柑橘のおいしい季節。
海と山の自然にかこまれ、瀬戸内の気候を活かしながら、みずみずしい柑橘を育てる、広島、愛媛の農家さんを訪ねました。

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セーフティフルーツ 能勢賢太郎さん(広島県尾道市)

はじめに目指したのは、広島県尾道市瀬戸田町の〈セーフティフルーツ〉さん。
尾道からしまなみ海道を渡って、3つ目の島、生口島(いくちじま)に畑があります。

生口島のとなり、因島出身で坂ノ途中のスタッフだった松本くんが紹介してくれたのが、お付き合いのはじまったきっかけ。ようやくお会いすることができました。

作業場に着くと、ちょうどブラッドオレンジの選果がはじまるところ。さっそく見学させてもらいました。

「これは収穫してきてそのまま、選別する前の状態。お客さんにも知ってもらえたらなあ」と代表の能勢賢太郎さん。
よく見てみると、黒ずんでいるものや、皮に傷のあるものが混じり、わたしたちの元に届く箱の中身とはようすが違います。

黒ずみは、ダニの一種であるサビダニによる褐変被害

ブラッドオレンジをベルトコンベアに流し、一つひとつ目で見て選別していきます。
ものすごい速さで手を動かし、仕分けていく能勢さん。経験と知識によって、見た目から味の見当がつくようす。
シミや傷の程度が大きいものは、手前のコンテナへ。それも、ほうり投げるのではなく、そっと置いていきます。速く、丁寧な仕事です。

ブラッドオレンジの規格外品はジュースに加工もしています。けれど、「搾った果汁そのままのストレートジュースは味のごまかしがきかない。加工用といってもおいしくないものは入れられないよ」と、最後の一玉まで丁寧に扱います。乱雑に扱って傷がつくと、そこから傷んで味も落ちてしまうからです。

自信を持って届けられるものを箱詰め

そのあと、能勢さんに案内してもらい、畑へと向かいました。地域の農家さんの柑橘畑を通りすぎ、小高い丘を上っていくと、そこには海の見えるレモン畑が。

気持ちのいい海風のなかで、しばらく立ち話をしました。
一時は島を出て憧れだったサラリーマンになったものの、生まれ育った島に帰り、家の柑橘栽培を手伝いはじめたこと。先代のお父さまから受け継いだことも多いという草刈りや土づくりの考え方。多様なスタッフが集まっていて、誰もが働きやすい職場を目指していること。
海を眺めながら話を聞いていると、あっという間に時間が過ぎていきました。
シェフやパティシエのお客さんも多いという能勢さん。自分のことも、畑のことも、なんでも正直に話す姿を見て、柑橘の味や香りはもちろん、人と人との信頼関係があるからこそ、お店でもおいしいものが生まれているんだろうなと思いました。
続きはまたゆっくりと、お酒を飲みながらでも。

そこから急ぎ足でフェリー乗り場へ。広島県大崎上島町へと向かいました。

中原観光農園 中原伸吾さん(広島県大崎上島町)

「お久しぶりです!」と元気よく出迎えてくれたのは、〈中原観光農園〉の中原伸吾さん。
もう10年ほどのお付き合いになり、温州みかん、紅はっさく、清見オレンジ、レモンなど、いろいろな種類の柑橘を毎年出荷してくれています。

畑のなかを歩いていくと、堆肥置き場がありました。
「島のなかでの循環を大切にしているんです」という中原さん。
島内で出た椎茸の廃菌床や間伐材のチップを自然発酵させて堆肥にしています。さらに、畑のとなりにあるカキの養殖場から出たカキ殻や海藻なども土づくりに活用します。

椎茸の廃菌床

間伐材のチップ

畑の土はふかふかで、少し掘ってみると、真っ黒。土に撒いた堆肥は微生物に分解され、柑橘の木々に栄養を与えます。
おいしい柑橘が育つのは、水はけが良く、肥料もちが良い土。そうなるように心がけ、島の資源を活かしながら、何年もかけて畑の土づくりをしています。

これからやってみたいことはありますか? と訊いてみると、「ありますよ」とはっきり応えてくれた中原さん。
まずは、この大崎上島で有機栽培を盛り上げていくこと。それからもう一つ、自家栽培のぶどうを使ってワインをつくりたい、と。
はじめは島でワイン? と疑問に思いましたが、理由を聞いて納得しました。
「柑橘は、島内では溢れていてほとんど売れず、島外で消費されている。だから、島で作って、島で消費できるものをつくりたいんです」。
なるほど、中原さんにとってはワインづくりも、島での循環の一つなんだ。

帰り際、お土産にいただいたのは、柑橘畑のとなりで育てているオリーブを絞ったオリーブオイル。柑橘だけでなく、いろいろなことにも挑戦しているんだな。
また海を渡ってこの島を訪ね、中原さんの話のつづきを聞いてみたいです。

この日の最後にもう1軒。
同じ大崎上島で柑橘を育てる〈ふじやファーム〉さんを訪ねました。

ふじやファーム 藤中夏美さん、拓弥さん(広島県大崎上島町)

ここでは園主の藤中夏実さんが女手一つで、レモンや温州みかんの木を育てています。訪問した日、夏実さんはマルシェに出店中ということで、事務作業やデザインを担当されている兄・拓弥さんに案内していただきました。

木と木のあいだが広く空いたつくりで、風通しのいい畑。
拓弥さん曰く、女性一人でも畑の管理がしやすいように、軽トラが入れるような導線を考えた園地の設計にしているのだそうです。

以前はアパレル業界で働いていたという藤中さん兄妹。心から人にすすめられるものを扱いたいと、農業の道へ進みました。大崎上島の出身ではありませんでしたが、偶然訪れたこの島が肌になじみ、畑を借りて就農に至りました。

まずは自分たちが栽培から販売までの知識と経験を溜め、まわりにも伝えていくことで、島の有機農業を盛り上げていきたい、と拓弥さんは言います。
柑橘を育てることと、伝えること。二人の新しい農業のかたちが、この先も楽しみです。

 

text/Moyuru Takeoka

後編につづく

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