緻密でとろけるような果肉、ぜいたくな楽しみ
山形県上山市、蔵王連峰のふもとで西洋なしを育てる蔵王ウッディファームさんから、とろけるような舌ざわりのラ・フランスをお届けします。
西洋なしは、9月下旬からさまざまな品種が順番に登場します。徐々に気温が下がり秋も本格的になってきたころが、ラ・フランスのシーズン。10月下旬頃から12月下旬まで出荷されます。
西洋なしは届いてもすぐには食べられません。常温で置いておき、軸の根本あたり、果実の頭の部分を触って弾力を感じたら食べごろ。毎日そっと触れてウズウズしながら待つ、この時間も西洋なしならでは。なんだか愛おしくなってきます。
包丁を入れると、ふわっと広がる花のような香り。お皿に盛る時間もがまんできず、切りながらつい、ひと切れ味見を。緻密でとろけるような果肉と、あふれる果汁。酸味と甘みのバランスも絶妙。ああ待っててよかった、とため息のようなひとりごとがこぼれます。
蔵王連峰のなだらかな裾野で育つ
宮城県と山形県の県境にそびえる蔵王連峰。その南西になだらかに広がる裾野には、一面にくだもの畑が広がっています。遮るものなく、やわらかな光がさんさんと降りそそぎ、風が通り抜けていく気持ちの良い丘陵地。この場所で蔵王ウッディファームさんは、ぶどうやサクランボ、西洋なしを育てています。
ファームのある上山(かみのやま)市は、降水量が少なく日照時間が長い。地形が盆地のため、昼夜の寒暖差が大きい。また、ミネラルの多い軽い粘土質の土で水はけも良い。くだもの栽培にぴったりの条件がたくさんそろっています。
除草剤を使用せず下草を活かす草生栽培という方法で育てています。まるで、みどりのトンネル。生えている草は定期的に刈られて土にすき込まれます。それを微生物が分解し、栄養たっぷりの土になっていきます。
つくり手のこと
上山市は、もともと養蚕用の桑栽培が盛んだったところ。蔵王ウッディファームの前身も桑栽培をしていたのだといいます。1950年代、養蚕がすたれはじめていることを感じ、現在の社長、木村 義廣さんの父である先代が、果樹園に切り替えていきました。木村さんも22歳のときに就農し「量より質」をかかげて品質の向上に取り組みます。そして、くだもの専門店など、おいしいくだものが評価されるような場所で愛される、西洋なしが栽培できるようになりました。
おいしい秘訣は、丁寧でこまめな作業にあります。
「枝と枝が重ならないよう、棚に張ってある針金に枝を丁寧に結びつけて、日当たりを良くします。実に日光がよく当たるようにすることで、味のムラが少なくなって日持ちもよくなるんですよ。
冬には、残す枝を決めてそれ以外の枝を落とす剪定(せんてい)作業を行います。枝の数を通常の栽培方法の8割くらいにとどめます。また花が咲いたときに、余分な花芽を取り除き、実がたくさんつきすぎないようにしています。」
たくさん実がつくほうがたくさん売れて、農家さんにとっていいはずですが、木村さんは量を収穫することよりも、味わいを大切にしています。すべての実に充分な栄養が行きわたるように育てると、糖度が高く香りも良く、なめらかな舌ざわりになるそうです。
「土や木を健康に保つことが大切。日当たりや風通しをよくしたら病気も害虫も減り、農薬をあまり使わなくても栽培できるようになりました。」
蔵王ウッディファームさんは、約40年前からワイン用のぶどうの栽培も続け、2013年にはワイナリーをオープンしました。自社の畑で育てたぶどうだけでつくるドメーヌワイナリーです。
「気候変動でくだものの栽培地域が変わっていっているけれど、自分たちに動かせないものは土地しかない。ぶどうも西洋なしも、ここでしか生まれない味を選ぶのが良いと思って、気候風土に合わせて品種を選んでいます。土地にもスタッフにも負担のかからない、より自然なやり方で育てるのが一番ですね。」
この風土が育む、ラ・フランスの味。みどりいっぱいの上山の風景を想像しながら、お楽しみください。
お客さまのお声
とろけるような果肉と、ジューシーでなめらかな舌触り。ひとくち食べると甘い幸せとともに、ふわっと芳醇な香りに包まれる。この味に出会うために秋が深まるのを待ってたのかも、と思えるほどです。( @ayaka.i_03 さん)
また手にとりたくなる野菜について
美味しく育つ、理由がある
日本の風土は多様です。
暖かな風と日光に恵まれたところ、ずっしりと雪が降り積もるところ、豊かな森と海に囲まれたところ――。
気候や地形、土壌によって、育つ作物もさまざまです。
その土地の特長を生かしながら、手をかけて育てられたお野菜は、うんと美味しい。
たとえば、瀬戸内海の無人島で日光をたっぷり浴びたまろやかなレモン、鳥取・大山のジンジンとする寒さのなかで甘みの増したキャベツ、対馬の海風を受け栄養を蓄えた原木で育った香り高いしいたけ。
「また手にとりたくなる野菜」では、そうした、美味しい背景、ストーリーをもったお野菜やくだものをお届けします。お料理をつくりながら、食卓を囲みながら、「農家さんはこんな人なんだって」「こういう場所で、こんな工夫で育てられているんだよ」「また食べたいね」そんな会話のきっかけにもなれば、とても嬉しいです。