スナップエンドウ、カラスノエンドウ、オゼイユ、パクチー、ハハコグサ、タンポポ、ヘビイチゴ、スズメノテッポウ、ハコベ、ヒメオドリコソウ……やまのあいだファームでは、野菜も草もたくさんの花を咲かせて、実をつけはじめています。
春の畑はたくさんの色でとてもにぎやかです。

私の祖父は、米や野菜だけでなく、お花を育てていました。
おじいちゃんのお花、摘みたいけど、叱られそう……幼い頃、いつも花の前でもじもじしていました。
貝殻草の花を見たときは、どうしても我慢ができずに、こっそり摘んで持ち帰ったことを覚えています。
祖父の育てる花は、仏壇やお墓参りのときにお供えするためのものでした。花を束ねるのは、祖母と母。どこか溌剌として見えました。

インドネシア、バリ島のウブドの街で見かけた花の姿も忘れられません。チャナン(canang)と呼ばれる、バリ・ヒンドゥー教のお供えもの。椰子やバナナの葉にいろいろな花。チャナンそのものがお花のようにも見えます。

バリを訪れると、いたるところでチャナンを目にします。建物のあちこちに、寺院、道、ありとあらゆる場所に毎日たくさんのチャナン。
お供えすることが大切らしく、そのあとは忘れ去られたかのようになってしまいます。とくに、道にお供えされたチャナンは踏まれたり、動物につっつかれたりしてバラバラになっています。でも、それも素敵に、美しく見えた。
朽ちる、つくって供える、また朽ちる、繰り返し……なのかな。

祖父はずっとお花を育てていました。人の暮らしにとって必要なものをつくっていたんだなと、今、思います。

● ますお

* やまのあいだファームでは黄色い花が目立っています。
種採り用の、のらぼう菜の花。背が高く、遠くからでもよくわかります。
「ちゃんと受粉してほしいから、触ってお花を落とさないように気をつけて」と、あかねちゃんから声がかかりました。
すぐそばで草刈りをしていたの、ちょっと緊張しました。よい種が採れますように。

お花に集まる虫も増えています。
畑でケンゾーさんと話をしていると、クマバチがやってきました。
「僕ら、好かれてるんですかね?」
黄色いタオルを頭に巻いて、ピンクのTシャツを着ているケンゾーさん。お花みたいでした。

* 写真は上からオゼイユ、パクチー、のらぼう、チャナンです