春のはじまり、やまのあいだファームはよもぎ摘みの季節。
ひとつひとつ新芽を手で摘んでいます。
畑を見て廻り、よもぎがもりもりと群生しているところを見つけると嬉しくなる。晴れの日は心が弾む。おとぎ話に出てきそうな、よもぎ摘みの若人? になったような気分。雨の日はカラダがどんどん冷えてきて、なんだか苦行を求める修行僧になったような気分。でも、雨だと積んだよもぎが日差しでくたびれない。
無心でよもぎを積んでいると、遠くでウグイスの鳴く声が聞こえた。
なぜか、大工をしていた頃、親方によく言われたことを思い出した。
「ケンゾー! 格好悪いぞ!」

親方が言っていたのは、鋸を引くとか釘を打つとか、そういうときの姿勢のことだ(僕のルックスのことではないです……)。スポーツでいえばフォーム、下手くそは格好、姿勢が悪いという話だ。
人の姿というのはおかしなもので、見ただけでその人が達人か初心者かがわかってしまう。たとえば僕は学生の頃からギターを弾いているのだけれど、もしも誰かがギターを抱えているところを見れば、弾く前からなんとなくその人の腕前の見当がつく。坂ノ途中のスタッフはらださんが、僕が台所に立って包丁を持っているところを見たら、きっと、ああー、とため息をつくと思う(立つ、坐る、歩くといった、道具を手にしない、いちばん基本的な姿勢にも達人がいるけれど、それはまたべつの話)。
ともかく、畑の仕事にも大工の仕事と同じことがいえるはず。よもぎ摘みにも。
背筋を伸ばし、肩の力を抜き、指先に意識を集中して、よもぎに手を伸ばす。
格好いいでしょ? 親方。

●ケンゾー