この冬も瀬戸内の大崎下島へ行ってきました。あかねちゃんが育てたみかんの収穫と、畑の手入れのためです。
スコップを使って、畑の斜面に階段をつくります。それまで、土の急斜面が畑仕事の通路になっていて、そこをコンテナいっぱいのみかんを抱えて下りるのは、かなりしんどい作業でした。油断して転んだこともあります──みかんは抱えていなかった。階段をつくって、安全に上り下りができるようにという作戦です。

農業って、野菜に触れることのほかに、畑を整えるという仕事があります。野菜や果樹がのびのびと育つだけでなく、気持ち良く働ける場をつくる。
わたしたちが借りている畑は、島の人たちが山を開墾して、そのときに掘り出した岩や石をノミとゲンノウで割り、積み上げてつくった段々畑。
畑ができあがるまでのことを想うと、言葉が浮かびません。みかんや不知火が元気いっぱいに育つこの畑をつくった人たちに、憧れを抱きます。

それは祖父への憧れとも重なります。
終戦からすぐの頃、農作業小屋を建て直すときに、小屋までの道を拡幅したそうです。細い道はリヤカーが通れるようになった。
ほかにも、ため池は地域の人たちと一緒になって掘ったと話していました。
生きていく土地の景色は、そこで生きようとする人たちがつくった。重機や専門の職人さんにすべてをまかせるのではなく、みんなが力を合わせて生まれた。

島の畑に階段をつくったことは、なにか、景色をつくることに自分も少しだけ参加できたようでした。とてもとても嬉しかった。
畑のなかに、いくつか梯子をかけておきたいね、あかねちゃんとそんな話もしています。
少しずつ少しずつ。

●ますお

*最近のやまのあいだファーム
暖かくて汗ばむ日があったり、寒くてキュッと身がちぢこまる日もあります。麦は少しづつ伸びてきて畑に緑が目立ちめるようになりました。ちぢみさつき菜やのらぼう菜は、菜の花の収穫時期が待ち遠しいです。
私の家の庭の梅の木はいくつか蕾が開き、おすそわけしてもらったフキノトウはフキ味噌にしていただきました。お豆腐やごはんにちょっぴり乗っけて。独特の苦味がおいしいですね。今日はまた雪になりそうです。