能登の伝統野菜を練り込んだ「農家のパスタ」を届けてくれている、石川県の生産者、中島アグリサービスさん。拠点をおく七尾市は、2024年1月の能登半島地震で大きな被害を受けました。

坂ノ途中では、2024年3月より「復興応援」というかたちで、中島アグリサービスさんのパスタやうどんなど、取り扱い商品を増やし、特別価格でお届けしてきました。
これまでご協力くださったみなさまの、温かなお気持ちに感謝いたします。

震災から半年が経ちましたが、今なお現地では、さまざまな困難がつづいています。この状況をより多くのかたに知っていただき、ともに応援の気持ちを現地へ届けられたら。

6月の終わりのある日、中島アグリサービスの代表・松田武さんに、お話を伺いました。

※トップの写真は、すぐそばに七尾湾がひろがる水田の景色。道路に置かれたコーンや屋根にかけられたブルーシートも見られます。2024年7月の撮影

──あらためて、地震による被害の状況についてお聞かせください。

先日ようやく田植えを終えたところですが、植え付けられない田んぼが、だいたい5000平米くらいありました。うちは棚田が多いのですが、地割れしているところは水を入れると崩落してしまう可能性があって。

地盤が緩んで、水田の水持ちも悪くなっています。一見なんともないような田んぼでも、水を張ると石が浮いていたり、作業していると急にぬかるんで沈んだり。地盤はでこぼこです。これが元に戻るのは、まだ見通しがつきません。

今まで何十年もかけて手入れしてきたところが、一気にめちゃくちゃになってしまいましたね。

地震により地割れの起こった田んぼ

6月の田植えのようす

野菜は、冬ものの出荷ができなかった。3か月近く、水が出なかったので、出荷作業ができませんでした。加工品をおいている道の駅が7、8店舗ありましたが、3、4か月は完全にストップしていて。能登半島の先のほうでは、まだ再開していない店もあります。

そんな状況だったので、加工品を販売していただいて、ほんとうに助かっています。

──生活にも、影響はありましたか?

自宅は半壊状態で、震災当初は2週間ほど事務所のほうにいました。それからなんとか、自宅で生活できるようにして。農業用の大きいタンクを持っていたので、川や井戸で水を汲んで、ポンプでお風呂に引いていました。

畳やふすま、ガラス戸、冷蔵庫とか、そういうものは処分したんですけども、修理はまだ全然です。お金もかかることなので、なかなか簡単にはいかないですね。
屋根にはブルーシートをかけていますが、梅雨の時期は雨漏りも心配で。

──震災から半年が経とうとしています。これから夏を迎えますが、どのような気持ちでお過ごしですか?

いまは、「田植えが終わってほっとしている」というのが本音です。

家の修理のほうは、もう、順番待ちでしょうがないんですけども、田んぼは、季節は待ってくれないので、田植えはできるだろうか、どれくらいできるだろうかと、これまでずっと心配でした。例年より少し遅れはしましたが、なんとか終わって一段落したなという気持ちです。

6月の田植えのようす

ここからは、秋冬野菜の準備をしながら、田んぼの除草や水の管理に忙しくなります。暑いなかの地道な作業ですが、いちばん大事なところ。手をかければかけるほど、いいものができますからね。

楽しみは、秋の収穫です。
お客さんの期待に応えたくて、今年からはお米の食味、おいしさをより重視して、肥料を有機成分が多いものに変えたりしています。
お米はショートパスタに加工したり、あたらしく米粉100%のパスタを検討したりもしているんですよ。体にいいもの、おいしいものをこれからも作っていきたいです。

農家のパスタ 中島菜スパゲッティーニ

──能登の伝統野菜、中島菜をつかった加工品をたくさん作られていますよね。この野菜への特別な思いはありますか?

中島菜は能登にしかないお野菜で、栄養価も豊富なんです。この伝統野菜を、多くのひとに知ってもらいたい。乾燥して粉末にし、それを練り込んだ加工品にすることで、年間を通して中島菜を楽しんでもらえるようにと思っています。

本来の旬は春。秋に種を蒔いて、春一番に収穫する野菜なんですよ。1月2月、雪の下で過ごして、雪どけと同時に一気に大きくなる。地元では、漬物、おひたし、味噌汁なんかで食べられます。

私が一番好きなのは、春にとれる、中島菜の菜花。量は少ないし、足も早いので、ほとんど流通はしないんですけど、あれが一番好きですね。天ぷらにするとおいしいね。

雪どけの季節に収穫される中島菜

──松田さんが、この地で農業をつづける理由、思い描くすがたはありますか?

ここに、何十年もかけてやってきた田んぼや畑がある。いま、能登にいて、これだけ仕事ができるのはありがたいことだなと思っています。
お客さんの「おいしかった」「また食べたい」という声をきくと、また頑張って作らないと、と励まされます。

山あり、海あり、豊かな能登の自然。守るものを守りながら、おいしいものを作って、みなさんに届けていきたいです。いまここにあるものを人の手で生かし、どう伝えていくか。

復興に向けては、これからが勝負です。この地震で過疎化に拍車がかかってしまうのではないかということも心配。若いひと、子供たちのためになるような復興にしていかないとね。

──能登の復興にむけて、わたしたち、またお客さまに期待することがあれば知りたいです。

長い目でね、長い目で見守っていただけたら、それが一番です。

秋の刈り入れ、冬の牡蠣小屋のときにでも、ぜひお越しください。

 

七尾湾にのぞむ水田。震災前の撮影

坂ノ途中では、長期的なサポートをしていけたらと、引きつづき、中島アグリサービスさんの商品を復興応援・特別価格にて販売しています。おいしいパスタやうどん、たくさん食べて応援していただけると嬉しいです。

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