ふんわりと甘みのあるほうじ茶
抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)を焙じてつくられる、ほうじ茶です。表面を焦がすのではなく、茶葉の芯まで火が通るようにじっくりと焙じることで、ふんわりと仕上がり、香り、味ともに甘みがあります。
一般的には、一番茶を摘んだあとの茶葉を煎茶にして焙じられることの多いほうじ茶ですが、「碾茶でつくるからこその味もおもしろい。味わって、楽しんでもらえたら」と〈製茶房嘉栄〉の林嘉人さん。
茶葉が繊細で焙じるときに細かい調整が必要、使える焙じ機が限られる、ゆっくりと火を通すぶん、1時間かかってもほんの少ししかできないなど、つくるのにはなかなか手間のかかるほうじ茶ですが、この製法でしか出せない甘やかな香りをお楽しみいただけます。
福福ほうじ茶のおいしい飲み方
つくり手のこと
製茶房嘉栄 林嘉人さん(京都府和束町)
京都府南部に位置する和束町は、古くからつづくお茶の産地。山の斜面は茶畑の緑に覆われ、水もち、水はけの良い土壌、そして昼夜の大きな寒暖の差が生み出す霧によって、香り高いお茶が育まれています。
林さんは、この町で生まれ育ちました。野山で遊ぶのが大好きだった彼ですが、中学生のとき、生死に関わる大病を患い、入院生活がつづきました。二年遅れで高校を卒業し、茶農家になることを決意。それから二十年近く、お茶をつくり育てています。
「自然のなかで、生き物に囲まれて、お茶の樹を育てたい、そうしてできたお茶を飲んでもらいたいと思ったんです」
病を生きのび、動く体があること、生きていることの有難さをつよく感じたことが、彼のお茶づくりの原点になっています。
「山のいのちがめぐるこの場所で、こうしてお茶をつくらせてもらっているというのは有り難いことです」
新茶の収穫が終わり、茶園の忙しさも少し落ち着いた六月の下旬。和束町の〈製茶房嘉栄〉に林嘉人さんを訪ねました。
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