ズボンを新調することにした。
仕事用なので、頑丈で動きやすくてポケットがいっぱい付いていなくちゃダメとか、僕なりのチェックポイントがある。冬なら保温性、夏なら通気性、がしがし洗えることも大事。もちろん値段も。なかでも、いちばんのこだわりは「気にならない」ということ。穿いていて気にならないズボン。

だから、格好が良いからといって、あんなものには手は出さないと決めていた。ぴたぴたのストレッチパンツ。穿く人の気が知れないとまで思っていた。
そうして、行きつけの作業服の専門店を訪れると、そのストレッチパンツがセール中。
まあ、安いし、どんなものか試着だけしてあげようというつもりで足を通した。

メチャクチャ良い!
ウエストもストレッチでボタンが飛んでいってしまうことはなさそう。
試着室のなかでスクワットしてみたけれど、まったく問題がない。
サイドポケットに手を突っ込んでみると、なんとここもストレッチ。水筒も入れられる。
興奮状態のままレジに向かってしまった。

家に帰って、すぐに穿いてみた。
なんでこんなに伸びるのだろう。タグを見てみると、綿97%、ポリウレタン3%と書いてある。調べてみると、ポリウレタンはすごく伸縮性を持つ素材らしい。
昔、大工仕事で木材を短く切ってしまって、心の底から伸びてくれないかなあと思ったことがあった。あの木がポリウレタンだったら……。
日々、どんどん固くなっていく自分のカラダ。背中が痒くなっても、上からも下からも手が届かなくて、子どもにお願いすることもしばしば。関節にポリウレタンが入っていたら……。

新入りのストレッチのズボンは、いきなり作業着のエースになった。
もう、これしか穿きたくないくらい。
あんなに嫌ってた自分っていったいなんだったのか。
結局、なんだかんだ理由をつけていたものの、そのぶん「気になって」いたのかも。
好きな子の悪口を言ったりするような……まだまだ子どもですね、あはは。

●ケンゾー