季節移りゆく畑のようすを食卓へ 秋色のピーマン
涼やかな風が吹き、田んぼの稲穂が色づく季節。
熊本県山都町から、熟してゆく味わいを楽しめる秋のピーマンをお届けします。
「みずみずしく、ハリがある」「ぎゅっと、実がしまっている」「力づよい!」
山都町のピーマンの特長を、生産者のみなさんはそんなふうにいいます。九州のちょうど真ん中あたりの、豊かな山林に恵まれた町、熊本県山都町。ここでは、300mから900mの標高により生まれる寒暖差と、山々からのきれいな水、阿蘇山の火山灰を含んだミネラル豊富な土壌が、おいしいお野菜を育てます。
青く実り、夏に収穫の盛りを迎えるピーマン。秋が近づいて気温が下がり、日も短くなってくると、生長がゆっくりになり、果皮の色が緑から茶やオレンジ、そして赤へ、だんだんと熟していきます。完熟のピーマンはトマトのように真っ赤な色に。果肉は少し柔らかで、甘みや酸味が増し、フルーティーな味わいになります。
一般的な市場では、こうして色づきはじめたピーマンは規格に合わず、出荷を断られるのが現状。けれど、この季節にピーマンが色づくのは、子孫を残そうとする野菜の生理現象で、そのために糖度を上げようとするから、甘みがあってすごくおいしい。
この時季の畑のようすをそのまま食卓にお届けできたら、そして、季節の移ろいを食卓から感じてもらえたらと、山都町の有機農産物の流通を担う〈肥後やまと〉さんと話し、秋のピーマンとしてお届けいただくことになりました。
おすすめの食べ方は、丸焼きにしてオリーブオイルとお塩をかけた、ピーマンのグリル。
甘くジューシーな果汁に重なる複雑な風味が、口のなかを幸せにしてくれます。
つくり手のこと
肥後やまと(熊本県山都町)
ベビーリーフや白ねぎ、さといもなど、年間を通してさまざまなお野菜を届けてくれている〈肥後やまと〉さん。熊本県山都町を中心とした地域の、有機農産物の流通拠点となり、約40名の生産者さんがお野菜を出荷しています。
また、新規就農者がきちんと走り始められるよう販路を作ったり、ベテラン農家さんからの知識や経験を共有したりと、有機農業を次世代へと継承する取り組みもされています。
生産者のおひとり
蒲池達哉さん(熊本県山都町)
肥後やまとの生産者のおひとり、2014年に山都町で就農された、蒲池達哉さんにお話を伺いました。
以前はエンジニア関係の職に就き、北南米や中東、アジアなど海外の各地で仕事をしていたという蒲池さん。文字通り畑ちがいの農業に興味を持ちはじめたのは、帰国して生活を見つめ直し、地元の熊本に戻ってパン屋を営んでいたころでした。
海外生活で抱いた食の安全への疑問、子どもが生まれて実感した食の大切さ、おいしい有機野菜を食べたときの感動など、きっかけはいくつもあったといいますが、「自分の手でつくらなければ、なにも変わらない」という想いがつよくなり、農家の道へ。パンの原料となる麦を育てるところからスタートし、今ではピーマンなど年間5、6品目のお野菜を大切に栽培しています。
野菜づくりの根っこにあるのは、「食べたひとが幸せになれるものを」という想い。
「質が高く、たくさん収穫できる野菜、生命力のある野菜が一番おいしいと思うんです。そこを目指して、植物生理に基づき、手の感覚も頼りにしながら、できる限りのことを尽くします。
自分だけ、人間だけで生きているわけではないから。つくる人も食べる人も、周りの自然環境も、すべてが繋がっていると思って、野菜を育てています」
そんな蒲池さんが感じる山都町の魅力は、山あり、谷ありの豊かな景色。そして、季節の移ろいを五感で感じられること。
「海外に居たときにはカルチャーショックが多々ありましたが、今は別の刺激があります。自然に囲まれている、ここでの暮らしは、季節の微かな変化も、空気や匂いから感じ取ることができる。
農業の仕事は、毎度悩まされて大変なことの方が多いけれど、うまくいった時のよろこびは大きい」と話します。
「まずは一度、野菜を食べてみてほしいです」と蒲池さん。
その一言に込められた想い。お野菜の色や匂い、味わいから感じてみてください。
保存のポイント
寒さと湿度に弱いため、水気を拭き取ってからキッチンペーパーなどで包みます。ビニール袋等に入れ、口をゆるく閉じたら、冷蔵庫の野菜室へ。2週間程度を目安にお使いください。カットして冷凍保存も可能です。
ピーマンのおいしいレシピ
お野菜たっぷり、彩りのきれいなオープンオムレツ。ふわふわの卵に、しゃきっと食感のあるピーマンやきのこが重なり、りっぱな食べごたえです。
それぞれのお野菜の食感が楽しい、ご飯がすすむ一品です。
甘辛い常備菜って、どこかホッとする味わいですね。
いくらでもピーマンが食べられるレシピ。
種まで、まるごと煮込みました。
ほかにも、ピーマンのレシピをこちらでご紹介しています。
つくってみてくださいね。
また手にとりたくなる野菜について
美味しく育つ、理由がある
日本の風土は多様です。
暖かな風と日光に恵まれたところ、ずっしりと雪が降り積もるところ、豊かな森と海に囲まれたところ――。
気候や地形、土壌によって、育つ作物もさまざまです。
その土地の特長を生かしながら、手をかけて育てられたお野菜は、うんと美味しい。
たとえば、瀬戸内海の無人島で日光をたっぷり浴びたまろやかなレモン、鳥取・大山のジンジンとする寒さのなかで甘みの増したキャベツ、対馬の海風を受け栄養を蓄えた原木で育った香り高いしいたけ。
「また手にとりたくなる野菜」では、そうした、美味しい背景、ストーリーをもったお野菜やくだものをお届けします。お料理をつくりながら、食卓を囲みながら、「農家さんはこんな人なんだって」「こういう場所で、こんな工夫で育てられているんだよ」「また食べたいね」そんな会話のきっかけにもなれば、とても嬉しいです。