暑さにおそろしさを感じはじめる季節になりました。暑さ対策をケンゾーさんと練っています。

4月のおわりと、5月の真ん中に、ささげ、スクナカボチャ、イエローストレートネック(ズッキーニ)の種蒔きをしました。
やまのあいだファームでは、私たち自身が採った種を蒔くことがよくあります。すこし前に、あかねちゃんが種採りの話を書いていました(※ vol.10・ことり菜の秘密)。
そんなふうにしてつないできた種です。大切に思う気持ちがあるし、種蒔きってはじまりのしごとなので、すごく緊張します。


それから数日後。
畑に出ていると、あかねちゃんが私を手招きしました。
「ちょっと深かったかも。これだと発芽しないかもしれない……」
わたしが蒔いたスクナカボチャとズッキーニの種にかぶせた土を少しどけて、発芽に適した状態に手直ししてくれました。種蒔きをするための穴の深さがよくなかったのです。気がついていませんでした。

ほったらかしにされた山の木を間伐し、炭焼きのしごとをしている人に会ったことがあります。
「過密に育った杉の木を間伐してやると、地面に陽が届くようになって埋土種子が発芽して、ほかの木も育ってくるんです」
埋土種子というのは、発芽、生育に適した条件と巡り逢うまで、土のなかで休眠している植物の種のことをいうのだそうです。穏やかというか、無理のない感じがして、そんなふうに生まれる命もいいなあと思いました。
野菜を育てること。芽が出て、大きくなっていくこと。それは私がなにをするか、しないかで大きな違い、変化が生まれてしまう──当たり前のことなんですけど──。そう思うと、どきどきしてしまいます。でも、いくら大切にしても、それで元気に発芽しても、霜にあたって枯れるようなこともある。
ヒトの力というものを過信しないように、邪魔をしないように、気持ち良く育ってもらえるように、畑ではそんな気持ちです。
●ますお
※真ん中の写真/ささげの種蒔きはひとつのポットに2粒ずつ。あかねちゃんに深さの目安を教わって、蒔いていきました。あかねちゃんによると「この子たちは浅く蒔くと芽の出方を間違えるから、深めにね」