こんにちは。エンジニア兼寿司担当の片山です。
日差しも暖かくなってきて春を感じ出すこのごろですがいかがお過ごしでしょうか。
この、寒いけれど日差しはあたたかな空気を吸うと、冬が終わって春が近いという嬉しさもありつつ、なぜか不安と孤独が入り混じった気持ちになります。
空気がそうさせるのかもしれないし、もしかすると入学やクラス替え直前の不安と気候が紐づいたパブロフの犬なのかもしれません。
そんなときは、普段つくらないようなものをつくると、それに集中することで気持ちを穏やかにすることが経験的に知られています。
ついでに、疲れをとるとされる酢や、良質なたんぱく質や脂肪酸をもった魚をとるとよいらしいです。
つまり寿司ですね。
今回は、1週間前の3月3日にひなまつりだったけれど、忙しくてなにもひなまつり対応をなにもしなかったことからちらし寿司です。
ちなみに、この、3月3日と4日に京都府南丹市にて坂ノ途中も運営にかかわっている京都オーガニックアクションによる百姓一喜という1泊2日のイベントが開催されました。
オーガニックの生産者を中心に買い手など120人を超える参加者が集まってオーガニックの未来について語り合うすごいイベントでした。
特に、生産者を直撃している物流費の高騰について、生産者・買い手間でローカルな物流をつくれないかというのが大きなテーマ。
物流だけでなく、人手、販路、価格、技術、分断などさまざまな問題に直面しているいま、
わかりやすい解決策はないけれど、こうやって人がつながって少しずつ動き出すことで価値を生み出していけるのではないか、と感じました。
少量多品目で直前の変更も多くなって季節変動も大きい野菜の物流共同便は、
むずかしいですがファーモでもこれを支援する機能に取り組み中です。
さて、(重要な)脱線をしましたが、ちらし寿司は、お米のうえに、いろんな食材が集って、個性を発揮しそれぞれ単体でもやっていけるにもかかわらず一つのお皿の上に集うことで全体での味や体験をより高めるすごい料理だと思うのです。京都オーガニックアクションと似ていますね。
さっそくやっていきましょう。

◆概要

すし酢以外では、米を炊いてから準備しても間に合う1時間料理です。
仕込みに時間のかかる具材があればそれ以上かかるかもしれませんし、具材に出来合いのものを使うなど工夫もできます。
道具は飯台があるとよいですが、大きなボウルでもかまいません。
つまり気軽に始められるのでみんな自分だけのちらし寿司をつくろう!
◆酢飯

ちらし寿司の最大の難関にして最重要な基盤です。
これがうまくできれば8割がた成功です。おめでとうございます。
すめし
まず、すし酢をつくります。
これは地域差もあったり好みもあって、プロでも大きく違うので、これが正解だとは言えないのですが、
自分の好みは、白米1合に対してこんな感じ。ちらし寿司なので酢控えめです。

  • 米酢 20ml
  • 砂糖 8g
  • 塩 3g

砂糖は、上白糖が基本ですが、三温糖とかのがうまい気もします。溶けるのに時間がかかるので1日前には混ぜておきたいところ。
育ち盛りでなければ、ひとり0.6合くらいでも満足するとは思いますが、余ったらおにぎりにすると美味しいのでちょっと多めに作ってもよいと思います(すし酢や水分量の計算が難しくなるので半端な分量は非推奨)
米の炊き方は、酢飯モードがある炊飯器なら酢飯の場合の水分量が書かれているので参考にしてください。
ふつうの炊飯器や土鍋であれば、通常より、5%くらい水少な目で固めに炊くイメージで。
飯台を濡らしてから立てかけてちょっと水をきっておきます。
炊きあがったら早めに飯台にあげて、すし酢を混ぜて、しゃもじで切るように混ぜます。
ところで、寿司をまぜるしゃもじのことは宮島ともいいますが、爪楊枝をクロモジと言うのと同じくらい好きです。
広げてちょっと冷ましてからまとめて乾燥しないようにしましょう。
と、いろいろ書いてみましたが詳しいことは、白ごはん.comを参照すれば間違いないです。
酢飯のつくりかた | 白ごはん.com

◆具材

今回は、自分が隔週Sセットでとっている野菜や、前週から残してしまったものの中からチョイスしました。
具材

レンコンの甘酢煮

レンコンを2mmくらいの厚さに切って、1分ほど熱湯で茹で、甘酢に漬けます。
甘酢のレシピはバリエーションありすぎてよくわかっていませんが酢100mlと砂糖おおさじ1くらいにしました。
今回は写真を撮る見栄を張って皮をむきましたが、皮付きでもよいです。

