「坂ノ途中の野菜セットはとても気に入っているのだけど、プラスチック包装が気になる……」
最近そのようなお問合せを多くいただくようになりました。
マイクロプラスチックによる海洋汚染、製造時・焼却時の二酸化炭素排出など、プラスチックの環境への影響がここ数年で広く知られるようになりました。
「せっかく環境負荷の小さい野菜を購入しているのに、プラスチック包装された野菜ってどうなのだろう?」
という声も聞こえるようになり、身の回りのプラスチックが本当に必要なものか、疑問を持つ人が増えてきたことを実感しています。
私たちは、これまでプラスチック削減を少しずつ進めてきました。少しずつなのは、プラスチック包装と野菜の鮮度や家庭でのフードロスとのバランスの検討をしながら進めてきたためです。

今回は、皆さんに坂ノ途中の今のところの脱プラスチック(脱プラ)の現在地を紹介させてください。

そもそもなんのための包装なのか

なぜ野菜を包装するのでしょうか。
それは収穫後も野菜が生きていること、つまり「呼吸をしていること」と関係があります。
呼吸は野菜が生きていくエネルギーを得るための活動です。蓄えている糖分などを分解してエネルギーを得て、水と二酸化炭素を放出します。呼吸が活発になると、栄養分や水分が損なわれてしまいます。そのため、おいしさや新鮮さを保つには、収穫後になるべく呼吸や蒸散(水分の蒸発)を抑えることが重要なのです。

特に収穫後の呼吸量が多い葉もの野菜(ほうれん草やミズナなど)の包装には、主に水分の蒸発を抑えるプラスチック袋が使われています。鮮度を保ちつつ曇りや蒸れを防止する機能がついた包装袋で、防曇袋(ボードン袋)と呼ばれます。また、きのこやトマトなど衝撃に弱い野菜には、容器包装(プラ容器)が使われ、ぶつかって傷んでしまうことを防いでいます。そのほかに、紙袋やプラスチック製のネットがじゃがいもや玉ねぎ、柑橘などに使われています。これらは日持ちするのでバラで売られていることもありますが、出荷や陳列作業の効率化、購入後の持ち運びのために袋に詰められます。
このように包装には、美味しくて新鮮な野菜を効率よく届ける役割があります。
坂ノ途中でも、品質と鮮度をなるべく保つために包装は必要なものだと考えています。とはいえ、プラごみが大量に出ることには違和感を感じていました。そこで出荷チームを中心に、「プラスチックに代わる紙の容器はないのか?」「この野菜は紙袋でもいいのでは?」と意見を出し合って、プラスチック削減に取り組んできました。

スタッフの疑問から始まった脱プラ

坂ノ途中が脱プラに取り組み始めたきっかけは、出荷スタッフが玉ねぎをプラ袋に入れることに疑問を感じたことでした。出荷作業のしやすさのために使っていたプラ袋を紙袋に変え、その流れでじゃがいもや里芋などの芋類を紙袋に切り替えていきました。

次に使いはじめたのは新聞紙。上手に使いこなしている農家さんを参考にしながら活用し始めました。例えば、大玉トマトはプラ袋に入れるよりも潰れにくくなりますし、包んだ後に大量の水分が出るタケノコにも適しています。このように紙袋と新聞紙活用を進めていった結果、出荷場で使うプラ袋を削減できました。
今以上に脱プラを進めるにあたって課題となるのは、デリケートでしおれやすい葉物野菜です。葉物野菜は通常農家さんが収穫・袋詰めしコンテナや段ボール箱に詰められて坂ノ途中に出荷されます。しかし、袋詰めされた状態で坂ノ途中に届く野菜に関しては、包装し直すことは現実的ではありません。坂ノ途中で包装作業を行うにしても、野菜の状態に合わせて異なる作業工程が発生することが難しい点です。
良いものを良い状態で届けるには、こうした課題をひとつひとつクリアしていかなければなりません。

今のところの方針(お野菜定期便)

そんなわけで、完全な脱プラとまではいきませんが、試行錯誤する中でたどり着いた「今のところの方針」をお伝えしようと思います。
※同じ品目でも時と場合によって試行錯誤しながら変えていますので、あくまで”暫定”と受け取っていただけると幸いです。

◆葉物
・小松菜やベビーリーフなど
 農家さんの袋詰めしたものをそのままお届けしています。
・キャベツや白菜
 1玉の場合はそのまま、ハーフカットの場合は傷みやすいためラップやプラ袋などに包んでお届けしています。
・ブロッコリーやカリフラワー
 農家さんの袋詰めしたものをそのままお届けしています。社内で包装する際に新聞紙を使う場合もあります。

◆根菜、土物類
可能な限りそのままの状態でお届けしていますが、お野菜の特質や収穫時期による状態に合わせて対応しています。
・土付きのジャガイモやキクイモなど
 社内で袋詰めする場合は紙袋に入れてお届けしています。
 ※湿っていたり形状的に破れやすい場合はプラ袋でお届けする場合もあります
・ニンジン
 蒸散して痛みやすいためプラ袋に入れています。
・玉ねぎ
 通常はそのままですが、新玉ねぎの時期は水分が多く痛みやすいためプラ袋に入れています。
・レンコン
 水分が多いため、プラ袋に入れたものをお届けしています。

◆果菜類
可能な範囲で袋なしや新聞紙で包んでお届けしています。
・トマト
 大玉トマトは、社内で包装する場合は新聞紙や再生紙、紙箱などを使っています。ミニトマトは紙製パックを検討しましたが、検品が難しく今のところプラパックでお届けしています。
・ズッキーニ
 新聞紙で包装してお届けしています。
・枝豆
 農家さんが袋詰めしたものはそのまま、社内で袋詰めする場合は紙袋に入れてお届けしています。
 ※品質保持のためプラ袋でお届けする場合もあります
・かぼちゃ
 そのまま、または、ハーフカットしてラップで包んでお届けしています。

◆果物
・柑橘類、りんご
 紙袋に入れてお届けしています。
・傷つきやすい梨やキウイなど
 中身が見れるようにプラ袋に入れてお届けしています。

お野菜定期便には約500種類の野菜から詰め合わせるため、代表的な品目のみご紹介しました。ここで紹介しきれなかった野菜や果物も、同じように包装の有無や適した包装材を考えています。

今後に向けて

環境負荷の小さな農業の広がりを目指す私たちにとって、環境のことを考えてプラスチックを減らしてほしいというお声をいただくことが多くなったのは喜ばしいことでもあります。少しでも減らせるよう、試行錯誤は続いています。社内での検討プロセスなど、今後も引き続き皆さまに共有していきたいと思います。