基本情報
開始 2012年
目的 自社で放射能の影響と向き合い放射線量を測定することで、お客さまに安全なお野菜を届ける
協力 株式会社山田製油
大震災・原発事故と坂ノ途中のこれまで。

2011年3月に起こった未曾有の大震災と、それに引き続く福島第一原発の事故。 これにより、多くの尊い生命が失われ、たくさんの人が深い悲しみをつきつけられました。また、直接こうした被害を受けなかった多くの人にとっても、自分の生き方、とりわけ自然との関わりかたの問い直しを迫られることとなったのではないでしょうか。
坂ノ途中ではこれまで、深刻な被害に遭った農家さんの関西への移転をサポートする「ハローファームプロジェクト」の展開や、被災地域のお客さまへお野菜をお届けすることにより、その影響と向き合ってきました。
また、2012年には、放射線測定機を導入。提携農家さんの畑の土壌測定をおこない、原発事故の影響を自分たち自身で正しく把握できるような体制を整えてきました。

いま、京都で土壌とむきあう意味。

事故から7年以上が経過した今でも、福島第一原発事故の影響ははっきりとはわからないままですが、京都は若狭湾に林立する原子力発電所からの距離も近く、それらが稼働している限り、脅威にさらされ続けているともいえます。福島第一原発事故によって原子力発電所の安全性の脆弱さが明らかになったいま、環境とかかわるひとつの企業として、この影響を見つめ続ける必要を感じています。自分たちでできることは小さなことかもしれませんが、わたしたちは放射線の土壌への影響と向き合い続けます。

坂ノ途中の放射能検査体制について

提携農家さんの土壌検査をおこなっています。

坂ノ途中では、本社が京都にあるため西日本のお野菜を中心に取り扱っていますが、岐阜や長野といった中部地域や北海道のものをお届けすることもあります。そのため、下記 17 都県の地域について、提携農家さんの土壌検査を行います。

<検査対象地域> 青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島・茨城・栃木・群馬・千葉・埼玉・東京・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡

坂ノ途中では、2012 年 7 月以降、関西から九州までに広がる提携農家さんから農地の土壌サンプルを集め、I131・Cs134・Cs137 の測定を行ってきましたが、検出限界 10Bq/kg の条件下で放射性物質が検出されたサンプルはありませんでした。また、国の原子力災害対策本部により策定された食品中の放射性物質の検査対象地域の設定は上記の 17 都県に限られており、その他の地域での 汚染の可能性は極めて少ないと判断しています。(*1) 検査対象地域については、土壌検査の結果が、不検出、または基準値 (*2) 以下だった場合のみ、そのお野菜をお客さまにお届けします。土壌から基準値を超える放射線が検出された場合、再検査を行います。再検査でも検出された場合、そのシーズンの農産物は取り扱いません。

(*1) 食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」の改正(原子力災害対策本部策定)平成 29 年 3 月 24 日
(*2)きのこ類については、生産資材の放射性物質の影響の状況から、17都県に関わらず原体の放射線測定を行います。 検出限界5Bq/kg以下の条件で不検出となったもののみ扱います。

よくあるご質問
Q. なぜ野菜そのものではなく土壌をはかるの?
坂ノ途中の提携農家さんは、少量多品目で年間50種を栽培している方から、アスパラ一本!という方までさまざま。また地域も、京都を中心としながら、沖縄から北海道まで広範囲に及びます。
そんな私たちが取り扱うお野菜は、年間数百種類にものぼります。また季節感を大切にした栽培をお願いしているため、ほんの一時(いっとき)しか収穫できないお野菜も多くあります。
こうしたことから、一つ一つの野菜を検査したくても、莫大な費用と時間がかかる上、かなり断片的なサンプル検査になってしまうと考えました。その中でも、自分たちができることをやろう・向き合っていこう、という想いで畑の土壌検査を行うことにしています。 原発事故直後は農作物への影響は放射性物質を含む降下物の付着が主でしたが、いまでは農産物から検出される放射性物質は、土壌に含まれていたものが根から吸収されたケースがほとんどだと考えられます。そのため、移行係数を考慮した土壌検査が有効であると考えています。 
 
Q. 基準値の設定はどうしているの?
現在、土壌中の放射性物質について国による基準値の設定はありません。そこで、国が定める食品の基準値(*1)と土壌中の放射性物質の農産物への移行係数を考慮し、十分に安全と考えられる値を独自の基準値として定めています。農産物の移行係数は最も大きい玄米で0.1、ジャガイモで0.067、その他農産物は0.05以下です(*2)。
参考
(*1)国の基準値
飲料水:10Bq/kg、牛乳・乳児用食品:50 Bq/kg、一般食品100 Bq/kg 
(*2)農地土壌中の放射性セシウムの野菜類と果実類への移行について ー農林水産省 
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/110527.html
 
