広報 松田 真弓

8月の農家さん訪問・第3弾!和歌山県紀の川市の「元ちゃんファーム」さんにお邪魔しました。この日は夏の甲子園の決勝。私立の強豪校に挑む秋田の公立高校・金足農業を応援する“元ちゃん”から「どうしても決勝戦が観たい」と連絡が。(わかる、すごくわかる)

決勝戦の終了後、夕方の訪問となりました。
(負けてしまいましたが多くの人の声援を受けた、良いチームでした!)日本有数の多雨地帯、奈良の大台ケ原を水源とする紀の川は、和歌山県北部を東西に横切ってやがて紀伊水道に注ぎます。

その流域に位置する和歌山県紀の川市。那賀(なが)地方と呼ばれ、江戸時代、紀州藩のころからかんがい用の水路が整備され、穀倉地帯として発展してきました。きらきらと夕日に染まる田んぼに抱かれるように、元ちゃんファームさんがありました。

元ちゃんファームがこの土地に誕生して、今年は10th Anniversary。新規就農でスタートして10年。毎年少しずつ畑が増えてつづけているそうです。奥へと進んでいくと、次々に畑が現れます。
(写真は、元ちゃんファームの田んぼ)

「近所のおばあちゃんたちが、褒め上手、乗せ上手なんよ」

日に焼けた笑顔で話してくださったのは、小林元さん(通称:げんちゃん)。ご近所のおばあちゃんたちがとてもよくしてくれる。だから、畑の草刈りが大変だと言われたら「手伝おうか?」。体がいうことをきかなくなったから畑やめようかと思うと言われたら、「じゃあ俺が畑やろうか」。そうして、増えてしまったんだそう。たしかに、頼りたくなるような優しい笑顔です。

元ちゃんは、和歌山のご出身。奥さまの陽子さんと二人で元ちゃんファームを運営されています。

農家になる前は、ピースボート(国際交流の船旅をコーディネートするNGO)の運営スタッフだった元ちゃん。陽子さんとの出会いもピースボート。世界のさまざまなことを知る一方「そういえば、日本のことは全然知らない」と気づき、船を降りてから9か月かけて陽子さんと二人で日本中を旅してまわったのだそうです。

その旅のなかで気づいた日本の問題はたくさんあったけれど、ほとんどが「大勢と少数」「富と貧」から生まれていることを知ったと言います。「この国から“自立”したい」そう考えるようになり、旅も終わりに差しかかるころ、自立の方法として「そうだ、農業やろう」と思いついたそうです。

実家が農家でもなく、キャベツとレタスの違いすらわからない。鍬の一本もない。でも農業なら、自立=食べるものに携わることができる。家族一緒にいることができる。地域にも貢献できる。元ちゃんがやりたいことが全部叶うのが農業でした。そして、どうせなら有機農業をやろう! と思い、有機農業の生産法人で1年3か月研修を受けて独立。でも、農家の友人もいない、技術もなければ道具もない。当然販路もありません。

「はじめの5年は本当に大変だった。あの5年間をもう一度やるのは絶対イヤ(笑)」

笑顔で話す元ちゃんですが、相当壮絶だったのだろうと思いました。少しずつ道具を買い集め、試行錯誤して技術を身につけ、畑を広げ、育てる野菜の種類も増えてきた。ゆっくりと歩みを進めてきた10年だったと話してくださいました。今では「元ちゃんの野菜なら買いたい」と言ってくださるお客さまが増えているとのことです。

肥料はあまり使わないそうで、使う場合も自家製のボカシ肥料(油かすや米ぬかなど有機肥料に、土やモミガラなどを混ぜ発酵させて作る肥料のこと)に限っています。匂いを嗅がせてもらうと、森の中のふかふかの土をすくったときのような、木が良い状態で腐食したような匂いがしました。これは“放線菌”の匂いだそうで、元ちゃんは「神社の木漏れ日の匂い」と表現。なんとも懐かしい匂いです。

とうもろこし、ズッキーニ、きゅうり、なす、オクラ、そら豆、大豆、枝豆、えんどう豆、小菊南京、トマト、にんにく、じゃがいも、たまねぎ、お米。多品種の野菜が育っています。

見学を終えると、1歳5か月になる、元ちゃんと陽子さんのお子さん、笑(えみ)ちゃんがお迎えにやって来ました。ご近所のおばあちゃんにも可愛がられ、お散歩中の犬を見つけては駆け寄っていったり、人見知りも動物見知りもしない笑ちゃん。元気いっぱいでした。

家族、地域で支えあいながら、農業を営み、生きていく。かつては当たり前だった風景が、元ちゃんファミリーのまわりでは今も息づいていました。最後は、みんなで手を振って見送ってくださいました。また来たいと思います!

明治時代にアメリカから入ってきたという元祖スイートコーン、ゴールデンバンタム。これは種をとって撒く用だそう。流行りのスーパースイート種ほどは甘くなく、モクモクとした粉質系の味わいが独特でクセになります。元ちゃんのゴールデンバンタムは坂ノ途中社内でもファンが多い野菜のひとつ。

 

 

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