爽やかな香りを楽しむ、グリーンレモン
広島県呉市、瀬戸内海に浮かぶ尾久比島 のエビス農園さんから、陽の光をたっぷり浴びて育ったレモンが届きました。
グリーンレモンとイエローレモンの違いは収穫時期。レモンは春に花が咲き、実をつけて秋から収穫、出荷がはじまります。12月ごろまでは爽やかなグリーンレモンとして、だんだん寒くなると1月頃からは黄色くなりレモンとして出回ります。
グリーンレモンは、若いレモンなので、酸味が強く、香りがさわやかなのが特徴。キュッとしぼってレモンサワーやお料理のアクセントに。もちろん、シロップやジャム、塩レモンなど、イエローレモンと同じようにもお使いいただけます。
瀬戸内海に浮かぶ無人島から
レモンが育ったのは、瀬戸内海の小さな無人島、尾久比島(おくびじま)。とびしま海道の島のひとつ、豊島から南へ約300mの位置にあります。
生産者のエビス農園・胡子知生(えびすともき)さんは、この島へ毎日のように船で通い、樹の世話をしています。
船を動かす燃料費はかかるし、台風が来ると島へ渡れない。一度に運べる量にも限りがある。それでも、この島で育てる良さがあります。
● 1年を通じて温暖な気候
海の水は「温まりにくく冷めにくい」という性質があります。海に囲まれた小さな島は、温度変化が海水温の影響でおさえられ、年間を通しておだやかな気候。尾久比島はこの30年寒波知らずで、寒さが苦手なレモンに適しています。
● 日光と海からの反射光
尾久比島は、全体が小さな山のような島です。だから、畑は傾斜地の段々畑。樹々は効率よく陽射しを受けることができます。遮るものがないため、目の前に広がる海からの照り返しの光も受けられます。たっぷりの光が、レモンを美味しくしてくれるのです。傾斜地であることによる水はけのよさも、レモンの甘みが増すポイントです。
● 農薬を使わず、じっくり育てる
エビス農園さんは、農薬や化学肥料に頼らず、海藻からつくった肥料や鶏ふんなど有機質肥料を使い土づくりに取り組んでいます。無人島では、ほかの農園からの農薬飛散といった影響を受けることもありません。
つくり手のこと
胡子知生さんは、広島県江田島育ち。食品メーカーに勤め、20年以上経理や人事に携わってきました。故郷の広島へ転勤になったのをきっかけに、ずっと心にあった「自分で何かをつくりあげてみたい」という気持ちが膨らみ、就農を決意。同級生のご両親から、尾久比島のレモン畑を受け継ぎました。
1960〜1980年頃がこの地域の柑橘栽培の全盛期。島に通う人も多く、農船(瀬戸内海の島々を行き来して収穫した柑橘類を運ぶ船)が運航していました。けれどいま、この島に日々通っているのは胡子さんを含め、2軒の農家さんだけです。
レモン畑の仕事は、秋から春は収穫、春から秋は剪定と草刈りがメイン。レモンは放っておくと枝が上に上に伸びていきます。上に伸びる枝には実がつきにくく、横に伸びる枝にはつきやすいという性質があるため、剪定して木を低くする必要があります。引き継いだときには伸びすぎていた樹を、3年かけて整えてきました。
「この畑の樹は、30〜40歳ぐらい。就農してまだ数年の自分よりずっと先輩ですね」と胡子さん。1本1本丁寧に樹のお世話をし、土づくりに取り組んで、レモンを育てています。
レモンのおいしいレシピ
とびきり爽やかなグリーンレモンでつくりたいパスタです。豆乳とチーズのクリーミーな味わいのなかで、レモンのすっきりとした香りと酸味が引き立ちます。
グリーンレモンの酸味が爽やかなソース。玉ねぎの甘みと合わさって、いろいろな食材になじむ、バランスのとれた味わいに。茹でたじゃがいもやきのこのソテー、焼いた魚やお肉など、お好みのものにかけて召し上がれ。
フランスの伝統的な焼き菓子、ウィークエンドシトロン。グリーンレモンの果汁や皮を使い、ほどよく酸味のある爽やかな味わいに仕上げています。
とうがんのほのかな瓜っぽい香りと、グリーンレモンのさわやかな風味がよく合います。そのまま食べても美味しいですが、ヨーグルトなどにトッピングしても。
レモンを保存するなら、塩レモンに。できあがった塩レモンは、サラダのドレッシング、スープ、炒め物などの隠し味、マリネ液など、さまざまなお料理に活用できます。
ほかにも、レモンを使ったレシピをこちらでご紹介しています。
試してみてくださいね。
また手にとりたくなる野菜について
美味しく育つ、理由がある
日本の風土は多様です。
暖かな風と日光に恵まれたところ、ずっしりと雪が降り積もるところ、豊かな森と海に囲まれたところ――。
気候や地形、土壌によって、育つ作物もさまざまです。
その土地の特長を生かしながら、手をかけて育てられたお野菜は、うんと美味しい。
たとえば、瀬戸内海の無人島で日光をたっぷり浴びたまろやかなレモン、鳥取・大山のジンジンとする寒さのなかで甘みの増したキャベツ、対馬の海風を受け栄養を蓄えた原木で育った香り高いしいたけ。
「また手にとりたくなる野菜」では、そうした、美味しい背景、ストーリーをもったお野菜やくだものをお届けします。お料理をつくりながら、食卓を囲みながら、「農家さんはこんな人なんだって」「こういう場所で、こんな工夫で育てられているんだよ」「また食べたいね」そんな会話のきっかけにもなれば、とても嬉しいです。