これだけは美味しく作れるようになりたい、と思ってきたものが3つあります。きんぴらごぼう、お味噌汁、そして、おむすび。
 おむすび、お塩と梅干しの。シンプルさゆえ、食べる人を想う気持ちがまっすぐ伝わる気がするのです。はじめて作ったのは小学生の頃だったかな。当時は「おにぎり」と呼んでいました。台所で母の隣に立ち、見よう見まねでにぎった。できたのは三角とも丸ともいえないいびつなおむすび。簡単だと思っていたのに……悔しさと、お母さんてすごいんやな、という気持ちが同時に沸き起こったのを憶えています。
 それ以来、とにかくきれいな三角形にすることがテーマに。練習を重ね、とりあえず見た目は良くなった。でも、何かがちがう。ぎゅうっとにぎったおむすびは、お米の粒がつぶれてしまって固すぎたり、お団子みたいにモチモチしすぎたり。齧るとごはんがほろっと崩れる美味しいおむすびを作りたくて、ほんとうにいろいろ試しました。ラップを使う方法、左手だけ力を込めて右手は軽く添える方法。でもやっぱり、できたおむすびは固くって……。
 わたしには無理なんや、もう諦めようかな。そう思い始めていたある日。ある調べものをしていて読んだ本のなかで、「奇跡のおむすび」で知られる佐藤初女さんと出会いました(おにぎりではなく、おむすびと呼ぶようになったきっかけでもあります)。やっぱりわたしも、心から美味しいと思えるおむすびを作りたい!
 最終的にたどり着いたのが、三角とも丸ともいえない形(はじめて作ったおむすびと一緒!)。にぎる、ではなく、むすぶ、を意識したらこうなりました。見た目は不格好だけれど、食べた感じは目指していたおむすびに少し近づいたかな。子どもたちが美味しそうにほおばるのを見て、とりあえずの合格点を自分にあげることにしました。
 もうすぐ家族が一人増えるわが家。何年かすれば、いろいろな大きさのおむすびを今よりたくさん作ることになるんだろう。
 わたし、色川が坂ノ途中だよりを担当するのも今回で最後になりました。4月から産休に入ります。これまでお付き合いくださって本当にありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしています! そうそう、あとの2つ、なぜ、きんぴらごぼうとお味噌汁なのかも、いずれ……。

                                                                                  ●お客さま窓口・色川友里