菜の花のお浸し

菜の花を1.5分ほど塩水で茹でてあげて水で冷やして絞ってだし汁に漬けます。
2時間くらいは漬けておきたい
菜の花

紅ダイコンの蒸し焼き

これは、お野菜セットに同封しているお野菜説明書に書いてあったレシピ。
オリーブオイルで蒸し焼きにするシンプルな調理法。弱火で20分くらい。
紅ダイコン

蒸したニンジンとダイコン

厚めのいちょう切りにしたニンジンとダイコンを蒸します。
コンロが空いていなければ電子レンジでもよいです。

錦糸卵

溶き卵を薄くひろげて弱火で蓋をして2-3分焼きました。
ほんとは、ザルで濾すときれいにできるらしいですが、洗い物を増やしたくないのでそのままです。
魚は、ホウボウとメバルを丸物で買って前日半身を食べていた残りを昆布締めにしたものを使おうと企んでいたのですが、さまざまな事情により会社の冷蔵庫に忘れてきたのでありません。ちなみにホウボウは刺身でも煮物でもおいしいうえにかわいくて大好きです。
野菜と卵だけで野菜の会社感がありますね。
魚を使わないことで下ごしらえも手軽なことは発見でした。魚をさばくのはやっぱり洗い物の数も内臓の処理もたいへんです・・・。

盛り付け

ちらし寿司
はい。
酢飯のうえに並べていきます。
けっこう具材が余ったので翌日の朝食になりました。
海苔をまぶすとそれっぽい。ちょっと冷やし中華感があります。
ちらし寿司と海苔
本当は、京都の烏丸三条西入ルにあるすし善さんのように、タネのうえに一面に錦糸卵をまぶして、そのうえに、花のように生姜の甘酢漬けをおくのにあこがれて、この生姜のかわりに紅ダイコンを使いたかったのですが、きれいな錦糸卵を量産するには卵の持ち合わせがなく断念しています。
手軽でおいしいちらし寿司が名物なのでぜひ立ち寄ってみてください。
さてお味は・・・
タナカレンコンさんのレンコンがほんとうまい。歯ごたえと甘酢によってひきたてられたレンコンの甘み。
蒸したニンジンもよいし、ほろ苦い菜の花もいい。春の味。錦糸卵は卵です。
特筆すべきは紅ダイコン。寒さに耐えてできた上品な野菜の甘さです。最初の歯触りはシャクっとしつつ滑らかに切れていきます。そして色も美しい。
これは主役になれる味です。
以前は、鍋に入れてしまい、鍋全体が、この赤黒い色に染まってダークな雰囲気に君臨したことから、ほかの野菜といっしょにしてはいけないと思ってしまいごめんなさい。
酢飯ともあいまって、一皿で目でも舌でも楽しめるごちそうです。
うまいうまい。
細かい具材をたくさんつくって大変ですが、それぞれつくりおきになって翌日のお弁当にもなるたのしい料理でした。

◆未来への予感

さて、ここでしめようかとも思ったのですが、酢飯と具材とおなかの余裕はすこし残っています。
余技として、ちょっと握ってみます。
野菜は魚と違ってそのままでは米とピッタリあわないので、うまく波切りにして接着面積を増やすか、こうやって海苔で巻くかにしました。
べじ寿司
はい。ベジずしです。お皿は無印良品さんの直火でつかえる耐火皿です。
で、これはなんとなく食べてみたんですが、とてもおいしかった。
特に、紅ダイコンとレンコンはすごい。
これは、握り寿司の、上面にタネ、下に酢飯という洗練されたフォーマットを、野菜ならではの形で昇華しているのではないか、とあとあとになって気づいたのですこし考えを共有しておきます。
ご存知のように、味覚の受容体は、舌だけではなく上あごや喉にもあります。握り寿司の場合、それぞれでタネと酢飯を味わい、そこから噛んで口のなかでほぐれてまじりあうことで味の変化を立体的に楽しむことができるのが妙味であり特徴です。
この紅ダイコンの場合は、(紅ダイコンが落ちないよう寿司のようにひっくり返さないで食べたので)上あごで紅ダイコンの油分とまざった甘さを、下で酢飯のさっぱりとしたほのかな米の甘さを感じ、それをかんでいくと、レンコンのしゃきっとした歯ごたえ、さらにはおだやかな甘みを感じて、これを混ぜていく。この食感の非連続さとそれぞれ違う、野菜のもつ甘さを一度に味わえてしまうのです。
これは、紅ダイコンを蒸し焼きにするのにつかった油や、酢飯にするのにつかった砂糖と塩の影響も大きいですが、野菜メインではこれまでなかった種類の脳の汁がでるのを感じます。
なんなんでしょうこれは。
ベジずしというと、押しずしが多くて、それはそれできれいで魅力的で美味しいのですが、こうした握りずしフォーマットでもありえるという可能性を強く感じ、さらに挑戦していこうという気持ちになっています。
みまさまもベジずしをつくってともに高みを目指しましょう。もう不安はありません。