南丹市の八木町、亀岡盆地の北のはしっこの田園地帯で私は暮らしています。やまのあいだファームまでは車で10分ほど。畑に向かう道の左右には、ずううーっと田んぼがつづいています。

6月に入って田植えラッシュが一段落。お米の農家さんは、ほっと一息というところだと思います。植えたばかりの稲の苗は小さいので、田んぼに張られた水には、青い空と白い雲、遠くの山々などが映し出されています。稲がもう少し大きくなると、綠一色になり、稲がわさわさと揺れて、風が走るのがわかります。
そしてところどころに麦畑。このあたりでは小麦もたくさん育てられています。今はちょうど麦の収穫時期だから、新緑と黄金色のコントラストが少し不思議で、とてもきれいです。
日々、移り変わる山の姿や空の様子、田畑の色に見とれてしまいます。
その美しさは、あまり長くはとどまってはくれません。時間とともに、姿を変えていきます。そこにある一瞬、その儚さがたまらなく好きなのです。
田舎の風景を指して、昔ながらのと言われることがあります。都会のように、新しいビルや道路ができたりするようなところではないので、昨日も今日も明日も変らない、昔もきっとこんなふうだったという意味なのでしょう。
でも、それはどこか違うように感じます。やまのあいだファームのようなところにいると、自然というものがじっとしていないことがよくわかります。動いている、変りつづけている。去年の夏と今年の夏は同じではありません。
80歳まで生きるとして、あと50年。長いようですが、このような風景はあと50回しか見ることができない。一瞬の季節を味わいながら、歳を重ねたいと思います。
●あかね
写真/用澤菜奈子