いつも坂ノ途中をご利用いただき、誠にありがとうございます。
8月から、これまでお野菜セットでは取り扱いのなかった山梨県、静岡県産のお届けを開始いたします。
取引農家さんのエリアを広げる理由
坂ノ途中では、農家さんに季節に合わせた栽培をしてもらうことを大切にしています。植物が無理なく育つことでしっかりした味わいになるし、結果的に農薬や化学肥料への依存や、暖房を用いた加温栽培を減らせると考えているためです。
しかしそうすると、同じ地域では、同じお野菜が同時に収穫のピークを迎えることになります。ズッキーニやキュウリといったピークが短い野菜は、ほんの短い期間しかお届けできない。そして、端境期(はざかいき)には、本当になにもない……なんてことにもなります。
そこで、土地の気候や風土にあった作物を栽培する「適地適作」という考え方のもと、取引農家さんの地域を分散させてきました。これによって、産地リレーを組んだり、それぞれの地域特有の伝統野菜などを紹介することができるようになりました。また、台風が来てどこかの地域の農家さんがダメージをうけても、ほかの方が出荷してくれるといったリスク分散にもなっています。
そして今回、山梨県の農家さんとの出会いをきっかけに、取り扱い地域に「山梨県、静岡県」を加えることとしました。
山梨県北部でお話を伺っていると、ずいぶんと京都とは栽培暦が違うようです。新たにパートナーになっていただく農家さんといっしょに、さらにバリエーションに富んだお野菜セットをお届けできるように頑張りますので、引き続き楽しんでいただけるとうれしいです。
きっかけとなった農家さんについて
今回のエリア拡大のきっかけとなったのは、山梨県北杜市のファーマンさんという農家さんです。
「農業を、スーパーマンのような子どもたちが憧れる職業に。」を理念に掲げるファーマンさんは、農地の拡大や研修生の受け入れ、スタッフの独立支援、農福連携や廃校利用など、次々と新しいことに取り組んでこられました。
いま挑戦しているのは、共同の出荷場をつくり、ご近所で就農した農家さんの出荷時の負担をさげるというもの。これはまさしく、坂ノ途中が近い将来にやりたいと思っていることです。そんなわけで、坂ノ途中も取引先のひとつとなることでファーマンさんの拠点づくりに貢献したいし、一緒に活動する中で多くを学ばせてもらい、ほかの地域での取り組みに活かしたいとも考えています。
こんなふうに、ご縁ができた生産者さんとも手をとりあいながら、持続可能な農業の実現に向けて、進んでいきたいと思っています。
「フードマイレージ」について
「せっかく有機農業で育てられた野菜を選んでいるのに、生産地が広がると、輸送にかかるエネルギー(フードマイレージ)で環境に負担がかかりそう」
「東京に住んでいるのに、山梨で育った野菜が、京都を経由して運ばれてくることに違和感がある……」
そんなふうにお考えになるお客さまもいらっしゃるかもしれません。
このテーマは、坂ノ途中の社内でもたびたび話題になります。エリア拡大を考えるにあたって、「坂ノ途中の研究室」でも調べてみました。
先行研究によると、温室効果ガスの排出を抑制するという観点からは、加温栽培(暖房を用いた栽培)を避けることがとくに重要です。それに比べると、陸上輸送の距離を短くすることの影響は小さいです。
有機農業を選択することは、この点においては、加温栽培を避けることほど、大きなインパクトはないと言えますが、一方で、有機農業には河川や湖沼の富栄養化を低減する、生物多様性を保全するなどの効用もあります。
坂ノ途中は、化学合成農薬や化学肥料を用いないというだけでなく、育苗中など一部の例外を除いて加温栽培を避けるという取り扱い基準(※)を定めています。
すこし輸送時のエネルギー消費が増えても、坂ノ途中が貢献できる地域が今より広がったほうが良いと考え、今回のエリア拡大を決めました。
※取り扱い基準についての詳細はこちら
研究室では、環境に負担をかけない食事ってどんなものか、それを考えるコラムを月に1度のペースで更新しています。こちらもご参考になればうれしいです。[食事から考えるやさしい環境学→]
今後も「100年先もつづく、農業を。」を目指して取り組んでまいります。
引き続き、よろしくお願いいたします。
●坂ノ途中代表 小野邦彦