「お野菜セットに入るものをひとつずつ自分で選びたい」
「葉物野菜が多いときがあって調理に困った」
「届く野菜がもっと早くわかったら一週間の献立を立てやすいのに」

坂ノ途中のお野菜セットをご利用いただいているお客さまから、このようなお問い合わせをいただくことがあります。少し使い勝手が悪いように思うかもしれませんが、それは、私たちの掲げる「100年先もつづく農業のかたちをつくりたい」という思いと関係しているのです。

今回は、坂ノ途中のお野菜セットが「なぜ?」今のカタチになっているのかという仕組みを中心に、農家さんと一緒に取り組む私たちの想いや、お野菜セットづくりの裏側についてご紹介いたします。

目次

農家さんとの取り組み

・環境負荷の小さな農業に挑む、多くの新規就農者
・少量不安定でも販売できる仕組みが、安定する農業の一歩へ
・二人三脚の作付け計画が、農家さんの収入の安定化にもつながる

お野菜セットづくり

・お野菜セットがつくられる現場
・お野菜の種類が少なくなるシーズンも、満足いただけるセットに
・お届け前日まで検討は続く
・農家さんとお客さまを、坂ノ途中のお野菜セットでつなげたい

まとめ

農家さんとの取り組み

環境負荷の小さな農業に挑む、多くの新規就農者

みなさんの手元にお届けしている、坂ノ途中のお野菜。育てているのは、西日本を中心とした約350軒の提携農家さんです。

坂ノ途中は、「100年先もつづく農業のかたちをつくりたい、そして持続可能な社会へつなげたい」という想いを掲げています。
ひとつの方法として、環境への負担の小さい農業に取り組む農家さんの農作物を販売しています。パートナーの農家さんの多く、約8割は、新たに農業に挑戦している「新規就農者」です。彼らはとても勉強熱心で、たしかな栽培技術を持ち、素材本来の味を感じられるようなお野菜を育て、出荷してくれています。

一緒にチェック
私たちの考え
坂ノ途中が伝えたいこと、考えていることをご紹介させてください

少量不安定でも販売できる仕組みが、安定する農業の一歩へ

新たに農業に挑戦している人たちのほとんどは、小規模からのスタートです。借りられる農地は、狭い、日当たりが悪い、水はけが悪いなど、条件が良くないことも多分にあります。結果として、収穫できる農産物は少量、または不安定になり、はじめはたとえば30袋分しか出荷できないということもあります。美味しくても、少量で安定しない農産物を扱える企業は、ほとんど存在しないのが現状です。そのため、一定数の野菜を生産できないと出荷先がなく、安定した収入をつくれない、だから農業を諦めてしまう人も少なくありません。

坂ノ途中では、農業を続けられるよう支えていきたいという想いから、パートナーの生産者が手をかけて育てたお野菜を、少量でも販売できる仕組みを考え、「旬のお野菜セット」がスタートしました。現在、お野菜セットの種類は、「旬のお野菜セット(S・M・Lサイズ)」と「きほんのお野菜セット(S・Mサイズ)」の5種。けれどその裏側ではさらに細かくグループ分けをしていて、少量で届くお野菜でも余すことなく組み合わせられる工夫をしています。

はじめは少量しか出荷できなかった農家さんも、経験を重ねて栽培技術が上がり、収穫量が安定した方も多くいます。少量多品目の栽培を続ける方もいれば、得意な品目に絞って中量中品目の栽培をする方もいます。農家さんによって営農スタイルはさまざま。私たちはそのお野菜をうまく組み合わせてセットにしています。

豊作の時期には、私たちが買いきれないほどのお野菜を今ではご案内いただくようになりました。そんなお野菜もできるだけ農家さんの収入につなげられるよう、お野菜セット以外に単品でも販売をしています。

二人三脚の作付け計画が、農家さんの収入の安定化にもつながる

お野菜セットでは、年間450種以上のお野菜の中から旬のものを組み合わせてお届けしています。

春にはスナップエンドウ、夏にはきゅうり、秋にはかぼちゃ、冬にはかぶ……。季節を感じるラインアップを想定して、坂ノ途中の生産者窓口チームでは、農家さんに出荷いただくお野菜の種類、量、時期などを事前に相談しています。そうすることで、みなさんにさまざまなお野菜をお届けでき、お野菜セットのラインナップの幅も広がります。また、事前にご相談するので、農家さんの収入の安定化にもつながります。
そのやりとりのなかでは、「お客さんから昨年トマトが人気でした」など、みなさんの声も農家さんお伝えして、次回の作付け計画に活かしてくださる方も多くいます。

ときには、畑へ行って収穫のお手伝いをしたり、農家さんのイベントに参加したりすることも。電話やメール上だけでないやりとりのなかから、農家さんの人柄なども知れ、私たち自身もお野菜への愛着がより強くなっています。

