
本と野菜 OyOy 本と野菜 OyOy
僕たちは、お野菜と本の店をはじめることになりました。
OyOy。
ゆっくりとした、時の移り変わりを店の名前にしています。
それはいつ? と尋ねられてこたえるみたいな。
おいおい……ね。
OyOy、ここで多くの人たちと時間の流れをともにしたいと思っています。

野菜は生きもの、僕たちはそれを大切にしています。ひとつひとつに違いがあって、いろいろに変っていくこと。
坂ノ途中の野菜は、どれも野菜本来の美味しさを持っています。でも、ひとつとしておなじものはありません。季節、場所、天気、農家さん、どこでどう育ったかでお野菜は「なり」を変えます。おなじ畑なのに違いがあり、収穫の前の日に雨が降るだけで、姿かたち、味わいを移ろわせる。
お野菜をお客さまに届ける一方で、僕たちは大切にしていることを伝える工夫を重ねてきました──「やさいのきもちかるた」も、その取り組みのひとつとして生まれたものです。かなり好評──。インターネットを通じてお客さまとなってくださったみなさまには、直接お話しをしたわけでもないのに、僕たちのメッセージをきちんと受け取ってくださるんだと感動しています。でも、どこかもどかしさを感じることもあります。伝え方、表現の幅を広げる努力をしなければいけない、日々そんなふうに思っています。

たとえば秋、気温が下がり、万願寺とうがらしが肉厚になったらお料理の方法を変えてみよう。ダイコンの実やネギ坊主、小さなジャガイモのような、八百屋さんには並ばないものも食べよう。水分が抜けて「す」の入ったダイコンだからこそのメニューもある。お野菜という生きものの、あらゆる姿を器に盛る。
僕たちは、いつか、お野菜の変わりゆくさまをダイレクトに感じられる場所をつくりたいと思ってきました。
そして、本、読書という旅をナビゲートする本屋さんとコラボレーションすることで、OyOyには「時」を味わう仕掛けが用意されています。
京都という街、生きものは人ばかりという都市の中心部に、野菜という生きものの物語、時間の蓄積を味わう場所がある。そういうのって、いいと思うんです。
●小野邦彦