ラテンアメリカの音楽を特徴づけるもののひとつにラテンパーカッション(打楽器)があります。
よく知られているのは、皮を張った太鼓のコンガやボンゴ。ひょうたんの内側をくり抜いて外側に切れ込みを入れ、棒で擦ってギーギーと音を出すギロも見かけることが多いです。カウベルはカンカンと鳴る金属製の楽器。マラカスも有名ですね。


僕がドミニカに滞在しているときに習っていた楽器は、タンボーラというものです。かなりマイナーな楽器なので、知っている人は少ないかもしれません。
1940年代にドミニカで広まったメレンゲというダンスミュージックで使われる打楽器です。ケーキのメレンゲをつくるとき、泡立て器をくるくる回す様子と、男女がくるくる回る姿が似ているからメレンゲと名づけられたという説があります。2/4拍子の軽やかなリズム、男女がペアになって踊ります。
タンボーラは直径が30cmくらい、長さが40cmほどの木の胴に皮が張ってあり、坐って膝の上に置くか、立って紐で首から吊るし、片方をバチ、片手は素手で叩きます。むかしはヤギの皮が使われていましたが、今は牛の皮が一般的。皮の厚みによって、また手とバチを使うことで、数種類の音色を出すこができます。
リムという、胴に張った皮を押さえつける輪っかの部分はラタン(籐)でできています。ロープが通されていて、締めたり緩めたりすることで、皮の張りを変えてチューニングができるしくみです。
だけど、これが結構な重労働で、おまけに微妙な調整が難しくて苦労します。大手の楽器メーカーのタンボーラはロープを金属製のパーツに置き換えていますが、ラテン界隈のタンボレーロ(タンボーラ奏者)は、ドミニカの職人が作ったロープ仕掛けのものを使っています。
僕もドミニカにいるときに、職人さんに作ってもらいました。日本では持っている人はあまりいないようです(少し自慢)。

叩くと音が出る。打楽器はシンプルだから、誰でもはじめるのは簡単だと思います。僕も、小さいころ、お茶碗を箸で叩いては叱られていました──同じようなお子さんがいたら、クリスマスには打楽器をプレゼントしてあげてください──。ドラムが欲しかったけれど、さすがに高価で、友だちにもらったスティックでエアドラムを叩いたり。
なにも考えなくても音が出せるところが魅力だったけれど、習いはじめると自由に叩くことができなくなって、下手になったなと感じたこともあります。
日本の太鼓もいいけれど、日本だとお祭りとかの行事事になっています。でもラテンの国々では太鼓は日常のなかにあります。いつもどこかから音が聞こえてくる。そういう文化が心地良かった。うるさいのは苦手な性格なのに……不思議なものです。

●まつい

*2枚目の写真は、ドミニカの有名なタンボレーロのフーリオ先生。僕は週に1度、習いに通っていました。