京都の山あいで育まれる、素朴な味わい
京都府のちょうど真ん中あたりに位置する、南丹市園部町。山や川の自然が豊かなこの町で農業を営む、京のべじ・児島ひかるさんの田んぼから、飾らない素朴なおいしさのお米をお届けします。
大粒で、さっぱりと軽い食感。味わいは深く、甘みの余韻がつづきます。ふき味噌や甘辛煮、お味噌汁などの和食と合わせると、しみじみ、うまみが感じられるお米です。
児島さんのおすすめは、余すところなく味わえる、玄米ごはん。小豆と一緒に炊いてもおいしいですよと教えてくれました。
のびのびと育つ、昔ながらのお米
園部で米づくりを始めたばかりの児島さんは、近くの田んぼで育つ「旭(京都旭)」という在来種のお米に興味を持ちました。それは、100年以上も人の手で改良されていない昔ながらの品種。ササニシキやコシヒカリの遠い先祖にもあたります。
稲の背が高くりっぱで、根をよく張り、お米の粒も大きい、植物としてのつよさをもつ「旭」という品種に惹かれた児島さんは、ひと握りの種もみを手にし、栽培をはじめました。
それから毎年種とりをして少しずつ量を増やしてきたのが「京のべじ・のびやか米」。ぐんぐんとのびやかに育ち、実ったお米は大粒で、さっぱりながらも、甘みがじんわりと感じられる深い味わい。
「育っている姿、稲の勢いがほかの品種とは全然違います。手間はかかるけれど、育てるのが愉しいんです」と児島さんは話します。
昨今では、人間のニーズに合わせた品種改良も進み、味わいは甘みがはっきりとして粘りのつよいものが主流に。また、収穫時の機械の利便性のためにも、お米の粒は小さく、稲の背丈は低いものへと変わってきています。
生産者にとっては手間のかかる品種ながら、児島さんはこの種を大切にし、育て続けています。
田んぼの環境、稲をよく観察し、すこやかに育てる
分水嶺が近く、山の湧き水が川を流れ、また山のおかげで昼夜の寒暖差が大きい園部町。この土地の自然環境は、お米の味わいをつくる要素のひとつです。
山ぎわの湧き水が流れる田んぼでは、冬季湛水(とうきたんすい)といって、冬のあいだも田んぼに水を張る農法を。とろとろの泥の層をつくることで、田んぼに微生物が増え、雑草は発芽しにくくなり、お米の生育がよくなります。
冬場に水のない田んぼでは、刈り取った稲の根っこが分解されるように土を耕し、草を生やして、次の田植えに備えます。草が生えることで土中に空気のすき間ができ、微生物の動きも活発になります。
「稲が元気そうに育っているのは見ていて気持ちがいい。そういうお米は、おいしいと思うんですよ」
お米がおいしく育つ秘訣を訊いてみると、児島さんは少し考えてから、そう答えました。
「健全に育っている稲をよく観察して、ほかの田んぼでも実験してみたり。草の勢いがつよすぎると、お米もなかなか育ちにくそうにするので、草を抑えるよう手を動かしたり。除草はできているのに、稲がなんだかイマイチなときは土を調べます。すると、足りていないものが分かり、土に栄養を与えたらいい感じに育っている! とか。いつもお米の表情を見ています。農家は観察するのが仕事みたいなもんですからね」
つくり手のこと
京のべじ 児島ひかるさん(京都府南丹市)
お米だけでなく、春菊やほうれん草、トマトといったお野菜も育てて届けてくれている児島さん。3人の子をもつ父でもあり、家事をこなし、子どもをサッカーの練習に連れていき、畑仕事をして……と、穏やかな印象からは想像がつかないほどにパワフルです。
児島さんが生まれ育ったのは、大きな会社の工場が立ち並ぶ、兵庫県高砂市の工業地帯。化学物質の影響からか身体にアレルギーがあったこともあり、いつかは自然の豊かなところへ住みたいという思いを持っていました。高校卒業後は農業の道に進もうと、研修を受け、有機農業法人で働き始めたものの、思い描いていたような農的な暮らしができる環境ではありませんでした。
東日本大震災が起こったのは、ちょうどその頃。原発の問題、これからの家族の生き方を考え、自給自足、循環する暮らしを選び、2012年に京都府南丹市園部町に移り住みました。