お野菜セットづくり

お野菜セットがつくられる現場

坂ノ途中には、お野菜セットの内容を毎週考えている「お野菜セット組みチーム」があります。この内容は木曜日に配信しているメールマガジンに「来週のお野菜セットの予定」として掲載しています。

毎回、箱を開けるときのわくわくを感じてもらえるよう、「前回は洋食がつくれそうなセット内容だったから、今回は鍋ができそうな内容にしてみよう」「今週の目玉になるお野菜はかぶ、彩りがでるお野菜はかぼちゃにしよう」などと話し合いながら、システムを活用して1セットずつ緻密に考えています。

火曜日までに、農家さんから翌週出荷できるお野菜の一覧が届きます。水曜日と木曜日の2日間をかけて、お野菜セット組みチームで次回のセット内容を決めていきます。坂ノ途中のお野菜セットは、「旬のお野菜セット(S・M・Lサイズ)」と「きほんのお野菜セット(S・Mサイズ)」の5種類ですが、実は旬のお野菜セットのSサイズは12通り、Mサイズは6通り、Lサイズは2通り、きほんのお野菜セットのSサイズは3通り、Mサイズは2通り、合計25通りのセット内容を考えています。直近2回にお届けしたお野菜とできるだけ重ならないように細かく調整し、お野菜を余すことなく上手く組み合わせていくのは、まさに至難の業です。

お野菜の種類が少なくなるシーズンも、満足いただけるセットに

年間450種以上のお野菜がありますが、実はその多くは夏と冬が旬。春と秋にはお野菜の種類が減って少し寂しい時期・端境期(はざかいき)になります。そのため、前回、前々回でお届けしたセット内容と重ならないようにすることがどうしても難しいこともあります。特に端境期に定期宅配を始められた方は、同じようなお野菜が続くな、葉野菜が多いな、と感じることがあるかもしれません。

けれど、この時期ならではの楽しみもあります。お豆や切り干し大根などの乾物に、たけのこや山菜。目新しさや彩りのあるお野菜は多くありませんが、それもまたお野菜の自然の巡り。1年を通してご利用いただくと、季節の移り変わりも感じていただけます。

お届け前日まで検討は続く

農家さんからのお野菜の多くは、お野菜セットを発送する当日に届きます。しかし、イノシシなどに食べられてしまう獣害や大雨などの天災が原因で、急遽出荷できなくなったと農家さんから連絡をいただくこともあります。
また、届いたお野菜の状態を一つ一つ確認していくと、小さな異変に気付くことも。たとえば、長雨のあと、葉野菜が水分を多く含んでいたら、「このまま届けたら、とろけて食べられない状態になるかもしれない」と判断して発送を取りやめることがあり、そのときは代わりのお野菜を用意します。

木曜日のメールマガジンでお野菜のラインアップをお伝えしてはいますが、発送直前まで変更の可能性があるので、お野菜の内容が確定するのは、どうしても発送当日になってしまうのです。

農家さんとお客さまを、坂ノ途中のお野菜セットでつなげたい

「ピーマン嫌いな子どもが坂ノ途中のものだと、はじめておかわりをしてくれました」
「定期便に入っていた安納芋を焼き芋で食べました。美味しすぎて家族全員ニコニコ笑顔になりました」

……など、お野菜についてメールやSNSなどを通じて多くのお声をいただきます。みなさんに、お野菜の美味しさを届けられることは、私たちの励みにもなっています。
これまでも寄せられたお声は、農家さんにお伝えをしてきましたが、農家さんとみなさんとの距離をもっと近づけたいと思い、2022年10月に、マイページからお野菜の感想を伝えられる機能を追加しました。
お届けしたお野菜の満足度や、農家さんへのコメントを気軽に送っていただけるようになったので、よければ活用してみてくださいね。みなさんの声は、翌年のお野菜の作付け計画に活かされたり、農家さんのモチベーションにもつながっています。

まとめ

「100年先も続く農業のかたちをつくりたい、そして持続可能な社会へつなげたい」
その想いからひとつのかたちとなった『坂ノ途中のお野菜セット』は、今では多くのみなさんにご利用いただいています。

このお野菜セットのお届けを続けられるのは、環境への負担の小さい農業に果敢にチャレンジする農家さんと、毎回お野菜セットを楽しみに待ってくださるみなさんの存在があるからこそ。

「100年先もつづく農業」を支えるためには、そこに挑む多くの生産者が農業を持続していけるよう、安定した収入を得られる基盤をつくっていくこと。そして、みなさんに魅力を感じていただけるような、お野菜セットを日々お届けすることが私たちの役割だと考えています。

また、新規就農者さんのリアルに触れ続ける坂ノ途中だからこそ得られる知見を社会や生産者さんに還元することで、農業経営のハードルを下げることができるのではないかと思っています。

これからも私たち坂ノ途中は、農家さんとお野菜セットを利用してくださるみなさんをつなぐ橋となれるよう、試行錯誤しながら、持続可能な未来に向けて一歩ずつチャレンジを重ねていきます。