンジンに申しわけない。
畑しごとをはじめてから、天気予報を見ることが増えました。
明日の天気、明後日の天気、晴れてほしい日、雨が降ってほしい日、天気予報とにらめっこです。
農家さんたちはどうしているのでしょう? ひとりひとりの長い経験や、先人たちから受け継がれてきた智恵をもちいているのでしょうか? それでも、近ごろの異常な天候には対応のしようがないようにも思います。つくづく、自然というもののなかで営まなければならない「農業」の大変さを思い知りました。
やまのあいだファームでは秋ナスの収穫がはじまり、ダイコンの種蒔きを終えました。
今年の最終章。
そして、わたしのちいさな畑は、はじめての冬を迎えます。
●むらた