vol.1
ごはんがすすむ野菜のおかずづくり、献立の組み合わせ方。
基本的な料理からおもてなし料理まで、丁寧な和食レシピを紹介するWebサイト『白ごはん.com』の冨田ただすけさんに、そのヒントを伺いました。
冨田さん、ごはんがすすむ味ってなんですか?
「新鮮な野菜はそのままで美味しいですよね。でも、素材そのものの味わいだけでは、ごはんには合わせづらい。このふたつをうまくつなげてくれるものが要るんです」と、冨田さん。お惣菜の製造販売会社、和食料理店、食品加工会社と、さまざまな食の現場で培った経験から、ごはんに合う味付けについて教えてくれました。
「具体的には、うま味やコクを出してくれる調味料やだし素材。これらは風味も加えてくれるので、全体的な味わいも豊かになります。特に醤油は、何にでも合わせられ、うま味も風味も強くて、いちばん使いやすい調味料だと思います。 塩こしょうでソテーした鶏肉よりも、醤油ベースの照り焼きのほうがごはんが欲しくなりますよね。コクやうま味がプラスされるとより複雑な味わいとなって、ごはんの美味しさと一体化しやすいのだと思います。素材にはそれぞれ個性があるので、使うものによって何をプラスするとごはんに合うかなと、楽しんで考えられたらいいですよね」
白ごはん.comの味づくり
白ごはん.comでは、どういったことを意識してレシピをつくられているのですか?
そう尋ねると、「昔ながらの和食の料理であっても、今の食卓に馴染んだ味わいになるよう味付けを考えています」という言葉が返ってきました。
「かつての家庭料理の献立は、和食中心の低脂肪なものでした。ごはんに、醤油ベースの煮物、酢の物、焼いた魚、お味噌汁のような。それだけシンプルだと、素材の持つ脂に塩をプラスするだけでもバランスが取れるし、醤油があるとなお良いくらいだったんじゃないかな。 今では食卓に肉料理が多くなり、洋風のおかずや揚げ物などが定番になっています。それらと献立としてバランスを取り、ごはんを美味しくすすめるには、醤油などの調味料、油、だし素材といったものを複合的に組み合わせて味づくりをしたほうがいいと考えているんです。
たとえばきんぴらごぼう。醤油や砂糖で甘辛く炒めるだけでなく、少し多めの油を加えてコクをプラスする、というふうに意識的にレシピをつくっています。 また、加工食品やお店で買うお惣菜には、化学調味料や酵母エキスなど味の強くなるものが入っていることが多いです。手づくりの和食を味気ないと感じてしまわないよう、”美味しい”という感激と、家庭料理の素朴さを両立できるバランスを目指しています」
「今日食べたい味」に、和食の五法を加えて
冨田さんの家庭料理の味つけについてのお話を伺ったところで、さらに私たちが気になったのがそれぞれの料理の組み合わせ方、いわゆる「献立」です。
「僕の場合、献立は、まずおかずのひとつは今日食べたいもの。スーパーに行ったりキッチンに立ってこの野菜が食べたいなと思ったり、家族が食べたいなと言ったりしたものにします。それから、これとこれを組み合わせようかなと考えていきます。意識するのは、調理法をずらす、ばらばらにすること。和食では五法と言うのですが、生のまま、焼く、煮る、蒸す、揚げる、ひとつの献立のなかでこれを分けることで、フライパンばかり使う、ボウルばかり使うということがなくなり、効率よく調理できる。
食感にも変化がつきます。野菜は生だとポリポリした食感のものでも、加熱するとがらっと変わる。きゅうりは生で食べることが多いけれど、味噌汁の具にして加熱して食べるとまた違った食感と味わいで美味しいし、なすやズッキーニなんかでも同じことが言えると思います。
献立に悩むひとは、何かひとつ得意な調理法があると考えやすくなると思います。炒めものが得意なら、今日は小松菜があるから炒めて醤油を垂らそう、じゃあもう一品は違う調理法、たとえば加熱しない調理で、ちょっと塩もみした野菜の和え物や、浅漬けなんかを合わせようかと」
献立のなかで味のバランスをとる工夫はされているのだろうか?
調理法と同じで、ここでもポイントとなったのが「どうずらすか」ということでした。
「たとえば昨日、僕はおからの煮物が食べたくて、まず一品はそれに決めました。おからの煮物は、ごぼうやにんじんといった野菜にだしの風味がきいたおかず。それならば主菜はだし汁を使わずに、シンプルに魚や肉でも焼こうかなというふうに考えます。それから、冷蔵庫に作り置きしている甘酢漬けやマリネ、漬物や佃煮のような、酸っぱかったり、塩っけ、醤油っけがきいたものを持ってくる。工夫というか、常備菜もあると自然とバランスがとれるようにも思います」
つくり手さんや産地で変わる、お米との出会いを楽しんで
好きなお米ってありますか? そう尋ねると、冨田さんは少し考えて「品種のこだわりのようなものは案外ないんですよね」と答えました。
「同じ品種でもつくり手さんや産地によっても全然味わいは違いますし。ただ、風味が優しくて、粒感のあるものが好きです。
料理によってお米を変えるということもあまりしないです。そのときそのときで家にあるものを食べる。もちろん、このお米が食べてみたい! と取り寄せることもあるし、知人からもらうこともあるし、あとは犬の散歩コースにお米屋さんがあるんです。立ち寄って、このお米はどんな味わいですか? なんて尋ねて少しずつ、2kg、3kgと買ってみたり。いろいろなお米との出会いを楽しんでいる感じですね。料理に合わせることを考えるなら、お米より水加減を変えることのほうが多いです。あとからごはんを炒めたり混ぜたりするレシピのときには水加減を少なめにしますし、献立のなかで考えるなら、あんかけ、麻婆豆腐、カレーやシチュー、おかず的に豚汁をたっぷり食べるぞというときなども水加減を少し少なめにします」
素材の個性を生かしながら、美味しいと感じられる味づくり
冨田さんの野菜おかずのレシピは、お野菜そのものの味わいを大事にしながら、それを引き立たせるだしの使い方、味の付け方に工夫を凝らしていることがわかりました。今の食文化はうまみの強い、わかりやすい味を美味しいと感じるようになっているという冨田さん。基本の調味料でその傾向に沿うような味づくりをする、その一方で、昔ながらの和食の良さを伝えるような、魚や野菜のレシピも増やしていきたいとも仰っていました。
次回からは、冨田ただすけさんの『白ごはん.com』のレシピのなかから、私たちが季節の献立を考え、実際にお料理をつくってみた様子をお届けします!
坂ノ途中OnlineShopでも販売している「白ごはん.comのだしブレンド」を使ったレシピや、おすすめのお米などもあわせてご紹介いたします。
旬のお野菜を使って、ご飯を美味しく食べる、そんな食卓の気づきになれば嬉しいです。
●文/倉田優香 取材/武岡萌、古田佐恵子
白ごはん.com おもてなし料理のレシピから和食の基本(定番ごはん・おかず)の作り方まで紹介。 |