初めのころは、野菜や米、味噌、醤油といった食料の自給に加え、天ぷら油で車を走らせたり、アルミ板でお湯を沸かしたりとエネルギーの自給にも積極的でしたが、数年が経ち、自分でできることには限界があるのではないかとも感じ始めていました。
そんなとき、お野菜の販売を通して関わり、出会ったのが、身体・精神に障がいを持った方たちでした。彼らに農作業を手伝ってもらうようになって、農園での雇用が拡がり、ご近所からも、同じ思いをもったスタッフが集まるように。
「働きやすい職場をつくって、うちでしか働けないひとがうちで働くことで自分の力を発揮できるようになるなら、意義があるのではないかと思って。畑で楽しく働いてもらうというのが、今はモチベーションになっています」と児島さん。
この仲間となら京都を代表するような農業者を目指せるのではないか。そんな想いが「京のべじ」という屋号には込められているそうです。
「もっと、もっと、おいしいお米、野菜をつくりたい」
就農から10年以上が経つ今も、柔軟でありながら、本質はぶらさず、日々の農作業と向き合う姿が印象的でした。
ご注意点
■玄米の調製年月日について
玄米には裏面の品質表示ラベルに調製年月日を記載しております。
調製年月日とは、農家さんがもみすり(稲もみからもみ殻を取り除いて玄米にする作業)をした日付のことです。
年に1度のお米の収穫に合わせてもみすりをする農家さんが多いため、調製年月日には稲刈りのころの日付が記載されていることがほとんどです。
玄米は、白米と違って、適切な保存状態であれば長期保存してもほとんど劣化しませんので、調製年月日から時間がたっていても品質には問題ございません。
■未検査米について
未検査米とは、品種や銘柄についての検査を受けていないお米のことです。
品種銘柄検査を受けていないと、品種名、産地、産年を袋に記載できないというルールがあります。
この検査は、食味や農薬使用の検査ではありません。ですから、検査の有無によって品質が変わるということはありません。
坂ノ途中では品種銘柄検査を重視していません。
見かけることの少ない品種のお米や、農家さんが自家採種されているお米、「検査にお金使うのはイヤやわ」というポリシーの農家さんのお米については、未検査米を扱うこともあります。
■小石や種の混入について
坂ノ途中がお取り引きしているお米農家さんやその精米所は大規模とは言えません。大手の精米所で用いられるような高性能な選別機を使用していないことがほとんどです。そのため、丁寧に選別はしているものの、稲刈り時の小石や、クサネムと呼ばれる雑草の種(小さな黒い粒)がお米に混ざってしまうことがございます。
お米の品質には問題なく、お米を研ぐ際に取り除いてお召し上がりいただければと思います。気になる状態でしたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
■お米の保存について
お米の保存は、風通しがよく、直射日光のあたらない、15度以下の場所が適しています。
季節や温度を気にせず、お米をおいしく保つことができる場所は、冷蔵庫の野菜室です。ーにおい移りを防ぐため、ペットボトルや密封できる容器に入れて保存し、お届けから30日を目安にお召し上がりください。
■コクゾウムシについて
虫などの侵入を防ぐために倉庫の管理や選別機でのチェックを丁寧に行っていますが、まれに「コクゾウムシ」と呼ばれる虫がお米の中に入り込んでしまうことがございます。虫は、畑ではなく収穫後に侵入し、お米に産卵して増えていきます。虫が侵入したお米がひと粒でも入ってしまうと、特に常温保存では短期間で増えてしまうことがございます。
気温が20度を超えると活動が活発化するので、気温・湿度が高くなる時期には、特にお米の保存場所にご注意ください。
田んぼと食卓むすぶ まいにちのお米
お米が育つ背景や、その豊かな味わいについてもっとお伝えしたい。そんな思いを込めて、「田んぼと食卓むすぶ まいにちのお米」というお米の特集ページをご用意しました。
おいしいお米を味わうことが、田んぼとわたしたちの食卓をむすび、未来につづく農業や暮らしを考えるきっかけとなりますように。