みずみずしさ溢れる甘夏
熊本県水俣市の海沿いにある小さな漁村から、海風に吹かれ、太陽のひかりを浴びて、すこやかに育った甘夏をお届けします。
生産者さんの〈からたち〉さんとその仲間は、栽培をはじめたときからこれまで約40年、農薬・化学肥料を使わず、海藻などの自然にあるものを活かして土づくりをしてきました。最近では、有機肥料も与えない、より自然のままに近い栽培にも取り組みはじめています。
しっかり分厚い皮のなかには、ぱりっとはじける、みずみずしい果肉。
さわやかな甘味と酸味が、口いっぱいにゆっくりとひろがります。
皮もマーマレードやピールにして、まるごと楽しんでいただきたい甘夏です。
ひと玉の甘夏から、水俣を伝えたい
届けてくれるのは、熊本県水俣市のからたちさん。
自らも柑橘を育てながら、水俣の仲間がつくる柑橘やその加工品、海産物の販売をしています。
「水俣の人たちが植えたみかんの木をこれからも守り、次世代へつなぎたい。なるべく自然に負荷をかけない栽培を貫き、実ったみかんひとつから水俣を伝えたい。そのために自分たちの役割を果たし、ここで根を張りたいんです」
からたちの大澤菜穂子さん・基夫さんは、そう語ります。
水俣の小さな漁村で、どうして甘夏栽培がはじめられたのか。
今ここにある、ひと玉の甘夏。その背景にあるお話を伝えさせてください。
漁師が植えた、甘夏の木
八代海を西にのぞむ、熊本県水俣市の沿岸地域では、古くから風と潮流を利用した漁業が人びとの生業となっていました。山からのミネラル分が流れ込む水俣の海は、多様な種類の魚や海藻に恵まれ、今でも美しい景色が広がっています。
この水俣の海で、公害問題として知られる水俣病事件は起こりました。汚染は戦前からはじまっていたと言われていますが、水俣病患者の認定が公式に行われたのは1956年のことです。工場廃水に含まれる有害物質が海を汚し、美しい自然、魚や動物、そして人間、多くのいのちを傷つけました。
風評被害も広まり、これまでのように漁ができなくなってしまった漁師たち。彼らは海を追われ、陸に上がりました。そして新しい生活の糧とするため、山に甘夏の木を植えたのです。これが「水俣の甘夏」のはじまりです。
苗木を植えてから実が収穫できるまで、5~6年。そのあいだ、釣った魚を自ら売り歩き、木の世話をして、海と山を行き来しながら暮らしたといいます。
農薬を使わないという選択
化学物質による汚染の恐ろしさを身体で経験した水俣の生産者たち。そのなかには、被害者が加害者にならないようにという想いから、農薬や化学肥料を使わずに栽培する人たちがいました。
水俣という地であっても、そのような栽培は手間がかかる、害虫被害にあうなどと言われ、周りからの目は冷たかったといいます。見た目がきれいでないと、売ることも難しかった。
それでも、水俣で起きたことを伝えるために、約40年にわたって農薬を使わない栽培をつづけてきました。今では代替わりもしていますが、原点はずっと変わりません。
世の中を問う、水俣の甘夏
ものに溢れ、不自由のない暮らしを追い求めてきた私たち。
その結果、起こってしまったことを知ること。
自分たちの生活は、どのようにして成り立っているのかを知ること。
「ただ売れればいいのではない。世の中を問う水俣のみかん、どんな未来をつくっていきたいかを考える、きっかけのみかんであってほしい」
からたちのみなさん、そして生産者のみなさんの想いです。
「みなまたの甘夏」が、一人ひとりが未来を考える、小さなきっかけとなることを願います。
つくり手のこと
からたち(熊本県水俣市)
彼らの名前の由来は、からたちという柑橘。
からたちの木は、さまざまな柑橘の栽培において、接ぎ木という手法で土台に使われます。根っこから水分や栄養素を吸い上げ、接ぎ木された柑橘が育つための手助けをするのです。
そんなふうに、誰かと誰かをつなげたり、水俣とどこかをつなげたり、自分たちの役割を果たしていけたら、という想いから名付けられました。
生産者のみなさん
お客さまのお声
自然環境に委ね、農薬を使わずに育てられた甘夏は、手を加えるのがもったいないと感じたので、そのままガブっといただきました。程よい酸味と甘みのバランス、その中に心地よい苦味。果実を口の中に入れると、果汁がブワァっと溢れてきて、それを噛み締める贅沢さを楽しみました。
そして何より、生産者さんの甘夏への思いを知れば知るほど、この甘夏を好きになりました。未来を考えるきっかけにもなる……。味だけでなく、頂くものの背景を知る大切さを考えさせられる、おいしさとの出会いでした。(坂ノ途中アンバサダー @ayaka.i_03 さん)
はちみつ漬けに。一晩おくと甘さがアップして朝はヨーグルト、仕事中は炭酸と割って楽しみました。私の地元にも近い水俣。色んな背景を知ってからいただくみなまたの甘夏は、なんだか色々と考えさせられました。そんな背景も大事にしながらいただこうと思います。(坂ノ途中アンバサダー @ichico2 さん)
甘夏のおいしいレシピ
からたちさんに教えていただいた、マーマレードのレシピ。
皮のほろ苦さと果肉の甘酸っぱさのバランスがちょうどいいです。
親子でつくっても楽しめますよ。
こちらもからたちさんに教えていただいたレシピです。
甘夏、レタス、新玉ねぎを塩とオリーブオイルで和え、仕上げにごま油でかりかりに炒めたちりめんをのせていただきます。
からたちさんの「しらぬひ海育ちのちりめん」はこちら≫
スライスした軽い食感の新玉ねぎとセロリに、みずみずしい甘夏を合わせました。お塩とオイルだけのシンプルな味付けで、甘夏の明るい酸味が引き立ちます。
果汁たっぷりの甘夏の爽やかな風味。さっぱりとしているけれど、こしょうの効いた鶏そぼろがアクセントになります。坂ノ途中スタッフも大好きなレシピです。
また手にとりたくなる野菜について
美味しく育つ、理由がある
日本の風土は多様です。
暖かな風と日光に恵まれたところ、ずっしりと雪が降り積もるところ、豊かな森と海に囲まれたところ――。
気候や地形、土壌によって、育つ作物もさまざまです。
その土地の特長を生かしながら、手をかけて育てられたお野菜は、うんと美味しい。
たとえば、瀬戸内海の無人島で日光をたっぷり浴びたまろやかなレモン、鳥取・大山のジンジンとする寒さのなかで甘みの増したキャベツ、対馬の海風を受け栄養を蓄えた原木で育った香り高いしいたけ。
「また手にとりたくなる野菜」では、そうした、美味しい背景、ストーリーをもったお野菜やくだものをお届けします。お料理をつくりながら、食卓を囲みながら、「農家さんはこんな人なんだって」「こういう場所で、こんな工夫で育てられているんだよ」「また食べたいね」そんな会話のきっかけにもなれば、とても嬉しいです。