「おーい、鹿いらんかー?」
冬、畑に出ていると、声をかけられることがあります。
見ると、近所の猟師さんが軽トラックの荷台に鹿をごろりと1頭載せている。
内蔵は抜かれているけれど、触るとまだ柔らかい。
猟師さんがいらないのだったら、と、そのまま譲り受けます。
その日は大きな桶につけて水を流し、一晩かけて血抜きをします。翌日に解体して保存。もう、それだけで冷凍庫はいっぱい。1年くらいお肉を買わなくてもいいのではという量になります。

獣による畑の被害が大きくなっています。
やまのあいだファームだけの話ではありません。京都全体で鹿の数がすごく増えています。そして、鹿は子どもが生まれると、親がいろいろ教えて知恵を付けるらしく、世代が進むほど賢くなっていく。獣害対策をいろいろしていても、なかなか防ぐことができなくて、野菜をほとんど食べられてしまうこともあります。
人間は昼、鹿は夜に行動するので出会うことはないのですが、連日、足跡や被害状況を見ていると、同じ鹿が来ていること、何頭で来ているか、大きさ、癖なども推測できるようになります。
そのうえで対策を立てるのですが、いつも裏をかかれて、あぁ、賢いなあと悔しい思いをしてばかりです。

狩猟期間、やまあいのあたりは鹿が多いので、何頭獲ってもいいそうです──もちろん狩猟には免許が必要ですし、どんな獣でも獲っていいわけではありません。
畑を荒らしてほしくはないけれど、面と向かったときに獲ることができるかといわれると、たぶん無理だと思います。まん丸で真っ黒な目でじっと見つめられると、可愛いなあと思ってしまう。鹿に畑を荒らされて、悔しくて罠猟の免許を取ったけれど、猟師さんが鹿を仕留めるところを実際に見ていると、これは私にはできないかもと思って、ペーパー免許のまま3年が経ちました。
でも、鹿肉はありがたくいただきます。私ってずるいのか……

過疎化がすすみ、耕作放棄地が増え、獣害も酷くなっています。人より鹿の方が多いという地域もたくさんあるみたいです。
その一方で、農的な暮らしを求める若い人たちにお目にかかることも多いです。
京都と瀬戸内を車で行ったり来たりしていると、道中のほとんどは田舎です。都市がぽつんとあらわれては、すぐに田舎の景色に戻ります。
だから、田舎暮らしに興味があったら、ドライブをお薦めしています。もしかすると、好きな田舎の風景を発見して、そこで暮らすことになるかもしれません。
あ、夜の山道は気をつけてくださいね。獣が飛び出してきたりするので。鹿とか。

●あかね

※このあたりでは、人が集まるときに鹿肉の燻製がよくテーブルに並びます。
鹿肉は、イノシシにくらべると少し臭みがあって、脂身も少ないのであまり好まれないのですが、この燻製は臭みがまったくなく、塩がきいていてとても美味しいです。
スライスした大根に載せて食べると最高。
田舎にいると食べものには困らないなぁと思います。