小学校が休校になり、図書館も閉館されてしまって、息子はとても困っていた。
小学校2年生なのに、すでに一人前の活字中毒者で、毎週10冊以上の本を読んでいた。本さえ読んでいればごきげん。
それが’俄然ヒマになり、することがなくなってしまった。
息子の欲求を満たすほどの本を買うと、わが家は経済的に破綻してしまう。いろいろ考えて、こども新聞を購読することにした。
まだ少し早いかなと思ったけれど、漢字にはルビがふってあるし、クイズや詰め将棋、マンガ、時事ネタや政治の話はわかりやすく書かれている。息子はあっさりと嵌まってしまった。気になるところをつまみ読みしたり、クロスワードをしたり、なにやら切り抜いてスクラップブックをつくったりしている。
朝、起きたらまずトイレに行き、そのあとポストに新聞を取りに行くのが彼の日課になった。
僕が子どもの頃は、新聞といえば、父が読むものだった。父も、朝起きたら新聞を取りに行き、なにやら難しい顔をして読んでいた。
小学生の僕にとっての新聞は、テレビ番組をチェックしてアニメの時間を調べることと、裏から1枚捲ったところにある4コマ漫画を読むくらいしか、用がなかった。あとはせいぜいスポーツ。小学生に俳句や株式や政治や国際情勢なんてそもそも興味がないし、だいたい何が書いてあるのかわからなかった──父が読んでいる新聞を横から覗き込むと、記事の内容を説明してくれることもあったけれど──。
新聞とは難しい顔をして読むものだとばかり思っていたのに、ねぼけまなこの息子が新聞を広げている姿を見ると、なかなかにかわいい。息子にとっての新聞は、僕にとっての新聞とはずいぶん違うもののよう。
図書館はもうすぐ開館。でも、息子の新しい習慣はそのままにしておくつもりだ。

●ケンゾー