みなさま、こんにちは。坂ノ途中・研究員の小松光と申します。

これから月に一度程度、ここに文章を連載していこうと思います。よろしくお願いします。

連載のタイトルは、「食事から考えるやさしい環境学」としました。このタイトルには、次のような思いを込めています。

環境問題というのはすごく大きくて、個人の力ではどうしようもない気がしてしまうことがあります。実際、環境のことが漠然と気になるのだけれど、どうしたらいいのかわからない、という人は多くいます。これは大学で長らく教えてきた私自身の実感であるとともに、環境意識調査などで報告されていることでもあります。

その一方で、環境問題は、私たちの行為の結果であることも確かです。私たちにできることが何もないはずはありません。ですので、私たちが毎日とる食事について、環境にどうしたら配慮できるのか、考えてみようと思ったのです。

でも、私たちの行為のうち、なぜとくに食事に注目するのでしょうか? もちろん直接的な理由は、坂ノ途中が野菜を売る企業だからです。

ですが、もっときちんとした理由があります。食事について、私たちはある程度決定権を持っているし、その決定による環境への影響は小さくないからです。今晩の食事を何にしようか考えるとき、私たちは意思決定をしています。一回一回の決定は小さいものです。それによる環境への影響は小さいでしょう。ですが、私たちは毎日食べます。だから、生涯を通じての環境への影響は、それなりに大きくなります。

自分に決定権があって、その環境影響が大きいものというのは、そんなにありません。温室効果ガス排出の国際的削減目標を自ら決定できるなら、その環境への影響は絶大です。でも、その決定権は私たちにありません。これに対し、食事なら、自分である程度決めることができます。

こういう理由で、私は食事が大事だと思っています。ですが、どんな食事をしたらいいのか、考え始めるとけっこう難しいとも思っています。

例を挙げましょう。少し前の話です。私は、スーパーで人参を買おうとしました。そのとき売られていたのは、「遠くから輸送された有機人参」と「近くでとれた有機でない人参」でした。どちらのほうが、環境への負荷が小さいと思いますか?

私はわかりませんでした。有機の野菜は、普通に栽培されたものよりよさそうだけど、地産地消もよさそうです。「近くでとれた有機人参」があればよかったのですが、残念ながらありませんでした。

こういう場面で役立つ知識をお伝えできたらと思ったのが、この文章を書き始めたきっかけです。

ただ、一つ残念なお知らせがあります。私は農業・食品分野の素人です。私は、大学などで20年以上研究・教育に携わってきました。国連の関連機関や世界銀行などでも働いてきました。ですが、そのときの専門は農業・食品ではなく、森林であったり教育であったりしました。坂ノ途中に入ったのも、わずか半年前です。わからないことがたくさんあります。

それでも、「必要な情報を見つけ出し、整理して、お伝えする」ことはできます。大学の先生をやってきたからです。大学の先生は、学生さんから質問をいただいたら、分野外のことでも調べて回答します。大変な作業ですが、とても勉強になり、面白い作業でもあります。これと同じようにして、この文章を書いていけると思っています。

そして何より、毎回みなさまにお話をしながら、私自身も「環境に配慮した食事」をできるようになっていきたいと思っています。ご一緒いただけますとうれしく思います。よろしくお願いします。

連載の狙いについてだけで、割と長く書いてしまいました。すみません。今月は内容に入らず、今後数回でお話ししようと思っていることの予告にとどめます。

「環境に配慮した食事」をするためにできることですが、私が今集めた情報を基にするなら、以下のような感じです。

・肉は控えめで、野菜中心の食事をしましょう。
・野菜は、できるだけ旬のものを食べましょう。
・もし、家計に余裕があるなら、有機野菜を買っていただくのもよいです。

坂ノ途中は有機野菜を売っていますが、必ずしも「有機野菜を買ってね」という話ではありません。有機野菜を買うより効果的なこともあるのです。たとえば、肉食を減らすことです。ですから、まず肉食の話を次回しようと思います。そのあとで、旬の野菜や有機野菜のお話をしていく予定です。

それでは、また来月、お目にかかりましょう。

小松 光(坂ノ途中の研究室)