広報 松田 真弓

本格的な冬が来る前、これから収穫を迎える冬野菜いっぱいの、11月の畑にお邪魔してきました。訪れたのは、京都府北部の綾部市。昔から市内を流れる由良川沿いを中心に米作が盛んな場所でしたが、明治に入って生糸業や機械工業でも発展。かの有名なグンゼの発祥の地でもあります。里山の穏やかな暮らしがありつつ、府内北部エリアの産業を支える工業団地もあるのが特徴です。

高速道路を降りると、ちょうど紅葉の盛り。里山の紅葉は赤一色ではなく、辛子色、橙色、黄、濃い赤、くすんだ赤、緑と、パッチワークのようにいろんな色に染まっていました。そんな静かな山あいの少し開けたところに、「コニチャン農園」さんがあります。

からし菜、アスパラ菜、ラディッシュ、大根、水菜、赤水菜、カリフラワー、太ネギ、にんじん、白菜、レタス、キャベツ、タカナ、日の菜かぶ、トレビス赤かぶ、壬生菜、わさび菜、芽キャベツ、紅菜苔……書ききれないほどたくさんの種類の野菜たちが元気な姿を見せています。

ここで野菜やお米を育てておられるのが、小西秀測(こにしひでのり)さんと典子(のりこ)さんご夫妻です。

「すごい品種多いですね!」というと「失敗することもあるけどね!」と秀測さんと典子さん。わははという笑い声につられてみんな笑顔になります。

お二人とも、もともと農家ではなく兵庫県の文化振興財団でホールの運営をされていたときに出会い、当時は上司と部下だったそう。結婚後自宅のベランダで、砂地で育てる永田農法という方法でトマトを作ってみたら、大きくて美味しいトマトができた。それが野菜を育てるきっかけになったそうです。

「美味しいものが好きというのが共通点」

というお二人は、それまで美味しいものを探し求めて買い回っていたけれど、自分たちで育ててみよう!と意気投合し、神戸市北区に畑を借りて野菜を育て始めたそうです。自宅から1時間半かけて週2日畑に通う生活が楽しくて、そのうちに「お米も作ってみたい」という気持ちに。でも借りている土地では難しい…。そんな時に出会ったのが“里山ねっと・あやべ”という綾部市里山交流研修センターが運営するサイトでした。ここで米作り塾の情報を見て参加してみたとのこと。

「そのとき初めて綾部市に来たのですが、ああここに畑持ちたいなと思ったんですよね」

そこからはもうトントン拍子。あれやこれやで古民家の空き家が見つかり、財団の仕事を辞めて2006年に移住し、就農。

「本を読んだら、新規就農は大変だってたくさん書いてあったけど、やってみてだめだったら綾部には工業団地があるし、最終手段はそこで働こうと思って」

笑って話す秀測さん。やっぱり就農するには覚悟が必要だけれど、将来を危惧しても始まらない。できることをやってみて、だめだったら受け入れる。そんな考え方が、なんだかいいなあ。

「でも、やっぱり簡単にはいかない。山に囲まれているから日照時間が短く、冬は午後3時には日が山に落ちる。湿気の多い土地で、土は粘土質。そして冬は寒いし雪も積もる。この土地に合う野菜は、限られているんですよね」

日照が重要なトマトや万願寺とうがらしは、ここでは難しい。だからと言って、化学肥料や農薬の力を借りようとは考えなかったそうです。

「私たちにとって美味しいものを食べたかったから始めたこと。農薬用のマスクをして、土地に合わないものを無理やり育てるのは自分たちらしくないなと思ったんです」

土地の特性に合ったものを、無理をせず育てる。あるもの、起こることをそのまま素直に受け入れる。小西さんご夫妻の自然な生き方が、野菜の栽培にも表れています。畑の野菜も、のびのびと育っているなと感じました。


畑を案内してくれる、小西家のニャーゴロさん。癒されます。

 

旬の葉物や根菜がいっぱい!野菜セットに入る日が楽しみです!

 

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