 

Q. なぜ検査対象地域を定めているの?
坂ノ途中では、2012年7月以降、関西から九州までに広がる提携農家さんから農地の土壌サンプルを集め、I131・Cs134・Cs137の測定を行ってきましたが、検出限界10Bq/kgの条件下で放射能が検出されたサンプルはありませんでした。
また、国や市町村による検査データ(*1)を分析しても、対象とした17都県以外の地域で放射性物質は検出されておらず、 汚染の可能性は極めて少ないと判断し、対象外としました。

検査対象地域とした17都県は、国の原子力災害対策本部により策定された、食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(*2)をもとに定めています。

参考
(*1)農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査結果(随時更新)ー農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/s_chosa/index.html
(*2)食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」の改正(原子力災害対策本部策定)平成29年3月24日
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000156399.html

 
 
Q. どういうときに検査を行っているの?
取引を始める前に、検査を実施しています。
その他、放射性物質の含有量に影響が及ぶことが考えられるできごとがあった際に農家さんと相談しつつ適宜再検査を実施します。
圃場の近隣で放射性物質が含まれていることが疑われる廃棄物(いわゆる「被災がれき」など)の焼却が行われたり、汚染されている可能性がありえる外部資材(家畜排せつ物、稲わら、落ち葉、樹皮等)が投入されたりといった場合を想定しています。 
 
Q. 検査機器は何を使っているの?
GDM-20坂ノ途中が導入したのは、スウェーデン・Gammadata Instrument社製「GDM-20」。 同シリーズの中でも最も高い精度を誇り、大学などの専門研究機関にも導入されています。 測ることのできるおよその最低値・検出限界も低く(理想的な環境下で90分測定した際、2Bq/kg)、原発事故の影響をしっかりと見極めることのできる機器です。
スウェーデン・Gammadata社製の“GDM-20”。ヨウ化ナトリウムシンチレーション式の中では最高レベルの性能を誇り、同じGDMシリーズの中でも最も検出限界が低く、食品や土壌の検査に適したものです。
京都のゴマ油メーカー、株式会社山田製油さんと共同で導入し、2012年より運用をしています。 
 
スタッフ皆で考えています
導入にあたり、担当スタッフは専門的な講習を受け、「第3種放射線取扱主任者資格」を取得しました。また、東北や関東で既に開設されている民間の測定所に直接足を運び、そこから得た知見をもとに、スタッフ同士で機器の種類や運営の体制について協議しました。それぞれ勉強したことを持ちよって社内で勉強会を開いたり、農家さんと意見を交換したりと、準備を進めました。また、大学等の研究機関に所属する専門家の方々ともやりとりし、アドバイスを仰ぐことも多いです。時間と労力はかかりましたが、自分たちがまずしっかりと理解し、農家さんにもお客さまにもきちんとご説明できる体制を整えてきました。
お問い合わせ

放射能対策に関するお問合せは、お問い合わせページより、 件名に「放射能測定について」と書いてお問い合わせください。

放射能測定結果

2012年7月以降、関西から九州までに広がる提携農家さんから 約30箇所の農地の土壌のサンプルを集め、「I131」「Cs134」「Cs137」の測定を行っていますが、検出限界10Bq/kgの条件下で放射能が検出されたサンプルはありませんでした。

最終測定日:2018年7月23日

これからのこと

放射線は目に見えず、簡単にはなくならない厄介な存在です。原子力発電に依存した社会に暮らし、そして事故が起きた結果、難しくってややこしい放射線がこんなに身近な話題になってしまいました。ウラン採掘の時点から原子力発電は多くの問題を抱えています。本当なら、原発事故の前から私たちは、原子力発電のもつ危うさや、一部の地域や未来に負担を押し付ける構造に対しもっと強く問題意識を持つべきだったと思っています。
この自分たちの不勉強さを悔いる気持ちをもって、放射線の取り扱いについていろんな角度から勉強してきました。ですが今後どう放射線と付き合っていけばよいのか、まだまだわからないことだらけです。お客さんや提携農家さんたちと密にやりとりしながら、みなさんと一緒に考え、できる限り納得できる対策のありかたをともに模索したいと考えております。みなさんのご意見も、ぜひお聞かせください。