種を蒔く。
前の年に種採りをしたもの。採種する株を選ぶとき、あかねさんが「こういうものがいいよ」と選んでくれたのを思い出す。
しばらくすると、この子たちは芽を出し、大きく育っていく。それが、親と同じような姿になるのだろうと考えると、なにか不思議な気分になる。

僕には子どもがふたりいる。6歳の長男と、2歳の長女。
けれども、このあいだお風呂上がりに娘の手を見て、おや? と思った。なんだか見たことのある手だな。
娘の手や指はいつも見ているのに……なんだろう、どこで見たんだっけ。
少しして、あ、自分の手だと気づいた。いわゆる男爪。指先も丸い。へえ、こんなところが似るのかと思ってしまった。
そういえば、娘が生まれてすぐの頃、僕の母が娘を抱いてこんなことを言った。
「なんか〜 懐かしい〜感じすっわいぇ〜」
僕と妻は、ふたりの顔がそっくりなことに気づいていたけれど、そのことには触れずに、不思議だねーとくすくす笑っていた。
自分と似ているっていうことは、すぐにはわからないみたいだ。
なにか、どこかで見たような気がするとか、懐かしく思うとか、そんなふうに感じるのかもしれない。
ちなみに、僕の顔は母そっくりです。
近所で犬の散歩をしている人をよく見かけるけれど、
飼い主と犬がそっくりなことがよくある。
遺伝は関係ないし、どうしてなのか、もうほんとうに謎。
でも、調べてみると、どうやら自分に似ている犬を選んでしまうという説があった。なるほど。
僕の友人に、彼と奥さんと、それぞれのご両親や兄弟姉妹、全員がそっくりというケースがあって、
長いあいだ、どういうことだろうと思っていたのだけれど、なんか納得できた。
似ているって、考えるとすごく面白い。
同じところがいっぱいあるけれど、違っているところもある。
種が育つのを待って、そんな、似てると違うを見つけたい。
そうそう、気になって、夜、寝ている息子の手を見てみると、妻の爪にそっくりだった。
●ケンゾー