エビス農園を営む胡子知生(えびす ともき)さんは、無人島でレモンの木を育てています。

島へ行くのに、船は必要だし燃料代もかかるし、悪天候では往き来ができない。一度にたくさんのものは運べない。それでも、島でレモンを育てる良さがあると言います。

・360度が海
海は、温まりにくく冷めにくいという性質をもっています。
ですから、海に囲まれた小さな島は、気温の変化が緩やかで、涼しい夏と温かい冬をもたらしてくれます。寒さが苦手なレモンには最適の環境です。


・海に輝く太陽
島の斜面に植えられたレモンの木は、効率よく日光を浴びることができます。そして、海はキラキラと輝いて光を反射し、それも一緒に受け止めます。たっぷりの光が、おいしいレモンを育てます。

エビス農園さんの「無人島レモン」は、香りがいい、ツンとしない、柑橘らしい甘みを感じる、そんな声がお客さまから寄せられています。農薬を使わずに育てているので、塩レモンやシロップで皮ごと楽しむことができます。
 

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無人島のレモン
978円 (税込)
 

レモンの旬がやってきた! 

11月の中旬、秋晴れの日に、エビス農園さんを訪れました。
広島県の呉から、いくつもの島を橋でむすぶ「とびしま海道」に車がさしかかると、丸い、大小のお椀を伏せたような島影がたくさん、海にぽこぽこと浮かんでいます。不意にあらわれた美しいパノラマに、思わず、あっと声が出てしまいました。

 島は平地が少ないので、畑は小さく、田んぼは見かけません。山の斜面は一面に、収穫を待つ枝いっぱいのミカンで飾られています。


ミカンをはじめとする柑橘類は、日当たりのよさ、温暖な気候、土壌の水はけのよさが生育に重要です。海に囲まれ、土地のほとんどが山の斜面という瀬戸内の島々は、柑橘栽培にとても適していて、農林水産省の令和二年産の作物調査によると、広島県はミカンの生産量は全国で8位、レモンは堂々の1位です。

 とびしま海道の、ちょうど中間あたりにある周囲4.4kmの無人島・尾久比島(おくびじま)に、エビス農園さんのレモン畑があります。

30年、寒波知らず。

 尾久比島には、隣の豊島(とよしま)から船で渡ります。船着場に胡子さんがちいさな船を泊めて待ってくれていました。目のまえの尾久比島まで、おだやかな海を15分くらい。海も島も、日の光を浴びてキラキラとまぶしい。

「冬でも暖かいですよ」と胡子さんは言います。「気温がマイナス3℃以下になるとレモンは枯れてしまうから、ここの気候はとてもいいんです」
聞くと、この30年ほど、このあたりは寒波に襲われたことはないそう。

 石垣でつくられた尾久比島のだんだん畑には、レモンの木が元気いっぱいに育っていました。胡子さんの畑には400本ほどが、実をつけています。
「僕は、就農して3年目ですが、この木たちはうんと先輩で、30歳から40歳くらいだと思います」

受け継がれてきたレモンの木、畑。1960年から80年ごろは、柑橘栽培の全盛期で、尾久比島では、多くの人が通って、柑橘を育てていたそうです。瀬戸内海の島々を行き来して柑橘を運ぶ「農船」も就航していました。けれども、いま、ここを訪れるのは胡子さんを含めたったふたりになってしまいました。

 胡子さんは、広島県の江田島で育ちました。大手の水産食品会社で、経理や人事の仕事を、転勤族としてあちこちで、20年以上つづけてきました。地元の広島に転勤になったとき、それまでずっと心にあった、「自分で何かを作り上げてみたい」という気持ちから、広島で就農を決めました。


「この場所は同級生のご両親の畑だったんです。同級生に会ったときに偶然、“小型船舶の免許を持ってるか?”と訊かれて、持っていたのがこの島との縁のはじまりです。畑を受け継いで3年経ちますが、最初はもう、枝も伸び放題、足元にも草もたくさん生えていて、剪定と草刈りが大変でした」

 レモンの木は、放っておくと、枝が上へ上へと伸びてしまいます。剪定をして、枝葉を減らすことで、日当たりや風通しをよくして害虫の発生を防いだり、実に栄養を行き届かせて実つきをよくしたりします。さらに、収穫作業も楽になる。
3年のあいだ、木登りをしながら剪定をつづけたと話す胡子さんの笑顔に、強い思いが透けて見えるようでした。

食べるレモン

 坂ノ途中の出荷場で、不注意でエビス農園さんのレモンの箱をひっくり返したことがありました。その瞬間、レモンの香りがあたり一面に広がってとても幸せな気持ちになりました。「お客さまからも香りがいいと言っていただくことがあります。ポンカンみたいな味がすると言われたこともありますね」
ポンカンといえば、アロマオイルに使われるほど、香り成分を豊かに含んだ柑橘。
「じつは、うちのレモンの台木はポンカン、そこにレモンを接ぎ木してあるんです。ここのコブになっているところが継ぎ目です」

 坂ノ途中のスタッフにも、胡子さんの無人島レモンのファンがいます。かけるんじゃない、食べるレモン! と言うスタッフも。香りはくっきりとしているのに、酸味はまろやかで、柑橘らしい甘みがあるから、齧ったり、皮ごと料理に使ったり。

 11月なのに、尾久比島はとても暖かく、ずっと日に照らされて、半袖でもまったく平気でした。わたしもレモンのように元気いっぱいになれたような、訪問でした。

 ※レモンは、9月末頃からグリーンレモンとして出荷がはじまり、寒さが増す12月頃から徐々に黄色く色づいてきます。香りが強く、爽やかな酸味を味わうグリーンレモン。酸味がまろやかになり甘みも感じられる黄色いレモン。それぞれに良さがあります。食べ比べてみてくださいね。

●横澤真弓 

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