瀬戸内の島の畑は、山の斜面につくられた段々畑です。島に暮らす人たちが、何代もかけて山のてっぺんまで開墾した畑。みかんの収穫時期には、島全体が黄金色に見えたそうです。

その段々畑は、ほとんどが石ゲシという石垣(石段)でつくられています──土でできているものは土ゲシと呼ばれます──。
石ゲシはとてもキレイ。でも、登り降りを繰り返していると、少しずつ崩れてしまいます。壊れてしまった石ゲシ、直せるんだろうか? むかしむかしの技、今でも受け継がれているの?


私たちの畑は、お借りする前の数年間、手つかずの時期があったそうです。そのときに、猪にずいぶん荒らされてしまいました。猪は力強い鼻で土を掘り返してミミズを探すのですが、そのせいで石垣はぐちゃぐちゃになってしまった。
壊れた場所は、みかんの木も枯れてしまい、足場も悪くなっているので、新しい木を植えることもできません。
どうしたものかと悩んでいたところ、近くで石積みのワークショップが開催されることを知りました。飛び入りで参加したのですが、いろいろ教えてもらうことができました。
先生は──意外にも若い──旅する石積み屋・田代紘士さん。
「年輩の方から習ったけれど、今はもう石積みのできる人はとても少ない」と言っていました。
やってみると、やっぱりとても難しい。
先生には石の向きが見えるみたいで、どんどん積んでいくのですが、私はどう積んだらいいのか見極められず、間違えてばかり。その石は逆向きだね、と何度も注意をされました。だけど、それでも石垣は崩れたら直せばいいんだと思えるようになったのは、とても大きな収穫でした。


少しずつでもいいから、キレイな石ゲシを再現したいな。石の向き、ちゃんと見えるようになるかな……。

●あかね