坂ノ途中の特別栽培についての考え方


坂ノ途中からお届けするお野菜や果物のなかに、特別栽培、もしくは特別栽培相当というカテゴリのものがあります。これは、私たちが広く扱っている、農薬や化学肥料に頼らずに育てられた青果物ではありません。栽培にあたって、化学合成農薬(以下、農薬)、化学肥料に由来する窒素成分が用いられている、ただしそれぞれの使用量は慣行レベル、通常使用される量の5割以下である、そういった条件を満たしたものを特別栽培農産物としています。
※詳細は末尾の 特別栽培相当について を参照ください

 

未来のために


私たちが基本的に扱うお野菜や果物は、農薬や化学肥料に頼らずに育てられた、いわゆるオーガニックというジャンルで括られるものです。ナチュラルであること、それをきちんと味わっていただければ、そんな思いを込めています。けれども、それが私たちの目指しているところではありません。目標は、「100年先もつづく、農業を」にあって、
オーガニックであることは手段のひとつです。そして、特別栽培のお野菜や果物を扱うことも同じようにひとつの手段と考えています。

少し例を挙げて説明します。
たとえば柿。桃栗三年柿八年ということわざがありますが、柿の木は一人前の大きさになるまでに7、8年の時間がかかります。そうしてやっと実をつけるようになる。長い時間を必要としている。もしも枯らしてしまうと、その時間は無駄になってしまいます。
柿の木を農薬を使わずに育てることができないわけではありません。1年、2年くらいなら柿も生ってくれます。けれども、すぐに駄目になってしまうことが多い。虫は樹に穴をあけ、病気は葉を落として光合成を妨げる。ダメージは蓄積して、数年で戻ることのできない姿になってしまいます。枯れる。
そういう状況がわかっていて、私たちは無農薬のものしか扱いませんというプレッシャーを農家さんに与えるのは、無責任なことだと思っています。

みかん畑についても同じです。山の斜面にあるみかん畑は、昔から、獣たちの暮らす山と人の暮らす里の境界になっていて、それぞれが上手く棲み分けるための大切な役割を果たしてきました。無くしてしまうわけにはいかない。
でも、過疎化や高齢化の問題があります。しかも平地の畑とくらべて、山の斜面での畑仕事は相当にきつい。75歳のおじいちゃんに山の斜面で草刈り機を使わせるわけにはいかない。だったら最低限の除草剤の使用はありにしよう。そういうふうにして農家さんたちの生活に配慮しようと。

今、後継者がいないために、放棄された果樹園が増えています。そのため、極端な例ですが、枯れることを承知のうえで無農薬栽培を行う農家さんがいます。枯れたら新しい果樹園に移る。次から次へと果樹を枯らして、新しいところを借りることは、前の農家さんが残してくれた富を食いつぶすようなものです。私たちは、農業の現場へ行けば行くほど、オーガニックじゃないと駄目だという言葉は、都会に暮らす人の勝手な押し付けではないのか、そう感じるようになりました。

みかんや柿が、10年先、20年先も実をつけて、私たちに恵みを与えてくれる。季節ごとに巡ってくるお野菜や果物の味わいは、私たちに人生の楽しみを与えてくれます。そんな未来にたどり着くために、私たちは、減農薬や特別栽培など、理解、承認のできる理由で農薬や化学肥料を用いて栽培された青果物を、栽培状況を公開したうえで取り扱うことにしています。

「100年先もつづく、農業を」というメッセージは、多面的な顔を持つ農業というものをさまざまな角度から眺め、人を未来に導いていこうという意味が込められています。どうかご理解くださいませ。

特別栽培相当について


青果物には、特別栽培農産物というカテゴリーがあります。これは、栽培に用いる資材、化学合成農薬と化学肥料由来の窒素成分の使用に制限を設け、その地域で慣行的に使用される平均的な分量の半分以下で栽培されたものです。

たとえば、〇〇県のリンゴを例に考えてみます。

同じ、○○県産の 特別栽培農産物 リンゴでも、各生産者の栽培状況によっては、農薬を1成分しか使用しないものもあれば、8成分使用したものもありますし、全く農薬を使用していないものもあります。化成肥料由来の窒素量に関しても同じことが言えます。

  化学合成農薬 化成肥料由来窒素(N)
慣行栽培(地域平均) 17成分 18kg/10a(面積)
特別栽培農産物 8成分以下 9kg/10a以下

特別栽培農産物は、農林水産省よりガイドラインが示されており、上記の栽培基準のほかにも、栽培計画書の作成、栽培責任者と確認責任者を置くこと、圃場看板の設置、出荷物の記録、一括表示などのルールが定められています。

坂ノ途中のパートナーの農家さんたちは、小規模、新規就農者が多く、栽培基準は満たしていても、そのほかのルールが煩雑にすぎて対応に手が回らず、農水省の定める特別栽培農産物を名乗れないというケースがあります。
そのような農家さんの青果物を、私たちでは特別栽培相当(特裁相当)として取り扱っています。

最後にお伝えしておきますが、農薬を使いたくないといちばん思っているのは農家さんたちです。自身の健康ということもありますし、食べる人のことを思うと、使いたくないなと考えます。しかも、農薬を使う作業はかなりの重労働です。道具を揃え、散布作業を行い、機械の洗浄をする。コストもかかります。

それでも使うのは、農家さんたちは未来を見ているからです。1本のりんごの木を、柿の木を残したい、その思いが込められていることを覚えておいていただければと思います。