京丹波から秋の恵み。ぷっくり大粒の丹波黒枝豆
京都府の北部エリアに位置する、山々に囲まれた京丹波町。普段は静かな里も、秋はお米や栗、黒枝豆と次々に収穫シーズンがやってきて大忙し。集落総出でわいわい助け合う、まるでお祭りのような、一年で一番にぎやかな季節です。
おじいさんから畑を継いでこの地で農業を営む〈京の丹波 野村家〉野村 幸司さんから、ぷっくり丸々と大粒の黒枝豆が届きました。一年でこの時期、10月の初旬から2〜3週間だけ。期間限定の秋の恵みをお楽しみください。
寒暖差がおいしさにつながる
おせち料理などに使われる「丹波の黒豆」は、10月下旬〜11月下旬に完熟し、収穫期を迎えます。完熟する前に収穫し10月初旬から出荷されるのが丹波の黒枝豆です。
京丹波町は四方を山に囲まれていて、一年を通じて昼夜の寒暖差が大きい地域。秋から冬にかけてはこの寒暖差によって「丹波霧」と呼ばれる濃霧が発生するほど。気温差があることで黒枝豆の味わいも深く、甘みもコクも増していきます。
土づくりに3年、ふかふかの土ができるまで
黒枝豆をぐんと成長させるのに大事なのは“ふかふかの土”。そのための見えざる働き者は「菌」です。マメ科の植物の根には「根粒菌(こんりゅうきん)」という菌が寄生し、ただ根に住むだけではなくて、お仕事をしています。植物の成長には窒素を栄養分として取り込むことが欠かせませんが、根粒菌はせっせと、空気中の窒素を根から吸収できる形に変え、植物の成長を助けています。
そして、根粒菌が仕事をしやすい土づくりも、農家さんの大事な役割。野村さんは、きのこ栽培が終わったあとの菌床や牛ふん堆肥などの有機質の肥料を畑にいれ、土のなかの微生物の働きを活発にすることで、土を柔らかくします。また、土のなかの通気性も重要。雨が降っても水がすっと流れるように排水ルートを作ったり、何度も畑の土を掘りかえすと、少しずつ枝豆づくりに適したふかふかの土になっていきます。黒枝豆に最適な土になるまでは、3年もかかるそうです。
つくり手のこと
野村幸司さんは、30歳(2023年9月時点)の若手生産者さん。以前から坂ノ途中のスタッフとして働きながら、祖父・保さんの畑を手伝っていましたが、約3年前に退職し畑を継ぎました。
「祖父の畑にはありませんでしたが、黒枝豆をやってみたいと思い、2019年頃からはじめました。なによりも、大粒でコクがあっておいしいです。地元の名産というのもありますが、新しいものを栽培するときは自分が好きかどうかも大切なポイントです。はじめは少しだけ育てて、いろんな人に食べてもらったら“おいしい”と言ってもらえてうれしくて、年々試行錯誤しながらつくっています」
おじいさんの元で農業技術を教わるだけでなく、自治体の農業振興局がやっている講座を受けたり、黒枝豆づくりに熱心な篤(とく)農家さんのところに修行に行ったりして、栽培から出荷作業までを学んだそうです。
「少しずつ育て始めたのですが、周りの農家さんから畑を任せたいと言われることが増えてきて、来年は今の面積の倍以上になる予定です」
京丹波町も高齢化による離農が増えています。継いでくれる親類もいない。ちょうど機械も壊れたし、身体もいうことをきかないから、今年でもうやめてしまおうか。そんな話が多いそうです。一度やめてしまうと畑は荒廃し耕作放棄地に。獣害が増えるなど集落まるごと農業がしにくい土地になってしまいます。本当は、なるべく田んぼや畑を続けたい。まわりに迷惑をかけたくない。野村さんは自分の畑に加えて、そんな農家さんから畑を預かって、栽培をしています。
「去年から預かっている畑があるんですが、持ち主の方が高齢で農業を続けることを諦め、僕のところに話がきました。収穫を手伝うと言ってくださったので、ご本人に収穫をお願いしたんです。そうしたら、“もう手放すしかないかなと思っていた。こんなに立派に黒枝豆が実ってる風景が見れるなんて思わなかった、ありがとう”。そう言ってもらえて。重たい土を何往復もして運んだことも、ぜんぶ吹っ飛びましたね」
みんな、地域を守りたい気持ちは同じ。農地を守ることは大切だと野村さんはいいます。
「10月は朝から晩まで収穫と出荷で忙しい。地元の人が20人くらい来てくれて、お祭り騒ぎだけど楽しくて。家の軒先でおじいちゃんおばあちゃんが黒枝豆のサヤをもいでいたり、道沿いにテントを建てて販売している人もいる。にぎやかなこの季節がいいですよね」
奮闘する野村さんの挑戦は、来年も、その先もつづきます。この地域が、この先どうかわっていくのか、お話を伺っていると、とてもわくわくしました。
野村さんに聞いた、黒枝豆のたのしみかた
「黒枝豆は粒が大きいので、茹で時間は7〜8分とふつうの枝豆よりも長めに。塩茹ではシンプルですが、やっぱりおいしいです。僕のおすすめは、炊き込みごはん。生のままサヤから豆を取り出し、研いだお米の上に乗せてお出汁とお醤油を入れて炊きます。豆から出た旨みもお米に染みこんでおいしい。コクもあってめっちゃ甘いです。たまりません!」
収穫時期は、ゆっくり昼ごはんを食べていられないほど忙しい。そんなときは、黒枝豆の炊き込みごはんをおにぎりにして、おなかが空いたら畑の脇に腰掛けてさっと食べる。それがいちばんの楽しみなのだそうです。
こちらでレシピをご紹介しています。
≫黒枝豆の炊き込みごはん|京の丹波 野村家【農家さんレシピ】
保存のポイント
黒枝豆は見た目はあまり変化しませんが、鮮度が落ちるのがはやい野菜です。届いたらできるだけ早くお召し上がりください。固めに茹でて冷凍保存もできますよ。
黒枝豆の茹で方
◆材料
黒枝豆 適量
塩
◆つくり方
1)黒枝豆は塩を揉みこんでよく洗い、さやの両はしを落とします。
2)鍋に黒枝豆を入れ、枝豆の頭が少し出るようにひたひたに水を張ります。塩を加え、ふたをして火にかけます。好みの固さになったらザルにあげます。
3)お皿に盛り、塩をふります。
◆ポイント
ふつうはたっぷりのお湯で茹でますが、少ないお湯で蒸し茹でにすることで、風味がとぶことを抑えられます。夏の枝豆より少し柔らかめに、ホクホク感が感じられるまで茹でるのがおすすめです。
枝豆のおいしいレシピ
枝豆といえば塩茹でが定番ですが、焼いても美味しいです。さやが香ばしく、なかには豆の甘みがぎゅっと詰まっています。こりっとした食感も楽しいですよ。
枝豆といえば塩茹でが定番ですが、焼いても美味しいです。さやが香ばしく、なかには豆の甘みがぎゅっと詰まっています。こりっとした食感も楽しいですよ。
黒枝豆のホクホク感にガーリックオイルがよく合いますよ。