おいしいお米を探求、職人が育てるお米
「できるだけ自然に近い環境で、本当においしいお米を作つくりたい」
京都八幡の石清水(いわしみず)の生産者、辻さんの言葉です。
辻さんのお話をきいていると、「職人気質」「研究者肌」という言葉が浮かびます。稲を育てる中で何か課題が見つかったら、なぜそうなるのかを考える。解決のために工夫をこらす。妥協することなく試行錯誤を積み重ねながら、辻さんは「京都八幡の石清水」を育ててきました。
今では多くの方に支持され、数々の賞を受賞しているお米。情熱がつまったその美味しさを、多くの方に味わっていただきたい。辻さんの創意工夫をお伝えしようとすると長くなってしまったのですが、お読みいただけると嬉しいです。
1|苗にとって心地のいい環境を
辻さんの田んぼは、一般的な田んぼに比べてすき間だらけ。
これは「収穫量を増やすよりも、稲をのびのびと育てたい」という辻さんの想いからです。
すき間をあけて植えることで、苗は日当たりと風通しのよい環境で育つことができます。
心地いいのは生きものたちにとっても同じ。苗のすき間にはカルガモなどの鳥が舞い降り、泳ぎ回っています。鳥たちが泳ぎながら足で泥をかき混ぜると、雑草も生えにくくなります。
2|生きものの力を借りる
田植え直後の苗は、タニシの大好物。辻さんの田んぼでも、植えたばかりの苗が半分以上を食べつくされたことがありました。
そのとき辻さんは、食べつくさられた場所にしぶしぶ殺虫剤をまきました。しかしその年その場所には、殺虫剤をまかなかった場所よりも雑草が生い茂ったのです。タニシは苗だけではなく、雑草も食べてくれていたのか……そう気づき、タニシとなんとか共存できないか、模索をはじめることに。
タニシはやわらかい草が好き、という仮説を立て、苗が太く固ければ、まわりの雑草だけを食べてくれるのでは、と考えた辻さん。太く、固く、強い苗を育てるために、「厳しく育てる」ことを試みました。
上の写真のように30kgの重さのあるローラーで、田植え前の苗を何度も踏みつけました。
何度も繰り返すことで、苗はしっかり太く成長。田んぼに植えてもタニシは苗には目もくれず、雑草だけを食べるようになりました。
また苗も、もう踏まれなくなった解放感からか、一気にぐんぐん成長することもわかりました。
田んぼの厄介者と考えられているタニシをパートナーにしたことで、除草剤などの薬に頼ることがなくなりました。田んぼにはタニシや虫たちが増え、それを餌にする鳥たちも集まるようになったのです。
3|時間をかけて、うまみを引き出す
収穫後、低温でゆっくり乾燥させると、お米は風味や甘味が増しおいしくなります。
一般的なお米づくりでは、田植えを一気に行うため、刈り時期も一気に訪れます。一度にたくさんのお米をゆっくり乾燥させる時間や場所がなく、高温・短時間で乾燥させていることが多いのです。
辻さんは、稲の刈り時期が重ならないよう、田植えの時期を少しずつずらす工夫をしています。
いちばん美味しい「刈り旬」がきた田んぼから順に収穫し、通常の4~6倍、36時間以上かけてじっくり乾燥。
この36時間という時間も、辻さんの探求心のあらわれ。
外気温によって乾燥具合が大きく変わると気づいた辻さんは、気温が低い夜に乾燥をスタートするようにしました。翌日の昼、そしてさらに夜で36時間。ゆっくり乾かすことで、うまみの詰まったお米になりました。
「京都八幡の石清水」受賞歴
・お米番付(※1):2016年・2017年2年連続受賞
・京のプレミアム米コンテスト(※2):2018年 金賞受賞
※1:産地銘柄にこだわらず、人の五感で「甘い」お米を探し出すコンテスト
※2:京都府内で生産されるトップレベルのおいしいお米を発掘するコンテスト
お届けするお米について
■玄米の調製年月日について
玄米には裏面の品質表示ラベルに調製年月日を記載しております。
調製年月日とは、農家さんがもみすり(稲もみからもみ殻を取り除いて玄米にする作業)をした日付のことです。
年に1度のお米の収穫に合わせてもみすりをする農家さんが多いため、調製年月日には稲刈りのころの日付が記載されていることがほとんどです。
玄米は、白米と違って、適切な保存状態であれば長期保存してもほとんど劣化しませんので、調製年月日から時間がたっていても品質には問題ございません。
■未検査米について
未検査米とは、品種や銘柄についての検査を受けていないお米のことです。
品種銘柄検査を受けていないと、品種名、産地、産年を袋に記載できないというルールがあります。
この検査は、食味や農薬使用の検査ではありません。ですから、検査の有無によって品質が変わるということはありません。
坂ノ途中では品種銘柄検査を重視していません。
見かけることの少ない品種のお米や、農家さんが自家採種されているお米、「検査にお金使うのはイヤやわ」というポリシーの農家さんのお米については、未検査米を扱うこともあります。
■小石や種の混入について
坂ノ途中がお取り引きしているお米農家さんやその精米所は大規模とは言えません。大手の精米所で用いられるような高性能な選別機を使用していないことがほとんどです。そのため、丁寧に選別はしているものの、稲刈り時の小石や、クサネムと呼ばれる雑草の種(小さな黒い粒)がお米に混ざってしまうことがございます。
お米の品質には問題なく、お米を研ぐ際に取り除いてお召し上がりいただければと思います。気になる状態でしたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
■お米の保存について
お米の保存は、風通しがよく、直射日光のあたらない、15度以下の場所が適しています。
季節や温度を気にせず、お米をおいしく保つことができる場所は、冷蔵庫の野菜室です。ーにおい移りを防ぐため、ペットボトルや密封できる容器に入れて保存し、お届けから30日を目安にお召し上がりください。
■コクゾウムシについて
虫などの侵入を防ぐために倉庫の管理や選別機でのチェックを丁寧に行っていますが、まれに「コクゾウムシ」と呼ばれる虫がお米の中に入り込んでしまうことがございます。
虫は、畑ではなく収穫後に侵入し、お米に産卵して増えていきます。虫が侵入したお米がひと粒でも入ってしまうと、特に常温保存では短期間で増えてしまうことがございます。
気温が20度を超えると活動が活発化するので、気温・湿度が高くなる時期には、特にお米の保存場所にご注意ください。
田んぼと食卓むすぶ まいにちのお米
お米が育つ背景や、その豊かな味わいについてもっとお伝えしたい。そんな思いを込めて、「田んぼと食卓むすぶ まいにちのお米」というお米の特集ページをご用意しました。
おいしいお米を味わうことが、田んぼとわたしたちの食卓をむすび、未来につづく農業や暮らしを考えるきっかけとなりますように。