お日様の匂いとみずみずしい甘さで、夏を感じさせてくれるトウモロコシ。
7月に入り、お野菜セットでもお届けがはじまっています。
甘くておいしかったとうれしいお声をいただく一方で、「実が詰まっていなかった」「粒が凹んでいた」「皮を剥いたら、しなびていた」といったご連絡をいただくことも。
これらの症状には、生産者さんも頭を悩ませています。
できる限り、お野菜をいい状態で届けたい気持ちは、わたしたちも生産者さんも同じ。けれど、どうしても起こりやすい、不稔やエクボ果といったトウモロコシの生理障害とその原因、出荷の裏側について皆さまにも知っていただきたく、ここでお話できればと思います。
先端不稔

トウモロコシの雄穂(左)と雌穂(右)
わたしたちがふだん食べているのは、トウモロコシの果実(種子)の部分。受粉することで実ができますが、これがうまくいかなかった場合に、実が膨らまない「不稔」という症状が起こります。
トウモロコシの株の一番上に花火のようについているのが雄穂で、実のつく部分が雌穂、そこから出ているヒゲ一本一本が雌しべです。風によって雄穂から花粉が飛び、ヒゲ(雌しべ)に付着することで、受粉が行われ、成功すると実(種子)がなるという仕組みですが、生育時の条件によっては、受粉が不十分になってしまうことがあるのです。

先端不稔のトウモロコシ(ホワイト)
先端不稔が起こる原因として考えられるのは、大きく2つ。
1つ目は、雄穂と雌穂の花が咲く時期のずれです。高温・低温・乾燥・過湿・日照不足などで生育中にストレスがかかり、雄花と雌花の付くタイミングが合わず、受粉できないというケース。
2つ目は、花粉が飛ぶ時期の天候不良。雨が降って花粉が十分に飛ばなかったり、また乾燥によって雌穂が伸びず受粉できなかったり、ということがあります。
エクボ果

エクボ果で出荷を取りやめたトウモロコシ
実は詰まっているけれど、粒が凹んでいるようなものもあります。これを「エクボ果」と呼びます。
原因として考えられるのは、実が熟す期間の水分・養分不足や、急激な温度変化。実にストレスがかかると、受粉しても胚乳が十分につくられず、エクボ状の凹みがある粒になることがあります。
虫による食害

アワノメイガによる先端部分の食害
さらに、虫による食害も、とても厄介。カメムシやアワノメイガ(蛾の幼虫)は、穂先や皮の外側から入りこみ、実や茎を食べてしまいます。
虫害を抑えるために、畑をきれいに維持する工夫をしていても、一度発生してしまうと、化学合成農薬に頼らない栽培をしている坂ノ途中の生産者さんにとって、その被害を防ぐことは困難です。
坂ノ途中では、検品時に虫を取り除くために先端をカットしたものについても、状態がよければお届けすることがあります。
坂ノ途中の検品と出荷基準
生産者さんから坂ノ途中に届いたお野菜は、スタッフによる検品を行っています。
先端不稔については、外から触って見つかるケースもあり、手で握ってチェックしていますが、外からは判別できないものもあります。
一本一本、中まで確認できればよいのですが、トウモロコシの鮮度を保つためには、なるべく外葉に覆われたままの状態で出荷するのが好ましく、基本的には抜き取り検品という形をとっています。生産者さんごとにランダムに抜き取り、状態の酷いものが見つかった場合には、全量検品を行いますが、必ずしもすべての品質不具合を見つけられるわけではないというのが現状です。
もしも、状態の酷いものをお届けしてしまった場合や、ご不明な点がございましたら、お手数をおかけすることになりますが、坂ノ途中・お客さま窓口までご連絡くださいませ。
こうした品質不具合については、生産者さんにもお伝えして、今後の対策をともに考えています。
※不稔が全体の20%以下の範囲であれば、商品として出荷する判断をしており、エクボ果についても、程度が大きくなければ、味に大きな影響はないため出荷しています。
おわりに
実が揃わなかったり、虫に食べられてしまったり、はたまた収穫直前にシカやサルなどの動物に食べられてしまったり。トウモロコシは栽培がとくに難しいお野菜です。それでも、生産者のみなさんは、お客さまからのおいしかった! のひと言が励みになるといいます。
お手元に元気なトウモロコシが届いたら、新鮮なうちにおいしく味わっていただけたらうれしいです。ご感想もお待ちしております。